はじめに

「何も言わなくても、自分から勉強してくれたらいいのに。」

子どもの家庭学習について、そう思ったことのある保護者の方は少なくないでしょう。

「宿題やった?」

「テスト勉強は?」

「スマホばかり見ていないで勉強しなさい。」

毎日のように声をかける。

言われた子どもは渋々机に向かう。

しかし、翌日になるとまた同じことを言わなければならない。

これが続くと、保護者も疲れてしまいます。

そして子ども自身も、

「勉強は誰かに言われてやるもの」

と考えるようになってしまうことがあります。

では、どうすれば自分で勉強できる子になるのでしょうか。

ここで大切なのは、

「もっと自覚を持ちなさい」

「自分から勉強しなさい」

と言うことではありません。

自分で勉強するためには、

何を勉強するのか。

いつ勉強するのか。

どこまでやるのか。

分からないときにどうするのか。

計画どおりにできなかったらどう修正するのか。

こうしたことを、少しずつ自分で判断できるようになる必要があります。

つまり、

「自分で勉強できる」というのは性格ではなく、身につけていく力なのです。

今回は、子どもが誰かに言われなければ勉強できない状態から、少しずつ自分で学習を進められるようになるための考え方を整理していきます。


「自分で勉強できる」とはどういう状態なのか

自分で勉強できる子というと、

「毎日何時間も机に向かう子」

を想像するかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。

大切なのは「自分で始められること」

例えば、

「19時になったから数学をやろう」

と自分で机に向かう。

これも自立した学習の一つです。

最初は10分でも20分でも構いません。

誰かから、

「勉強しなさい」

と言われる前に、自分で始められる。

まずはここが大切です。

「何をやるか」を決められる

机に向かったものの、

「何を勉強すればいいの?」

となってしまう子もいます。

自分で勉強できるようになるためには、

「今日は数学のワークをやる」

「英単語を10個覚える」

「昨日間違えた問題を解き直す」

と、自分で学習内容を選べることも必要です。

分からないときに止まらない

自分で勉強できるというのは、

何でも一人で解決できる

という意味ではありません。

むしろ、

「ここは自分では分からない」

と判断できることも重要です。

教科書を見る。

学校のノートを確認する。

解説を読む。

それでも分からなければ、印を付けて先生や家庭教師に質問する。

これも立派な自立です。

振り返って修正できる

予定では30分勉強するつもりだった。

でも15分しかできなかった。

そこで、

「自分はダメだ」

と終わるのではなく、

「今日は疲れていたから、明日は夕食前にやってみよう」

と修正する。

自分で勉強できる子は、最初から完璧に計画を守れる子ではありません。

うまくいかなかったとき、自分で次の方法を考えられる子なのです。


いきなり「全部自分でやって」は難しい

自立させたいと思うあまり、

「もう中学生なんだから自分でやりなさい」

と、急にすべてを本人へ任せてしまうことがあります。

しかし、それまで大人が決めていたことを、ある日突然すべて自分で決めるのは簡単ではありません。

最初は大人が「型」をつくっていい

例えば家庭学習の習慣がない子なら、

「19時から15分だけやろう」

と時間を決める。

教材も、

「まず数学のワークから始めよう」

と決める。

最初はそれで構いません。

大切なのは、そこから少しずつ本人へ任せていくことです。

「指示」から「選択」へ変える

最初は、

「今日は数学をやろう」

と大人が決めます。

慣れてきたら、

「数学と英語、どっちを先にやる?」

と聞きます。

さらに慣れたら、

「今日は何をやる?」

と本人に決めてもらいます。

このように、

大人が決める → 選んでもらう → 自分で決める

という順番で移行すると、自立しやすくなります。

勉強時間も本人に考えてもらう

「毎日一時間勉強しなさい」

と決めるだけではなく、

「今日はどれくらいならできそう?」

と聞いてみます。

子どもが、

「20分」

と言ったなら、まずは20分やってみる。

実際にできたら、

「20分なら続けられた」

という経験になります。

続けられるようになってから、

「25分にしてみようかな」

「今日は30分できそう」

と本人が増やしていく方が、習慣になりやすい場合があります。


「計画→実行→振り返り」を習慣にする

自分で勉強できる力を育てるうえで重要なのが、

計画する

実行する

振り返る

という流れです。

難しく考える必要はありません。

今日やることを一つ決める

最初から一週間の完璧な計画表を作る必要はありません。

まずは、

「今日は何をやる?」

だけでも十分です。

例えば、

数学のワーク2ページ。

英単語10個。

理科の間違い直し3問。

このように具体的に決めます。

「勉強する」

ではなく、

「何を、どこまでやるか」

まで決めることがポイントです。

終わったら「できたか」を確認する

勉強が終わったら、

「予定どおりできた?」

と確認します。

できたなら、それで終わり。

できなかったなら、

「どうしてできなかった?」

と考えます。

ここで、

「やる気がなかったから」

だけで終わらせないことです。

量が多すぎた。

始める時間が遅かった。

スマートフォンを見てしまった。

問題が難しすぎた。

疲れていた。

原因が分かれば、次の工夫ができます。

計画は守るものではなく「修正するもの」

計画を立てると、

「絶対に守らなければならない」

と考えてしまうことがあります。

しかし、計画どおりにいかないことは普通にあります。

重要なのは、

計画どおりにいかなかったあと、どう修正するか

です。

例えば、

一日20個ずつ英単語を覚える予定だった。

火曜日はできなかった。

だから水曜日に40個やる。

これでは負担が大きくなるかもしれません。

それなら、

残りの日に5個ずつ追加する。

休日に少し多めにやる。

範囲の中でも重要な単語を優先する。

このように、自分で調整します。

この「修正する力」が、自分で勉強するためには非常に重要です。


失敗させないことより「失敗から戻る力」を育てる

子どもが自分で勉強するようになる過程では、必ず失敗します。

宿題を忘れる。

計画どおりに進まない。

テスト勉強を始めるのが遅れる。

思ったより点数が取れない。

こうしたことは起こります。

大人が先回りしすぎない

保護者や家庭教師から見れば、

「このままだと失敗する」

と分かることがあります。

そこで、

「早くやりなさい」

「その計画じゃ間に合わないよ」

と先回りして修正したくなります。

もちろん、大きな失敗につながりそうな場合は支援が必要です。

しかし、小さな失敗なら本人に経験してもらうことも大切です。

「だから言ったでしょう」で終わらせない

計画に失敗した子に、

「だから言ったでしょう」

と言っても、次の方法は身につきません。

代わりに、

「どこでうまくいかなかった?」

「次はどうする?」

と聞きます。

例えば、

「テスト三日前からでは間に合わなかった」

と本人が気付いたなら、

「じゃあ次は何日前から始める?」

と考えてもらいます。

こうして失敗を、

次の学習方法を改善する材料

に変えていきます。

成功だけでなく「立て直したこと」を評価する

例えば三日間勉強できなかった子が、四日目に再開した。

これは大切な行動です。

そこで、

「三日もサボった」

だけを見るのではなく、

「今日は自分から戻れたね」

と伝えることもできます。

勉強は長く続きます。

毎日完璧にできることより、

止まっても再び始められること

の方が長期的には重要です。


最終的には「大人がいなくても回る学習」を目指す

家庭教師や保護者のサポートは、とても大切です。

しかし、サポートの最終的な目的は、

「ずっと大人が管理すること」

ではありません。

家庭教師がいる間に自分で学ぶ方法を身につける

家庭教師がいるときには、

何を勉強するか一緒に考える。

分からない問題の質問方法を学ぶ。

間違い直しの方法を覚える。

テスト前の計画を立てる。

こうしたことを練習できます。

そして少しずつ、

「今日は何をやる?」

「次の一週間はどうする?」

という判断を本人に任せていきます。

保護者の声かけも減らしていく

最初は、

「19時になったよ」

と声をかける。

次は、

「今日は何時からやる?」

と聞く。

その次は何も言わず、本人が始めるのを待つ。

このように、できるようになった部分については、大人の支援を少しずつ減らします。

支援を減らすことは、冷たくすることではありません。

「もうここは自分でできる」と信じて任せることです。

助けを求められることも自立の一部

自立というと、

「誰にも頼らず全部一人でやる」

というイメージがあります。

しかし、本当の意味で自分で学べる子は、必要なときに人を頼れます。

「この問題が分からない。」

「勉強方法が合っているか見てほしい。」

「テストの計画を一緒に考えてほしい。」

こう言えることも大切です。

何でも一人で抱え込むことが自立なのではありません。

自分でできることは自分でやり、必要なところでは適切に助けを求められる。

その状態を目指します。

「勉強させる」から「学び方を身につけさせる」へ

家庭教師の役割も、保護者の役割も、最初は大きいかもしれません。

しかし、子どもが成長するにつれて、その役割は変わっていきます。

最初は、

大人が決める。

大人が声をかける。

大人が確認する。

そこから、

一緒に決める。

本人に選んでもらう。

本人に振り返ってもらう。

そして最後には、

本人が決める。

本人が実行する。

本人が振り返る。

必要なときだけ大人に相談する。

という状態へ近づけていきます。


おわりに

自分で勉強できる子は、最初から特別に意志が強いわけではありません。

「勉強が好きだから自分からやる」

とも限りません。

大切なのは、

自分で学習を進める方法を少しずつ身につけていくことです。

何をやるか決める。

いつやるか決める。

実際にやってみる。

終わったら振り返る。

うまくいかなければ修正する。

分からないところは質問する。

そして、また次の学習へ進む。

この繰り返しです。

最初は大人が手伝って構いません。

むしろ、何も分からない状態で、

「今日から全部自分でやりなさい」

と任せても難しいでしょう。

最初は手を貸す。

できるようになった部分は任せる。

失敗したら一緒に考える。

また任せる。

その繰り返しの中で、大人が担当していた部分を少しずつ本人へ渡していきます。

そして、保護者や家庭教師が注目したいのは、

「今日は何時間勉強したか」

だけではありません。

自分から始められた。

今日やることを自分で決められた。

分からない問題を質問できた。

計画どおりにいかなかった理由を考えられた。

失敗した翌日にもう一度始められた。

こうした一つひとつの変化が、

「自分で勉強できる力」

を育てています。

最終的に目指したいのは、

「親に言われたから勉強する子」

でも、

「家庭教師がいるから勉強できる子」

でもありません。

自分の状況を見て、自分で考え、自分で学習を進め、困ったときには必要な助けを求められる子です。

家庭教師や保護者がずっと子どもの前を歩き続ける必要はありません。

最初は道を示す。

次は横を歩く。

そして少しずつ、本人に前を歩いてもらう。

必要なときには後ろから支える。

「自分で勉強できる子に育てる」とは、子どもを突然一人にすることではありません。

大人が持っていた学習の主導権を、子どもの成長に合わせて少しずつ本人へ返していくこと。

その積み重ねが、誰かに言われなくても自分で学び続けられる力へとつながっていくのです。



実際の例はこちらから

⑰ 自分で勉強できる子に育てる方法(実践編)

はじめに 「先生、今日は何をやればいいですか?」 家庭教師を始めたばかりの生徒から、よく聞く言葉です。 何を勉強するか。 どの教材を使うか。 何ページやるか。 何分勉強するか。 すべて先生に決めてもらう。 そして、言われ […]