はじめに

「授業を真面目に聞いているのに、内容が理解できない」

「問題集を何度も解いているのに、同じところで間違えてしまう」

「学年が上がるにつれて、勉強がどんどん難しくなってきた」

こうした悩みを抱える子どもは少なくありません。

保護者から見ると、勉強時間が足りないように感じることもあるでしょう。

本人も、もっと頑張らなければならないと思っているかもしれません。

しかし、現在の学習内容が理解できない原因は、必ずしも今習っている単元にあるとは限りません。

例えば、中学2年生の数学で連立方程式が分からない子がいたとします。

連立方程式の解き方を何度説明しても、途中で間違えてしまいます。

そこで計算過程を確認すると、中学1年生で学習した正負の数や文字式の計算が十分に身についていないことがあります。

この場合、連立方程式の問題を何十問も解かせるより、以前の単元に戻って必要な計算を確認するほうが効果的な場合があります。

勉強は、それぞれの単元が完全に独立しているわけではありません。

以前に学んだ知識や技能を使いながら、新しい内容を理解していく教科も多くあります。

そのため、基礎に抜けがあると、学年が上がるにつれて学習が難しく感じられることがあります。

今回は、基礎学力に抜けがある状態で勉強を続けると何が起こるのか、そして、どのように立て直していけばよいのかを家庭教師の視点から考えていきます。


1.勉強は積み重ねによって成り立っている

勉強が難しくなる理由の一つは、新しく学ぶ内容が、以前の知識や技能を前提としていることです。

数学は前の単元が土台になる

数学は、積み重ねの影響が分かりやすい教科です。

例えば、小学校で学ぶ分数の計算が十分に理解できていないと、中学校で分数を含む方程式を解くときに苦労することがあります。

また、中学1年生で学ぶ正負の数や文字式の計算が不安定なままだと、中学2年生の連立方程式や式の計算でも間違いが増えることがあります。

さらに、一次方程式の考え方が曖昧なままでは、文章問題を式に表すことも難しく感じられるかもしれません。

つまり、今の単元で間違えているからといって、その単元の説明だけを繰り返せばよいとは限らないのです。

必要な知識が前の段階にある場合には、そこを補強することが重要になります。

英語も基礎の積み重ねが重要

英語でも同じことが起こります。

例えば、中学3年生で関係代名詞を学習するとき、主語と動詞の関係や英文の基本的な語順が理解できていなければ、文章の構造を捉えることが難しくなります。

また、単語の意味を十分に覚えていなければ、文法を理解していても英文全体の意味を読み取れないことがあります。

英語の長文が苦手だからといって、長文問題ばかり練習しても、改善しない場合があります。

原因が語彙不足なのか、文法の理解不足なのか、英文を読む経験の不足なのかによって、必要な対策は異なります。

すべてを最初からやり直す必要はない

ここで注意したいのは、基礎に抜けがあるからといって、必ずしも小学校や中学1年生の内容をすべてやり直す必要はないということです。

大切なのは、現在の学習を妨げている部分を見つけることです。

例えば、連立方程式で符号の計算を間違えるなら、正負の数の計算を重点的に確認する。

英文の語順が分からないなら、主語と動詞の関係から確認する。

必要な部分だけを戻って学習することで、時間を無駄にせず基礎を補強することができます。


2.基礎が抜けたまま勉強すると起こること

基礎が十分に身についていない状態で新しい内容を学び続けると、いくつかの問題が起こりやすくなります。

授業の説明が理解しにくくなる

学校の授業では、基本的に学年や単元の進度に合わせて内容が進んでいきます。

以前の内容をすべて復習してから新しい単元に入るとは限りません。

そのため、前の学習内容が十分に身についていない子どもは、授業の途中で分からなくなることがあります。

例えば、先生が連立方程式の解き方を説明しているとき、正負の数の計算でつまずいている子どもは、方程式の考え方に集中することが難しくなります。

計算そのものに時間がかかるため、授業の進度についていけなくなることもあります。

間違いが増え、勉強時間が長くなる

基礎が不安定な状態では、一つの問題を解くために多くの時間が必要になることがあります。

例えば、分数の計算が苦手な子どもが、分数を含む方程式に取り組むとします。

方程式の解き方を理解していても、分母を払う計算や符号の処理で何度も間違えてしまうかもしれません。

すると、問題を解くたびに時間がかかります。

本人は一生懸命勉強しているのに、問題集がなかなか進みません。

勉強時間が長いことと、学習内容が身についていることは、必ずしも一致しないのです。

苦手意識が強くなる

基礎の抜けが続くと、心理面にも影響することがあります。

最初は一つの計算が苦手だっただけなのに、間違いが続くことで、

「数学は全部苦手」

と感じるようになることがあります。

さらに、テストの点数が上がらなければ、

「自分は勉強ができない」

と思い込んでしまうかもしれません。

しかし、実際には数学全体が理解できないのではなく、特定の計算や考え方が身についていないだけという場合もあります。

その違いを見つけることが重要です。

新しい内容の理解に負担がかかる

新しい内容を学ぶときには、以前に学んだ知識を使う場面があります。

その知識を毎回思い出したり、考え直したりしなければならない状態では、新しい考え方に集中しにくくなることがあります。

例えば、九九が十分に身についていない子どもが、複雑な計算に取り組む場合です。

計算の途中で九九を何度も考え直していると、問題全体の流れを追いにくくなることがあります。

基礎的な知識や技能を安定して使えるようにすることは、新しい内容を理解するための負担を減らすことにもつながります。


3.基礎の抜けを見つけるために必要なこと

基礎が抜けているかどうかを確認するには、単にテストの点数を見るだけでは十分ではありません。

どの問題で、どのような間違いをしているのかを調べる必要があります。

答えだけでなく途中式を見る

数学では、答えが間違っていた場合、途中式を確認することが重要です。

例えば、方程式の問題で答えが間違っていても、原因はさまざまです。

方程式の立て方が分からないのか。

移項の考え方が曖昧なのか。

符号の計算を間違えているのか。

分数の計算ができていないのか。

同じ不正解でも、原因によって必要な指導は変わります。

家庭教師が問題を解く過程を確認するのは、こうした違いを見つけるためです。

一つ前の単元へ戻って確認する

現在の単元でつまずいている場合、関連する以前の単元を確認してみます。

例えば、連立方程式で間違いが多いなら、文字式や一次方程式の計算を確認する。

それでも不安定なら、正負の数の計算まで戻ってみる。

このように、必要に応じて少しずつ戻っていくことで、つまずきの場所を見つけやすくなります。

ただし、単に前の学年へ戻ればよいわけではありません。

現在の問題を解くために、どの知識や技能が必要なのかを考えながら確認することが大切です。

「分からない場所」を具体的にする

子どもに、

「どこが分からない?」

と聞いても、

「全部分からない」

と答えることがあります。

その場合は、質問を細かくしてみます。

「問題文の意味は分かる?」

「何を求める問題か分かる?」

「式は作れる?」

「計算はできる?」

このように確認していくと、分かる部分と分からない部分を分けやすくなります。

例えば、文章問題の意味は理解できるが、式を作れない場合があります。

あるいは、式は作れるが、計算で間違える場合もあります。

この二つでは、必要な練習が異なります。

大切なのは、「数学が苦手」という大きな問題を、具体的な課題へ分解することです。


4.基礎を立て直すための効果的な学習方法

基礎の抜けが見つかったら、次はどのように学習を進めるかを考えます。

ここで重要なのは、難しい問題を無理に解き続けないことです。

まずは確実にできる問題から始める

基礎を立て直すときには、本人が自力で解ける問題から始めることが有効です。

例えば、正負の数の計算が苦手な場合、最初から複雑な計算問題に取り組む必要はありません。

まずは、簡単な加法や減法から確認します。

そこができるようになったら、乗法や除法へ進む。

さらに、複数の計算が組み合わさった問題へ進む。

このように段階を分けることで、どこでつまずいているのかを確認しながら学習できます。

少ない問題でも確実に理解する

基礎を立て直すためには、大量の問題を解くことが必ずしも必要ではありません。

例えば、10問解いて半分以上間違える状態なら、同じ難易度の問題をさらに30問解く前に、間違いの原因を確認するほうがよい場合があります。

一問ずつ解き方を確認し、自分で正しく解けるようにする。

その後、少しずつ問題数を増やしていく。

こうした進め方が、結果的に効率のよい学習につながることがあります。

現在の学習と基礎の復習を並行する

基礎に戻るといっても、学校の授業は進んでいきます。

そのため、以前の単元だけを長期間学習していると、現在の授業との差が広がる可能性があります。

そこで、基礎の復習と現在の学習を並行する方法を考えます。

例えば、家庭学習の時間が60分ある場合、

最初の15分で基礎計算を確認する。

次の30分で現在の単元に取り組む。

最後の15分で間違えた問題を解き直す。

といった方法です。

もちろん、必要な時間配分は子どもの理解度によって変わります。

重要なのは、基礎の復習だけで終わらず、現在の学習にもつなげていくことです。

できるようになったことを確認する

基礎を立て直す学習では、進歩を実感できることも重要です。

例えば、最初は正負の数の計算で10問中4問しか正解できなかった子どもが、練習を重ねて8問正解できるようになったとします。

この変化を本人が確認できれば、

「少しずつできるようになっている」

と感じやすくなります。

ただし、一度正解できただけで完全に身についたとは限りません。

時間を空けて確認したり、少し形を変えた問題に取り組んだりすることも必要です。

基礎の学習では、速さよりも、安定して正しくできることを重視しましょう。


5.家庭教師が基礎の抜けを見つける意味

家庭教師の指導では、学校の授業とは異なる視点から学習状況を確認できる場合があります。

その一つが、子ども一人ひとりのつまずきに合わせて、必要なところまで戻れることです。

学年ではなく理解度に合わせる

中学2年生だからといって、中学2年生の内容だけを教えればよいとは限りません。

必要であれば、中学1年生の内容へ戻る。

場合によっては、小学校で学習した内容を確認することもあります。

ただし、これは学年全体の学習をやり直すという意味ではありません。

現在の学習を理解するために必要な部分を確認するということです。

例えば、連立方程式でつまずいている子どもに対して、正負の数の計算を確認した結果、そこに問題が見つかったとします。

その場合は、必要な計算を補強したうえで、再び連立方程式へ戻ります。

このように、現在の学習と以前の学習をつなげながら指導することが重要です。

子どもの自信を守りながら戻る

以前の学年の内容へ戻ることに抵抗を感じる子どももいます。

「こんな簡単な問題もできないのか」

と思われるのではないかと不安になることがあります。

そのため、家庭教師は基礎に戻る理由を丁寧に説明する必要があります。

例えば、

「今の問題を解くために、ここを確認してみよう」

「この計算ができるようになると、今の単元も解きやすくなるよ」

と伝えます。

基礎に戻ることは、能力が低いことを示すものではありません。

必要な知識や技能を補強するための学習です。

本人がその意味を理解できれば、以前の単元にも取り組みやすくなります。

小さなつまずきを放置しない

基礎の抜けは、最初から大きな問題として表れるとは限りません。

例えば、計算問題でたまに符号を間違える程度なら、本人もあまり気にしないかもしれません。

しかし、その間違いが新しい単元でも繰り返されると、学習の妨げになることがあります。

だからこそ、小さな間違いを確認することが大切です。

もちろん、すべての間違いが基礎不足によるものではありません。

単なる書き間違いや、一時的な不注意の場合もあります。

同じ種類の間違いが繰り返されているか、考え方を説明できるかなどを確認しながら、原因を判断する必要があります。

家庭教師の役割は、間違いを指摘することだけではありません。

その間違いがどこから生まれているのかを見つけ、必要な学習へつなげることです。


おわりに

基礎が抜けたまま勉強を続けると、学年が上がるにつれて学習が難しく感じられることがあります。

授業の説明が理解しにくくなる。

問題を解くのに時間がかかる。

同じような間違いを繰り返す。

そして、勉強への苦手意識が強くなることもあります。

しかし、こうした状態になったからといって、勉強ができるようにならないわけではありません。

大切なのは、現在の学習で何につまずいているのかを確認することです。

数学なら、途中式を見て計算のどこで間違えているのかを調べる。

英語なら、単語が分からないのか、文法が理解できていないのかを確認する。

そして、必要であれば以前の単元へ戻る。

その際には、すべてを最初からやり直す必要はありません。

今の学習を妨げている部分を重点的に補強すればよいのです。

基礎に戻ることを、遠回りだと考える必要はありません。

むしろ、分からないまま難しい問題を解き続けるより、必要な基礎を確認したほうが、結果的に学習が進みやすくなることがあります。

また、基礎の復習では、子どもの自信を守ることも大切です。

以前の学年の問題を解くことは、恥ずかしいことではありません。

分からなかった部分を見つけ、できるようにしていくための取り組みです。

そして、できるようになったことを一つずつ確認していきます。

昨日は間違えた計算が、今日は正しくできた。

以前は分からなかった式の意味が、説明できるようになった。

今まで解けなかった問題が、自分の力で解けるようになった。

こうした小さな変化を積み重ねることで、学習への自信を取り戻していくことも期待できます。

勉強が分からなくなったとき、大切なのは無理に先へ進むことではありません。

必要なところまで戻り、理解を確かめながら、もう一度前へ進むことです。

基礎を立て直すことは、過去の勉強をやり直すだけではありません。

これからの学習を支える土台を整えることなのです。



実際の例はこちらから

⑤基礎が抜けたまま勉強するとどうなる?(実践編)

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