はじめに

勉強においてどこまでサポートすればいいのか・・・なかなか難しいです。

言われすぎても・・・

逆にやりたくなくなる・・・

そう

言われるほうもね・・・キツイときがあるよね

はじめに

「先生、家では何て声をかけたらいいですか?」

家庭教師として保護者の方と話していると、このような相談を受けることがあります。

勉強してほしい。

成績も上がってほしい。

将来困ってほしくない。

だからこそ、

「宿題やったの?」

「テスト勉強しなくて大丈夫?」

「早く勉強しなさい」

と声をかける。

しかし、言えば言うほど子どもが反発する。

親もイライラする。

子どももイライラする。

そして、勉強そのものまで嫌になってしまう。

そんな悪循環になることがあります。

保護者のサポートで大切なのは、勉強を無理に「やらせる」ことではありません。

子どもが自分で勉強できる状態をつくることです。

今回は、毎日のように「勉強しなさい」と言ってしまっていた保護者が、家庭教師とのやり取りを通して声のかけ方や距離の取り方を変え、子どもの行動にも少しずつ変化が現れていく様子をご紹介します。


「言わないと何もしないんです」

ある日の授業後。

生徒が教材を片付けていると、保護者の方が私に声をかけました。

🔴 保護者

「先生、少しいいですか?」

🔵 講師

「もちろんです。」

🔴 保護者

「この子、先生が来る日はちゃんとやるんです。」

私はうなずきました。

🔴 保護者

「でも、それ以外の日が本当にダメで。」

🔵 講師

「どんな感じですか?」

🔴 保護者

「学校から帰ったらスマホ。ゲーム。動画。」

少し困ったように続けます。

🔴 保護者

「私が『勉強しなさい』と言わないと、本当に何もしないんです。」

近くで聞いていた生徒が、少し嫌そうな顔をしました。

🔴 学習者

「やってる日もあるし。」

🔴 保護者

「言われてからでしょう?」

🔴 学習者

「言われる前にやろうと思ってるときもある。」

🔴 保護者

「でも実際やってないでしょう。」

少しずつ空気が重くなってきました。


私は二人に向かって言いました。

🔵 講師

「少しだけ、普段の流れを聞いてもいいですか?」

🔴 保護者

「はい。」

🔵 講師

「例えば昨日は、どんな感じでした?」

保護者の方が答えました。

🔴 保護者

「学校から帰ってきて、ずっとスマホを見てました。」

🔵 講師

「何時くらいですか?」

🔴 保護者

「5時半くらい。」

🔵 講師

「それで?」

🔴 保護者

「6時半くらいになっても何もしないので、『宿題は?』って言いました。」

私は生徒に聞きました。

🔵 講師

「そのとき、どう思った?」

🔴 学習者

「今やろうと思ってたのにって。」

保護者の方が苦笑いします。

🔴 保護者

「いつもそれ言うんです。」

🔴 学習者

「本当に思ってたし。」


🔵 講師

「そのあと勉強した?」

🔴 学習者

「しませんでした。」

🔵 講師

「どうして?」

生徒は少し黙りました。

🔴 学習者

「やる気なくなった。」

🔴 保護者

「ほら、やっぱりやらないでしょう?」

🔵 講師

「なるほど。」

私は少し考えました。

ここで大切なのは、

「親が言ったから悪い」

「子どもがやらないから悪い」

と決めることではありません。

二人とも、望んでいることは同じです。

勉強してほしい。

成績を上げたい。

ただ、その関わり方がうまくかみ合っていないだけです。


私は保護者の方に聞きました。

🔵 講師

「毎日『勉強しなさい』と言うの、疲れませんか?」

🔴 保護者

「疲れます。」

即答でした。

🔵 講師

「言いたくて言っている感じですか?」

🔴 保護者

「できれば言いたくないです。」

🔵 講師

「ですよね。」

🔴 保護者

「でも言わないと、本当にやらないと思うんです。」

私はうなずきました。

🔵 講師

「じゃあ、一回『言わなくても始められる仕組み』を作ってみませんか?」

保護者の方も生徒も、少し驚いた表情をしました。


「親が言う前に始められる形をつくる」

私は生徒に聞きました。

🔵 講師

「家で勉強するとしたら、何時くらいならできそう?」

🔴 学習者

「夕食前。」

🔵 講師

「何時?」

🔴 学習者

「6時45分くらい。」

🔵 講師

「何分?」

🔴 学習者

「15分。」

私は保護者の方に確認しました。

🔵 講師

「この時間なら、ご家庭としても大丈夫そうですか?」

🔴 保護者

「大丈夫です。」

私はノートに書きました。

18:45〜19:00 家庭学習

そしてもう一つ書きました。

保護者から「勉強しなさい」と言わない

保護者の方が驚きました。

🔴 保護者

「言わなくていいんですか?」

🔵 講師

「まず一週間、試してみましょう。」

🔴 保護者

「でも始めなかったら?」

🔵 講師

「6時45分になったら、一回だけ『時間だよ』と伝えるのはどうでしょう。」

🔴 保護者

「一回だけ?」

🔵 講師

「はい。それ以上は言わない。」

生徒が少し嬉しそうな顔をしました。

🔴 学習者

「それならいい。」

🔴 保護者

「あなたがやればね。」

私は笑いました。

🔵 講師

「まずは実験です。」


次に、何をするかを決めました。

🔵 講師

「15分で何をやる?」

🔴 学習者

「数学。」

🔵 講師

「もう少し具体的に。」

🔴 学習者

「学校のワーク二問。」

🔵 講師

「いいね。」

保護者の方が聞きました。

🔴 保護者

「二問だけでいいんですか?」

🔵 講師

「最初はそれでいいです。」

🔴 保護者

「もっとやった方がいいんじゃ……。」

🔵 講師

「今の一番の目的は、量を増やすことではありません。」

🔴 保護者

「じゃあ?」

🔵 講師

「親に言われる前に、自分で始められる経験を作ることです。」

保護者の方は少し考えて、うなずきました。


一週間後。

授業の最後に、私は二人に聞きました。

🔵 講師

「どうでした?」

保護者の方が先に答えました。

🔴 保護者

「四日は自分からやりました。」

🔵 講師

「おお。」

生徒が少し得意そうに言いました。

🔴 学習者

「言われなくてもやりました。」

🔵 講師

「残りの日は?」

🔴 保護者

「一日は私が『時間だよ』って言いました。」

🔵 講師

「それで始めた?」

🔴 学習者

「始めました。」

🔵 講師

「他の日は?」

🔴 学習者

「一日はできなかった。」

🔵 講師

「それでどうした?」

🔴 保護者

「前だったら何回も言ってたと思います。」

🔵 講師

「今回は?」

🔴 保護者

「言いませんでした。」

少し不安そうに続けます。

🔴 保護者

「正直、かなり我慢しました。」

二人で笑いました。


🔵 講師

「翌日は?」

🔴 学習者

「やりました。」

🔵 講師

「じゃあ、一日できなくても戻れたんだ。」

🔴 学習者

「はい。」

私は保護者の方に尋ねました。

🔵 講師

「一週間、どうでした?」

🔴 保護者

「思ったより楽でした。」

🔵 講師

「何が?」

🔴 保護者

「毎日『勉強したの?』って聞かなくていいので。」

少し笑って続けます。

🔴 保護者

「あと、言い合いが減りました。」

生徒もうなずきました。


しかし、保護者の方には別の不安がありました。

🔴 保護者

「でも先生、15分だけで本当に大丈夫ですか?」

🔵 講師

「ずっと15分でいいという意味ではありません。」

🔴 保護者

「じゃあ?」

🔵 講師

「まず『自分から始める』を安定させます。そのあと中身や時間を少しずつ増やしていきます。」

🔴 保護者

「なるほど。」

🔵 講師

「土台がないところに、いきなり一時間乗せると続きにくいですから。」


その日の授業中、生徒は一問の数学問題で手が止まりました。

🔴 学習者

「先生、分かりません。」

保護者の方が近くにいて、思わず言いました。

🔴 保護者

「そこ、この前もやったでしょう?」

生徒の表情が少し曇りました。

私はすぐに責めることなく言いました。

🔵 講師

「こういうとき、少し違う声のかけ方を試してみましょうか。」

🔴 保護者

「どう言えばいいですか?」

🔵 講師

「例えば『どこまでは分かる?』です。」

保護者の方が、生徒に聞きました。

🔴 保護者

「どこまでは分かる?」

生徒は問題を見ました。

🔴 学習者

「ここまでは分かる。」

🔵 講師

「じゃあ、そこから一緒に見よう。」

少し確認すると、生徒は自分で続きを解くことができました。


授業後、保護者の方が言いました。

🔴 保護者

「私、すぐ『前にもやったでしょう』って言っちゃうんですよね。」

🔵 講師

「よくあることです。」

🔴 保護者

「あれ、言われたら嫌?」

生徒は少し迷いましたが答えました。

🔴 学習者

「嫌。」

🔴 保護者

「そうなんだ……。」

🔴 学習者

「分からないから聞いてるのに、『前やった』って言われても。」

保護者の方は静かにうなずきました。


私は一つ提案しました。

分からない問題が出たとき、家庭では三つだけ確認する。

① どこまでは分かる?

② 教科書やノートで確認できる?

③ それでも分からなければ先生に聞く印を付ける

🔴 保護者

「私が教えなくてもいい?」

🔵 講師

「もちろん、教えられるなら教えても構いません。でも、無理に先生役にならなくても大丈夫です。」

🔴 保護者

「ちょっと安心しました。」

🔵 講師

「保護者の方にしかできない役割もありますから。」

🔴 保護者

「何ですか?」

🔵 講師

「努力を見つけることです。」


私は生徒のノートを見ました。

以前に比べて、途中式が丁寧になっています。

🔵 講師

「ここ、前よりかなり丁寧になったね。」

🔴 学習者

「はい。」

私は保護者の方にも見てもらいました。

🔵 講師

「こういう変化って、ご家庭だから気付けることもあります。」

🔴 保護者

「点数じゃなくて?」

🔵 講師

「もちろん点数も大切です。でも点数が上がる前に変わる部分があります。」

私はいくつか例を挙げました。

自分から机に向かった。

昨日間違えた問題を解き直した。

勉強時間を自分で決めた。

分からない問題に印を付けた。

以前より集中していた。

🔵 講師

「そういうところを具体的に伝えてあげてください。」


数日後。

生徒が家庭学習を終えると、保護者の方が言いました。

🔴 保護者

「今日は自分から始めてたね。」

それだけでした。

「もっとやりなさい」

とも、

「15分だけ?」

とも言いませんでした。

翌日。

生徒は数学の間違い直しをしていました。

🔴 保護者

「昨日間違えたところ、もう一回やってるんだね。」

生徒は少し照れくさそうに、

🔴 学習者

「うん。」

と答えました。

次の授業で、その話を聞きました。

🔵 講師

「言われてどうだった?」

🔴 学習者

「別に。」

私は笑いました。

🔵 講師

「本当に?」

生徒も少し笑いました。

🔴 学習者

「まあ、嫌じゃなかったです。」

保護者の方も笑いました。


それから少しずつ、家庭での会話が変わっていきました。

以前は、

「勉強した?」

「まだ。」

「早くしなさい。」

「あとでやる。」

という会話が多くありました。

今は、

「今日は何時からやる?」

「6時45分。」

「分かった。」

それだけで終わる日が増えてきました。

そして何日かすると、その確認すら必要ない日が増えていきました。


ある日の授業後、保護者の方が私に言いました。

🔴 保護者

「先生、最近私が何も言わなくても始める日が増えてきました。」

🔵 講師

「いいですね。」

🔴 保護者

「でも、何も言わないのって難しいですね。」

🔵 講師

「心配だからですよね。」

🔴 保護者

「はい。見てると『もっとやった方がいいんじゃない?』って言いたくなるんです。」

私はうなずきました。

🔵 講師

「その気持ちは自然だと思います。」

少し間を置いて続けました。

🔵 講師

「でも、今は『勉強量を増やすこと』と同じくらい、『自分で決めて動く経験』を増やしたいんです。」

🔴 保護者

「自分で決める経験……。」

🔵 講師

「はい。」

ちょうどそのとき、生徒が自分の学習記録を見ながら言いました。

🔴 学習者

「先生、来週は数学15分じゃなくて20分にしてみます。」

保護者の方が驚きました。

🔴 保護者

「自分で増やすの?」

🔴 学習者

「15分だと途中で終わることあるから。」

私は笑顔でうなずきました。

誰かに「もっと勉強しなさい」と言われたからではありません。

自分で続けてみた結果、

「もう少しできそうだ」

と本人が判断したのです。

そして、この小さな変化をきっかけに、保護者の方も「何をさせるか」を考えるだけではなく、どこまで任せ、どんなときに支えるのがよいのかを少しずつ考えるようになっていったのです。





「任せるって、何もしないことじゃないんですね」

それから数週間が経ちました。

生徒の家庭学習は、少しずつ安定してきました。

毎日完璧にできるわけではありません。

疲れている日は、予定していた20分が10分になることもあります。

部活動で帰宅が遅くなり、何もできない日もありました。

それでも以前のように、

「勉強しなさい」

と言われなければ何もしない状態ではなくなってきました。

ある日の授業後、保護者の方が私に言いました。

🔴 保護者

「先生、最近ちょっと分かってきた気がします。」

🔵 講師

「何がですか?」

🔴 保護者

「任せるって、何もしないことじゃないんですね。」

私はうなずきました。

🔵 講師

「そうですね。」

🔴 保護者

「前は、私が言わなかったら放っておくことになると思ってました。」

🔵 講師

「だから心配だったんですね。」

🔴 保護者

「はい。」

少し考えてから続けます。

🔴 保護者

「でも今は、見てはいるんです。」

🔵 講師

「はい。」

🔴 保護者

「ただ、すぐ口を出さない。」

その言葉は、とても大きな変化でした。


保護者の方は、子どもの勉強に関心を失ったわけではありません。

むしろ以前と同じように、よく見ています。

今日は自分から始めた。

今日は少し疲れている。

数学で手が止まっている。

テストが近づいている。

そうしたことには気付いています。

しかし、

「気付いたらすぐ指示する」

という関わり方を少しずつ減らしていました。


その日の授業中、生徒が言いました。

🔴 学習者

「先生、来週テストあります。」

🔵 講師

「何のテスト?」

🔴 学習者

「英語。」

🔵 講師

「じゃあ、どうする?」

以前なら、私が計画を決めていたでしょう。

しかし、生徒は自分のノートを開きました。

🔴 学習者

「単語が一番やばいので、そこからやります。」

🔵 講師

「何個くらい?」

🔴 学習者

「範囲が80個。」

🔵 講師

「一日で?」

🔴 学習者

「無理です。」

🔵 講師

「じゃあ?」

🔴 学習者

「分けます。」

生徒はカレンダーを見ながら考えました。

🔴 学習者

「一日20個ずつやって、最後の日に全部確認します。」

🔵 講師

「いいね。」

近くで聞いていた保護者の方は、何も言いませんでした。


授業が終わってから、保護者の方が小さな声で言いました。

🔴 保護者

「今、口出したくなりました。」

私は笑いました。

🔵 講師

「何て言いたかったんですか?」

🔴 保護者

「『20個じゃ足りないんじゃない?』って。」

🔵 講師

「言わなかったですね。」

🔴 保護者

「はい。」

🔵 講師

「どうしてですか?」

🔴 保護者

「本人が考えて決めたから、一回やらせてみようと思って。」

私はうなずきました。

これが「任せる」ということです。


もちろん、本人が立てた計画が必ず成功するとは限りません。

実際、その週の英単語学習も、予定どおりには進みませんでした。

次の授業。

🔵 講師

「英単語どうだった?」

生徒が苦笑いしました。

🔴 学習者

「ちょっと失敗しました。」

🔵 講師

「何があった?」

🔴 学習者

「一日20個って決めたけど、二日目にやりませんでした。」

🔵 講師

「それで?」

🔴 学習者

「次の日40個になりました。」

🔵 講師

「できた?」

🔴 学習者

「無理でした。」

私はすぐに、

「だから毎日やらないとダメなんだ」

とは言いませんでした。

代わりに聞きました。

🔵 講師

「じゃあ次はどうする?」

生徒は少し考えます。

🔴 学習者

「一日できなかったら、次の日に全部乗せない。」

🔵 講師

「じゃあどうする?」

🔴 学習者

「残りの日に少しずつ分ける。」

🔵 講師

「いいね。」


保護者の方が、そのやり取りを聞いていました。

授業後に言いました。

🔴 保護者

「前の私だったら、絶対『だから言ったでしょう』って言ってました。」

🔵 講師

「今回は?」

🔴 保護者

「言いませんでした。」

🔵 講師

「本人が自分で気付いていましたからね。」

🔴 保護者

「失敗させてもいいんですね。」

🔵 講師

「小さな失敗なら、それも勉強です。」


子どもが失敗しそうになると、親は助けたくなります。

忘れ物をしそうなら、

「持った?」

と確認する。

宿題が残っていたら、

「まだ終わってないでしょう」

と声をかける。

テスト勉強が足りないと思えば、

「もっとやりなさい」

と言う。

もちろん、本当に必要なときには支えるべきです。

しかし、すべての失敗を大人が先回りして防いでしまうと、

「失敗したあと、どう立て直すか」

を経験する機会まで失ってしまうことがあります。


しばらくして、定期テストがありました。

結果が返ってきた日のことです。

生徒は数学の答案を持ってきました。

前回より8点上がっていました。

🔴 保護者

「先生、数学上がりました。」

🔵 講師

「よかったですね。」

生徒も少し嬉しそうです。

🔵 講師

「自分ではどう?」

🔴 学習者

「まあまあ。」

🔵 講師

「嬉しくない?」

🔴 学習者

「嬉しいです。」

みんなで笑いました。


しかし、英語は前回とほぼ同じ点数でした。

保護者の方が答案を見ます。

以前なら、

「せっかく勉強したのに」

と言っていたかもしれません。

しかし今回は違いました。

🔴 保護者

「英語は、どこが難しかった?」

生徒が答案を見ました。

🔴 学習者

「単語。」

🔴 保護者

「やっぱり?」

🔴 学習者

「あと長文。」

🔴 保護者

「じゃあ、次はどうする?」

生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「単語をもっと早く始める。」

保護者の方は、それ以上言いませんでした。


私はあとで保護者の方に言いました。

🔵 講師

「今の聞き方、よかったと思います。」

🔴 保護者

「本当ですか?」

🔵 講師

「『なんでこの点数なの?』ではなく、『次どうする?』になっていました。」

保護者の方は少し笑いました。

🔴 保護者

「前だったら、たぶん怒ってました。」

🔵 講師

「何が変わりました?」

しばらく考えてから答えました。

🔴 保護者

「点数だけじゃなくて、前より勉強しているのを見ているからかもしれません。」


その言葉には、大切な意味があります。

結果だけを見ていると、

70点。

60点。

50点。

という数字だけで子どもを判断してしまいます。

しかし、日々の行動を見ると、

自分から机に向かうようになった。

学習時間を自分で決めるようになった。

分からない問題に印を付けるようになった。

家庭教師へ質問するようになった。

テスト前に計画を立てるようになった。

という変化が見えてきます。

それを知っているからこそ、一回の点数だけで、

「全然ダメだった」

と決めつけなくて済むようになったのです。



「勉強しなさい」がなくても勉強するようになった

さらに時間が経ちました。

ある日の授業前。

私はいつものように生徒へ聞きました。

🔵 講師

「今週どうだった?」

🔴 学習者

「普通です。」

🔵 講師

「勉強は?」

🔴 学習者

「やりました。」

🔵 講師

「何日?」

生徒は学習記録を確認しました。

🔴 学習者

「5日。」

🔵 講師

「おお。お母さんに何回言われた?」

生徒は保護者の方を見ました。

🔴 学習者

「言われてない。」

🔵 講師

「一回も?」

🔴 保護者

「今週は言ってないですね。」

私は笑いました。

🔵 講師

「最初の頃、覚えてます?」

保護者の方も笑いました。

🔴 保護者

「毎日言ってました。」

🔴 学習者

「めっちゃ言われてました。」

🔴 保護者

「だって本当にやらなかったから。」

🔴 学習者

「まあ、それはそう。」

三人で笑いました。


私は生徒に聞きました。

🔵 講師

「今は、どうして勉強するの?」

🔴 学習者

「やらないと後で大変だから。」

🔵 講師

「誰かに怒られるから?」

🔴 学習者

「それも前はあったけど。」

少し考えて続けました。

🔴 学習者

「テスト前に全部やる方がしんどいって分かったから。」

🔵 講師

「なるほど。」

🔴 学習者

「少しずつやった方が楽です。」

それは、誰かから言われて覚えた言葉ではありません。

自分でやってみて、失敗して、修正して得た実感でした。


授業の終わり。

保護者の方が私に聞きました。

🔴 保護者

「先生、最近はあまり勉強のことを言わなくなったんですけど、それでいいんでしょうか?」

🔵 講師

「今の状態なら、いいと思います。」

🔴 保護者

「何もしなくても?」

🔵 講師

「何もしていないわけではないですよ。」

🔴 保護者

「そうですか?」

🔵 講師

「毎日見ているでしょう?」

🔴 保護者

「はい。」

🔵 講師

「必要なときは話を聞いていますよね。」

🔴 保護者

「はい。」

🔵 講師

「生活のことも支えている。」

🔴 保護者

「それは親なので。」

🔵 講師

「それが大事なんです。」


私は続けました。

🔵 講師

「勉強を教える人は、学校にも家庭教師にもいます。」

🔴 保護者

「はい。」

🔵 講師

「でも、この子が毎日帰ってきて、安心して過ごせる場所をつくれるのは、ご家庭です。」

保護者の方は静かに聞いていました。

🔵 講師

「だから、全部を教えなくてもいいんです。」

🔴 保護者

「……そう考えると、ちょっと楽ですね。」

🔵 講師

「困ったときに支えてあげればいい。」

🔴 保護者

「普段は任せる。」

🔵 講師

「はい。」


その日の帰り際。

生徒が保護者の方に言いました。

🔴 学習者

「明日、学校から帰ったら数学やる。」

🔴 保護者

「分かった。」

それだけでした。

「何時から?」

とも、

「絶対やりなさいよ」

とも言いません。

生徒自身が決めたことだからです。


次の授業。

🔵 講師

「数学やった?」

🔴 学習者

「やりました。」

🔵 講師

「忘れなかった?」

🔴 学習者

「一回ゲームしようと思ったけど、先にやりました。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「あとでやると面倒になるから。」

保護者の方が横から言いました。

🔴 保護者

「私、何も言ってませんよ。」

少し嬉しそうでした。


私はその様子を見ながら思いました。

保護者の方が勉強を「させなくなった」ことで、子どもが勉強しなくなったわけではありません。

むしろ、

「言われたからやる」

という状態から、

「自分で決めてやる」

という状態へ少しずつ変わっていました。

もちろん、これからも波はあります。

勉強したくない日もあるでしょう。

計画どおりいかないこともあります。

成績が下がることもあるかもしれません。

そんなときに、

「やっぱり親が全部管理しないとダメだ」

と戻る必要はありません。

困っているなら少し支える。

自分でできそうなら任せる。

失敗したら、一緒に次の方法を考える。

そしてまた任せる。

その繰り返しでいいのです。


おわりに

保護者ができる最高のサポートは、

「毎日勉強させること」

ではありません。

もちろん、最初は声かけが必要な子もいます。

学習習慣がない時期には、

「そろそろ時間だよ」

と知らせることも必要でしょう。

教材を一緒に準備することもあるでしょう。

家庭教師と一緒に学習計画を作ることもあります。

しかし、その支援の目的は、いつまでも親が管理し続けることではありません。

少しずつ、

「自分でできること」

を増やしていくことです。

最初は親が決める。

次は一緒に決める。

その次は本人が決める。

そして、親は見守る。

必要なときだけ支える。

このように、子どもの成長に合わせて保護者の立ち位置も変えていきます。

そしてもう一つ、大切なことがあります。

点数だけで子どもの成長を判断しないことです。

テストで10点上がることだけが成長ではありません。

自分から机に向かった。

昨日間違えた問題を解き直した。

分からないと言えるようになった。

家庭教師に質問を持っていけるようになった。

自分で勉強時間を決めた。

計画に失敗したあと、自分で修正した。

こうした変化も、立派な成長です。

むしろ、こうした行動の変化が積み重なった先に、成績の変化があります。

保護者だからこそ、結果が気になります。

将来が心配になります。

「もっとやらせなければ」と思うこともあるでしょう。

そんなときは、

「今、私がやろうとしていることは、この子が自分でできるようになるための助けになっているだろうか」

と考えてみてください。

すぐに答えを教えるより、少し待つ。

「勉強しなさい」と言うより、始めやすい環境をつくる。

失敗を責めるより、

「次はどうする?」

と聞く。

点数だけを見るより、そこまでの行動を見る。

そして、専門的な学習指導が必要なところは、学校や家庭教師に任せる。

保護者がすべてを背負う必要はありません。

子どもが一人で歩けないときには手を差し出す。

少し歩けるようになったら、手を離して横で見る。

転んだら、すぐに抱き上げるのではなく、自分で立てるか少し待ってみる。

そして、本当に助けが必要なときには支える。

家庭学習も、それとよく似ています。

「何でもしてあげること」ではなく、「自分でできるようになるまで支えること」。

それが、保護者だからこそできる、家庭学習における最高のサポートなのです。



理論編はこちらから

⑯ 保護者ができる最高のサポート(理論編)

はじめに 「親として、何をしてあげれば成績が伸びるのでしょうか。」 家庭教師として保護者の方とお話ししていると、このような質問を受けることがあります。 勉強を教えた方がいいのか。 毎日「勉強しなさい」と言った方がいいのか […]

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