- 1. はじめに
- 2. 1.子どもが「どこから分からないのか」を説明できない理由
- 2.1. 分からない状態が長く続いている
- 2.2. 問題を解く過程を意識していない
- 2.3. 間違いを指摘されることへの不安がある
- 3. 2.「できるところ」から確認することが重要
- 3.1. 最初から難しい問題を解かせない
- 3.2. 正解できる問題を見つける
- 3.3. 「できた」の意味を確認する
- 4. 3.教科別に考える「つまずきの発見方法」
- 4.1. 数学は途中式から原因を探す
- 4.2. 英語は単語・文法・読解を分けて考える
- 4.3. 国語や理科・社会でも原因を分けて考える
- 5. 4.家庭でできるつまずき発見の手順
- 5.1. 手順① 間違えた問題を集める
- 5.2. 手順② 何も見ずに解いてみる
- 5.3. 手順③ 分かる部分と分からない部分を分ける
- 5.4. 手順④ 関連する以前の単元を確認する
- 5.5. 手順⑤ つまずきを一つずつ整理する
- 6. 5.家庭教師がつまずきを見つけるときに大切にすること
- 6.1. 間違いを責めない
- 6.2. できる部分も必ず伝える
- 6.3. 一度の確認で決めつけない
- 6.4. 子ども自身が原因を理解できるようにする
- 7. おわりに
- 7.1.1. 実際の例はこちらから
はじめに

「どこが分からないの?」
勉強で困っている子どもに対して、保護者や先生がよく使う言葉です。
しかし、この質問にすぐ答えられる子どもは、必ずしも多くありません。
「全部分からない」
「何が分からないのか分からない」
「途中までは分かるけど、どこから分からなくなったのか覚えていない」
このような返事が返ってくることがあります。
大人からすると、どこが分からないのか教えてくれれば説明できるのに、と思うかもしれません。
しかし、子ども自身が自分のつまずきを正確に把握できていないことは珍しくありません。
特に、以前の学年や単元で理解が不十分な部分がある場合、現在の学習内容とのつながりが分からず、苦手な原因を特定することが難しくなります。
例えば、中学2年生の数学で連立方程式が解けない子どもがいたとします。
本人は「連立方程式が分からない」と考えています。
ところが、実際に問題を解いてもらうと、連立方程式の解き方は理解しているものの、途中の正負の数の計算で間違えている場合があります。
また、英語の長文読解が苦手な子どもでも、原因は長文そのものではなく、単語や文法の理解不足にあるかもしれません。
このように、表面に現れている苦手と、本当のつまずきの場所が一致しているとは限りません。
大切なのは、子どもに「どこが分からないのか」を答えさせることだけではありません。
実際の問題の解き方を確認しながら、どこまで理解できていて、どこから支援が必要なのかを一緒に探していくことです。
今回は、家庭教師の指導でも重要となる「つまずきの発見方法」について考えていきます。
1.子どもが「どこから分からないのか」を説明できない理由
勉強が苦手な子どもの中には、自分の苦手な部分をうまく言葉にできない子どもがいます。
これは、必ずしも考える力が不足しているからではありません。
いくつかの理由が考えられます。
分からない状態が長く続いている
最初は、一つの単元が理解できなかっただけかもしれません。
しかし、そのまま次の単元へ進み、さらに新しい内容を学ぶことで、分からない部分が増えていくことがあります。
例えば、数学で正負の数の計算が十分に理解できていない状態で、文字式や方程式へ進んだ場合です。
最初のつまずきは正負の数だったとしても、本人には文字式も方程式も難しく感じられるようになります。
その結果、
「数学は全部分からない」
という感覚になってしまうことがあります。
こうなると、どの単元が最初の原因だったのかを本人が説明するのは難しくなります。
問題を解く過程を意識していない
問題を解くとき、子どもは答えが合っているかどうかを気にすることが多いものです。
しかし、どの段階で間違えたのかまでは確認していない場合があります。
例えば、数学の文章問題で答えが間違っていたとします。
原因は、問題文の読み取りかもしれません。
式の立て方かもしれません。
計算の途中かもしれません。
しかし、本人が答えだけを見ていると、
「この問題はできなかった」
という認識で終わってしまいます。
それでは、何を練習すればよいのかが分かりません。
間違いを指摘されることへの不安がある
「どこが分からないの?」
という質問に対して、答えることをためらう子どももいます。
以前に、
「こんなことも分からないの?」
「前に習ったでしょう?」
と言われた経験があると、分からないことを伝えるのが怖くなる場合があります。
その結果、本当は理解できていないのに、
「大丈夫」
「分かった」
と答えてしまうことがあります。
つまずきを見つけるためには、子どもが安心して間違えられる環境を整えることも重要です。
2.「できるところ」から確認することが重要
つまずきを探すとき、多くの人は「できないところ」に注目します。
しかし、実際には「どこまでできるのか」を確認することが重要です。
最初から難しい問題を解かせない
例えば、中学2年生の数学が苦手な子どもに、現在習っている難しい問題を何問も解かせたとします。
ほとんど解けなければ、苦手であることは分かります。
しかし、それだけでは原因を特定できません。
そこで、少し簡単な問題へ戻ります。
連立方程式が解けないなら、一次方程式を確認する。
一次方程式が難しければ、文字式の計算を確認する。
文字式が不安定なら、正負の数の計算を確認する。
このように、関連する学習内容を少しずつ確認していきます。
ただし、必ず決まった順番で戻る必要はありません。
実際の間違い方を見ながら、必要な単元を選ぶことが大切です。
正解できる問題を見つける
つまずきを探す目的は、できない問題を大量に見つけることではありません。
どこまで自力でできるのかを明らかにすることです。
例えば、一次方程式の基本問題は正解できるものの、分数を含む方程式になると間違える子どもがいたとします。
この場合、一次方程式全体を最初からやり直す必要はないかもしれません。
分数の計算や分母を払う操作を重点的に確認することで、改善につながる可能性があります。
できる部分を確認することは、必要な復習範囲を絞ることにもつながります。
「できた」の意味を確認する
ただし、正解した問題でも、どのように解いたのかを確認する必要があります。
自分の力で解けたのか。
ヒントをもらって解けたのか。
答えを覚えていただけなのか。
偶然正解したのか。
これらは同じではありません。
例えば、以前に解いた問題をそのまま覚えていて正解した場合、考え方を理解しているとは限りません。
そこで、数字や条件を少し変えた問題を出してみます。
同じ考え方を使って解けるかを確認することで、理解の状態をより詳しく把握できます。
3.教科別に考える「つまずきの発見方法」
つまずきの探し方は、教科によって異なります。
ここでは、数学と英語を中心に考えてみます。
数学は途中式から原因を探す
数学では、途中式が重要な手がかりになります。
例えば、次の方程式を考えてみましょう。
3x-5=10
正しく解けば、
3x=15
x=5
となります。
しかし、子どもが途中で、
3x=10-5
と書いたとします。
この場合、単純な計算ミスではなく、移項や等式の扱い方が十分に理解できていない可能性があります。
一方、
3x=15
までは正しく書けているのに、最後の割り算を間違えた場合は、別の原因が考えられます。
同じ不正解でも、どの段階で間違えたかによって必要な指導が変わるのです。
また、途中式を書かずに暗算で解いている場合は、考え方を確認しにくくなります。
そのため、つまずきを調べるときには、途中の考え方をできるだけ書いてもらうことが有効です。
英語は単語・文法・読解を分けて考える
英語の長文読解が苦手な子どもの場合、原因は一つとは限りません。
例えば、英文を読んでも意味が分からない場合、次のような可能性があります。
- 単語の意味を知らない
- 主語と動詞を見つけられない
- 文法の構造が理解できていない
- 一文ずつは読めるが、文章全体の内容を整理できない
これらを区別するためには、長文問題だけでなく、短い英文でも確認します。
例えば、
She has lived in Fukui for three years.
という英文を見せます。
単語の意味が分かるか。
主語と動詞を見つけられるか。
現在完了形の意味を理解できるか。
このように確認することで、どの部分に課題があるのかを探しやすくなります。
短い英文は理解できるのに長文になると読めない場合には、文章のつながりを捉える力や、読む速さなども確認する必要があります。
国語や理科・社会でも原因を分けて考える
国語の読解問題が苦手な場合も、原因はさまざまです。
文章中の語句が分からないのか。
設問の意味が分からないのか。
答えの根拠となる部分を探せないのか。
記述問題で自分の考えを文章にまとめられないのか。
それぞれ必要な練習が異なります。
理科や社会でも、用語を覚えていない場合と、覚えた知識を使って考えることが難しい場合では対策が変わります。
単に「理科が苦手」「社会が苦手」と考えるのではなく、どのような問題で困っているのかを具体的に確認することが重要です。
4.家庭でできるつまずき発見の手順
つまずきを見つけるために、必ずしも特別な教材が必要なわけではありません。
学校のワークや教科書、過去のテストなどを活用することができます。
手順① 間違えた問題を集める
まずは、最近のテストや問題集から、間違えた問題をいくつか選びます。
このとき、すべての間違いを一度に確認する必要はありません。
同じ種類の間違いが繰り返されている問題を優先します。
例えば、数学で符号の間違いが多いなら、そのような問題を集めます。
英語で語順の間違いが多いなら、英文を作る問題を確認します。
手順② 何も見ずに解いてみる
次に、答えや解説を隠して、もう一度解いてみます。
このとき、できれば途中の考え方も書いてもらいます。
自力で解けるかどうかを確認するためです。
解けなかった場合も、すぐに答えを教える必要はありません。
どこまで自分で考えられるのかを確認します。
手順③ 分かる部分と分からない部分を分ける
問題を解く途中で手が止まったら、細かく確認します。
「問題文の意味は分かる?」
「何を求める問題?」
「最初の式は作れる?」
「ここまでの計算はできる?」
このように質問することで、つまずきの場所を絞っていきます。
重要なのは、答えを誘導しすぎないことです。
ヒントを出しすぎると、本人がどこまで自力でできるのか分からなくなることがあります。
手順④ 関連する以前の単元を確認する
現在の問題で必要な知識が不足している場合には、関連する以前の単元を確認します。
例えば、連立方程式の途中で符号を間違えるなら、正負の数の計算を確認する。
英語の現在完了形でつまずいているなら、動詞の過去分詞や基本的な語順を確認する。
このように、現在の学習と関連する部分へ戻ります。
手順⑤ つまずきを一つずつ整理する
最後に、確認できた内容を整理します。
例えば、次のような表を作ります。
| 学習内容 | 確認結果 | 次に取り組むこと |
|---|---|---|
| 正負の数 | 符号の計算が不安定 | 加減計算を復習 |
| 文字式 | 基本問題は解ける | 現在の学習で活用 |
| 一次方程式 | 分数を含む問題で間違える | 分数計算を確認 |
| 連立方程式 | 加減法は理解している | 計算の正確さを高める |
このように整理すると、何を優先して勉強すればよいかが分かりやすくなります。
また、子ども自身も「全部分からない」のではなく、「ここを練習すればよい」と考えやすくなります。
5.家庭教師がつまずきを見つけるときに大切にすること
家庭教師が子どものつまずきを探すとき、単にテストをして苦手な単元を見つけるだけでは十分ではありません。
学習の進め方や、子どもの気持ちにも目を向ける必要があります。
間違いを責めない
つまずきを確認する過程では、以前に習った内容ができないこともあります。
しかし、そのことを責めてしまうと、子どもは間違いを隠そうとするかもしれません。
例えば、
「こんな問題も分からないの?」
と言われると、子どもは不安になります。
その結果、分からないことを正直に伝えにくくなる場合があります。
そこで、
「ここが分かれば、今の問題も解きやすくなるね」
「原因が見つかったから、次にやることが分かったね」
と伝えることが大切です。
つまずきの発見は、できないことを責めるためではありません。
できるようになるための出発点を見つけることなのです。
できる部分も必ず伝える
苦手な原因を探していると、どうしても間違いばかりに注目しがちです。
しかし、できている部分も確認する必要があります。
例えば、
「問題文の意味は理解できているね」
「式の立て方は合っているよ」
「途中までは正しく計算できているね」
と伝えます。
そうすることで、子どもは自分の理解できている部分を認識しやすくなります。
「全部できない」という感覚を、「ここまではできる」という具体的な理解に変えることが重要です。
一度の確認で決めつけない
一度間違えたからといって、その単元を理解していないと断定することはできません。
たまたま計算を間違えた可能性もあります。
問題文を読み違えた可能性もあります。
その日の集中力や疲れが影響している場合もあります。
そのため、似た問題をいくつか解いてもらい、同じ間違いが繰り返されるかを確認します。
また、説明を聞けば解けるのか、自分だけで解けるのかも区別します。
こうした確認を重ねることで、つまずきの状態をより正確に把握しやすくなります。
子ども自身が原因を理解できるようにする
最終的には、家庭教師だけが原因を理解している状態では不十分です。
子ども自身も、
「自分はここで間違えやすい」
「この計算を確認すればよい」
「この単元を復習すると、今の問題が解きやすくなる」
と考えられるようになることが大切です。
そのためには、間違いを見つけたときに、原因を一緒に確認する習慣をつけます。
例えば、
「どこまでは正しくできていた?」
「何を勘違いしていた?」
「次に同じ問題が出たら、何を確認する?」
といった質問です。
こうした振り返りを繰り返すことで、子どもは少しずつ自分の学習状況を把握できるようになります。
これは、家庭教師の指導を受けている時間だけでなく、将来自分で勉強を進めるためにも役立つ力です。
おわりに
勉強が分からなくなったとき、子ども自身がその原因を説明できるとは限りません。
「全部分からない」
「どこから分からなくなったのか分からない」
という言葉の背景には、以前の学習内容の理解不足や、複数のつまずきが重なっている場合があります。
だからこそ、必要なのは、できないことを責めることではありません。
どこまで理解できていて、どこから支援が必要なのかを一緒に探すことです。
まずは、現在の問題を解いてもらう。
途中の考え方を確認する。
分かる部分と分からない部分を分ける。
必要であれば、関連する以前の単元へ戻る。
そして、つまずきの場所を具体的に整理する。
この流れを意識することで、勉強の課題が見えやすくなります。
また、つまずきを見つけるときには、子どもの気持ちにも配慮することが重要です。
以前の学年の問題ができなかったとしても、それは恥ずかしいことではありません。
むしろ、今まで分からなかった原因が見つかったと考えることができます。
そして、原因が分かれば、必要な練習を選びやすくなります。
数学が全部苦手なのではなく、符号の計算が不安定だった。
英語が全部分からないのではなく、基本的な語順の理解が曖昧だった。
こうした具体的な課題が見つかれば、勉強の進め方を変えることができます。
「分からない場所が分からない」という状態から、「ここを練習すればよい」という状態へ。
この変化が、学習を立て直すための大切な一歩になります。
家庭教師の役割は、ただ問題の解き方を教えることではありません。
子どもがどこでつまずいているのかを見つけ、必要な学習を整理し、自分の力で前へ進めるように支えることです。
勉強が分からなくなったときこそ、焦って先へ進むのではなく、今どこにいるのかを確認してみてください。
そこから、次に進むための道筋が見えてくるはずです。
実際の例はこちらから
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事例プロフィール はじめに 「英語が全然分かりません」 そう話す子どもに、 「どこが分からないの?」 と質問すると、 「それが分からないんです」 という答えが返ってくることがあります。 勉強が苦手な子どもにとって、自分の […]
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