はじめに
勉強時間は多いのに結果が出ない・・・なかなか辛いです。
昨日は学校から帰ってきて3時間・・・。
きちんとできてますね・・・。
でも・・・。
結果が・・・。ってやつか。
はじめに

「勉強していないから成績が上がらない」
そう言われれば、本人にも思い当たるところがあるかもしれません。
しかし、本当につらいのは、勉強しているのに結果が出ないときです。
以前より机に向かっている。
問題集も進めている。
テスト前には遊ぶ時間も減らした。
それなのに、返ってきた答案を見ると前回とほとんど変わらない。
そんな経験が続けば、
「これ以上、何をすればいいの?」
と思ってしまうでしょう。
今回は、中学2年生の学習者が数学のテスト結果を家庭教師に見せる場面から始まります。
本人は勉強していなかったわけではありません。
むしろ、今回はいつもより頑張ったつもりでした。
だからこそ、結果を受け入れられずにいました。
家庭教師はそこで「もっと勉強しよう」とは言いませんでした。
最初に始めたのは、
「なぜ点数につながらなかったのか」を一緒に探すこと
でした。
「今回は勉強したのに……」
家庭教師がいつものように机の横へ座ると、学習者は少し不機嫌そうな表情で数学の答案を出しました。
点数は52点。
前回は50点だったので、ほとんど変わっていません。
🔵 講師
「テスト返ってきたんだね。見せてもらってもいい?」
🔴 学習者
「はい。でも今回、全然ダメでした」
🔵 講師
「52点か。前回が50点だったよね」
🔴 学習者
「そうです」
学習者はそう答えると、少し黙りました。
🔵 講師
「どうした?何か気になる?」
🔴 学習者
「今回、結構勉強したんですよ」
🔵 講師
「うん」
🔴 学習者
「前のテストより絶対やったと思います。数学も毎日じゃないけど、かなりやったし。テスト前の日曜日もずっと勉強してました」
🔵 講師
「それなのに52点だったから、納得できない?」
🔴 学習者
「はい。これだったら、勉強してもしなくても同じじゃないですか」
その言葉には、怒りというよりも落胆が表れていました。
本人なりに時間を使った。
ゲームも我慢した。
いつもより問題集も進めた。
だから今回は、少なくとも前回よりかなり点数が上がると思っていたのです。
🔵 講師
「勉強しても意味がないと思った?」
🔴 学習者
「ちょっと思いました。だって、前よりやったのに2点しか上がってないし」
🔵 講師
「じゃあ今日は、いきなり次の単元に進むのをやめようか」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「この52点を取った理由を調べてみよう」
🔴 学習者
「理由?」
🔵 講師
「そう。『52点だった』というのは結果だよね。でも、どうして52点だったのかは、点数だけ見ても分からない」
🔴 学習者
「勉強ができないからじゃないんですか?」
🔵 講師
「それはまだ分からない。だから調べるんだよ」
講師は答案と問題用紙を机に並べました。
間違えた問題を一つずつ確認していきます。
すると、いくつかの特徴が見えてきました。
計算問題で符号を間違えている。
方程式の途中式でミスをしている。
文章問題では式そのものを作れていない。
そして、後半にはほとんど手をつけていない問題もありました。
🔵 講師
「これ、時間が足りなかった?」
🔴 学習者
「はい。最後のほうは時間なくて」
🔵 講師
「じゃあ、全部『数学が分からなかったから間違えた』わけではなさそうだね」
🔴 学習者
「どういうことですか?」
🔵 講師
「計算ミスもある。解き方が分からなかった問題もある。時間がなくて解けなかった問題もある。全部原因が違うよね」
学習者は答案を見ながら、
「確かに……」
と小さく答えました。
これまで本人は、
52点=自分は数学ができない
と考えていました。
しかし、答案を細かく見ていくと、その52点はいくつもの原因が重なってできた結果だったのです。
「勉強した」の中身を確認してみる
答案を確認した講師は、今度はテスト前の勉強について聞きました。
🔵 講師
「ところで、今回かなり勉強したって言ってたよね。どんな勉強をした?」
🔴 学習者
「学校のワークです」
🔵 講師
「何回くらいやった?」
🔴 学習者
「一応、全部やりました」
🔵 講師
「間違えた問題は?」
🔴 学習者
「答え合わせしました」
🔵 講師
「その後は?」
🔴 学習者
「その後?」
🔵 講師
「間違えた問題を、もう一回解いた?」
🔴 学習者
「……やってないです」
🔵 講師
「じゃあ、分からなかった問題はどうした?」
🔴 学習者
「答え見ました」
🔵 講師
「答えを見た後、自分だけでもう一回解いてみた?」
🔴 学習者
「やってないですね」
ここで講師は、一つの問題を指しました。
テストで間違えていた方程式です。
🔵 講師
「じゃあ、この問題を今もう一度やってみようか」
🔴 学習者
「今ですか?」
🔵 講師
「うん。時間は気にしなくていいから」
学習者は問題を解き始めました。
ところが途中で鉛筆が止まります。
🔴 学習者
「あれ……これ、どうするんでしたっけ?」
🔵 講師
「このタイプ、ワークにもなかった?」
🔴 学習者
「あったと思います」
🔵 講師
「そのときはできた?」
🔴 学習者
「いや……答え見たかもしれません」
講師はそこで、学校のワークを出してもらいました。
同じような問題を探すと、確かに丸がついています。
しかし、よく見ると答えの数字だけが書かれていて、途中式がほとんどありませんでした。
🔵 講師
「この問題、丸がついているね」
🔴 学習者
「はい」
🔵 講師
「でも今は解けなかった。どうしてだと思う?」
🔴 学習者
「答え見たから?」
🔵 講師
「たぶん、それが一つの原因だと思う」
🔴 学習者
「でも、答えを見たら解き方は分かったんですよ」
🔵 講師
「そこが大事なんだ。『解説を見たら分かる』と『何も見ずに自分で解ける』は、似ているようで違うんだよ」
学習者は少し考えてから言いました。
🔴 学習者
「じゃあ俺、勉強したつもりになってただけってことですか?」
🔵 講師
「全部が無駄だったわけじゃないよ。ワークを最後までやったこと自体は前より進歩してる。ただ、その次の段階が足りなかったんだと思う」
🔴 学習者
「次の段階?」
🔵 講師
「間違えた問題を、自分で解けるようになるまでやり直すこと」
講師はノートに簡単な流れを書きました。
問題を解く
↓
答え合わせ
↓
間違えた理由を確認
↓
解き直す
↓
数日後にもう一度解く
🔵 講師
「今までは、どこまでやってた?」
🔴 学習者
「答え合わせまでです」
🔵 講師
「そうだね。だから勉強時間は増えていた。でも、『できない問題をできる問題に変える時間』が少なかったのかもしれない」
🔴 学習者
「じゃあ、もっと長く勉強しないとダメってこと?」
🔵 講師
「いや。むしろ逆かもしれない」
🔴 学習者
「逆?」
🔵 講師
「今までと同じ時間でも、やり方を変えればいい。新しい問題をどんどん進めるだけじゃなくて、間違えた問題に時間を使うんだ」
🔴 学習者
「でも、それだとワークが進まなくないですか?」
🔵 講師
「進むページ数は減るかもしれない。でも、勉強の目的はワークを終わらせることかな?」
🔴 学習者
「テストで解けるようになること……」
🔵 講師
「そう。だったら『何ページやったか』より、『何問できるようになったか』を見たほうがいいよね」
学習者はしばらくワークを眺めていました。
そして、自分から先ほど解けなかった方程式にもう一度鉛筆を置きました。
🔴 学習者
「じゃあ、これもう一回やってみます」
🔵 講師
「いいね。ただ、その前に一つ確認してみよう」
🔴 学習者
「何ですか?」
🔵 講師
「この方程式だけ練習すれば、本当に解けるようになるのか。それとも、もっと前のところに原因があるのか」
🔴 学習者
「もっと前?」
🔵 講師
「うん。さっきの答案で、ちょっと気になるところがあったんだ」
講師は答案の最初に戻り、ある計算問題を指しました。
そこには、今回のテスト範囲よりも前に学習していた内容に関係する、小さなミスが残っていました。
本当の原因は、もっと前にあった
🔵 講師
「この計算、もう一回やってみようか」
講師が指したのは、正負の数を含む計算問題でした。
今回の中心的なテスト範囲ではありません。しかし、方程式を解くためにも必要になる基本的な計算です。
🔴 学習者
「これは簡単ですよ」
学習者はすぐに鉛筆を動かしました。
ところが、答えは間違っていました。
🔴 学習者
「あれ?」
🔵 講師
「もう一回確認してみよう」
🔴 学習者
「……あ、マイナス間違えた」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、もう一問いこう」
似た問題を出します。
今度は正解しました。
さらにもう一問。
また符号を間違えました。
🔴 学習者
「なんでこんなの間違えるんだろう。これ、中1でやったやつですよね?」
🔵 講師
「そうだね」
🔴 学習者
「じゃあ俺、中1からやり直さないとダメなんですか?」
声の調子が少し下がりました。
本人にとって「前の学年に戻る」ということは、「自分は周りより遅れている」と認めるように感じられたのかもしれません。
しかし、講師は首を横に振りました。
🔵 講師
「中1を全部やり直す必要はないよ」
🔴 学習者
「でも、これできてないですよね」
🔵 講師
「だから、できていないところだけ戻ればいい」
🔴 学習者
「そこだけ?」
🔵 講師
「そう。病院に行って右足が痛いのに、全身を最初から治療するわけじゃないでしょう?どこに問題があるか調べて、必要なところを治すよね。勉強もそれに近いんだ」
学習者は少し笑いました。
🔴 学習者
「じゃあ俺の場合は、マイナスの計算?」
🔵 講師
「それが一つ。それから、もう少し確認したい」
講師は正負の数、文字式、簡単な方程式から数問ずつ問題を出しました。
すると、少しずつ特徴が見えてきました。
簡単な計算はできる。
しかし、マイナスが複数出てくるとミスが増える。
文字式でも符号を間違えることがある。
そのミスが方程式にもつながっていました。
🔵 講師
「だいぶ見えてきたね」
🔴 学習者
「何がですか?」
🔵 講師
「今回のテストで方程式を間違えた原因の一つ」
講師はノートに、
正負の数
↓
文字式
↓
方程式
と書きました。
🔵 講師
「勉強って、こうやってつながっているんだよ。だから上の部分だけ練習しても、下が不安定だとなかなか安定しない」
🔴 学習者
「じゃあ、今回方程式をいっぱいやったのに点が取れなかったのって……」
🔵 講師
「方程式の勉強が足りなかったというより、その前の計算が安定していなかった可能性があるね」
🔴 学習者
「そんなの、自分じゃ分からなかったです」
🔵 講師
「普通は分かりにくいよ。テストで方程式を間違えたら、『方程式をもっとやろう』って思うからね」
🔴 学習者
「俺もそう思ってました」
🔵 講師
「でも原因が別のところにあるなら、そこを直したほうが早い」
ここで学習者の表情が少し変わりました。
最初は、
「勉強しても点数が上がらない」
という話でした。
それが今は、
「直す場所がある」
という話に変わっています。
この違いは小さくありません。
「自分には能力がない」と考えてしまえば、本人にはどうすることもできません。
しかし、
「符号の計算を安定させればいい」
のであれば、やるべきことがあります。
🔴 学習者
「じゃあ、次のテストまでずっと中1の問題やるんですか?」
🔵 講師
「いや。毎日10分くらいでいいと思う」
🔴 学習者
「10分?」
🔵 講師
「最初の10分で基礎計算。その後は今の授業の勉強をする」
🔴 学習者
「それならできそう」
🔵 講師
「それともう一つ。間違えた問題には印をつけよう」
講師はワークの間違えた問題の横に小さく印をつけました。
🔵 講師
「答えを確認しただけでは、この印は消さない。何も見ずに自分で解けたら一つ消す。数日後にもう一度解けたら完全に終了」
🔴 学習者
「なんかゲームみたいですね」
🔵 講師
「そう考えてもいいね。できない問題を一個ずつ減らしていく」
🔴 学習者
「それなら、何をやればいいか分かりやすいかも」
「勉強しても無駄」から「やり方を変えてみる」へ
それからの家庭学習では、勉強時間を大幅に増やすことはしませんでした。
むしろ講師が意識したのは、
同じ時間の使い方を変えること
でした。
最初の10分は、正負の数や文字式などの基礎計算。
その後、学校で現在習っている内容を勉強します。
そしてワークでは、ページ数を進めることだけを目標にしないようにしました。
間違えた問題には印をつける。
解説を確認する。
その場でもう一度解く。
数日後、何も見ずにもう一度解く。
この流れを繰り返します。
数週間後の指導で、講師が聞きました。
🔵 講師
「最近、数学どう?」
🔴 学習者
「前よりはいいかもしれません」
🔵 講師
「何が変わった?」
🔴 学習者
「計算ミスがちょっと減りました」
🔵 講師
「自分でも分かる?」
🔴 学習者
「はい。それと、前だったら分からない問題はすぐ答え見てたんですけど、最近は一回考えるようにしてます」
🔵 講師
「いい変化だね」
🔴 学習者
「でも、まだ間違えますよ」
🔵 講師
「もちろん。それでいいんだよ」
🔴 学習者
「いいんですか?」
🔵 講師
「間違えない人になる必要はない。間違えたときに、『なんで間違えたんだろう』って考えられる人になればいい」
学習者は以前のワークを開きました。
そこには、何度も解き直した跡が残っています。
以前なら、一度答え合わせをしたページを再び開くことはほとんどありませんでした。
🔴 学習者
「先生、前に俺、勉強しても意味ないって言ったじゃないですか」
🔵 講師
「言ってたね」
🔴 学習者
「あれ、ちょっと違ったかもしれないです」
🔵 講師
「どう違った?」
🔴 学習者
「勉強しても意味ないんじゃなくて、やり方が違ってたっていうか……」
🔵 講師
「うん」
🔴 学習者
「俺、ワーク終わらせれば勉強したことになると思ってました」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「できなかった問題ができるようになったら、勉強したって感じがします」
講師はうなずきました。
それは、点数以上に大きな変化でした。
勉強を見る基準が、
「何時間やったか」
「何ページ進んだか」
から、
「何ができるようになったか」
へ変わり始めたからです。
そして何より、
「自分は勉強ができない」
と考えていた学習者が、
「やり方を変えれば、まだできるかもしれない」
と思い始めています。
家庭学習を変える第一歩は、必ずしも勉強時間を増やすことではありません。
まず、
今の勉強で何がうまくいっていないのか
を見つけることなのです。
おわりに
勉強しているのに成績が上がらないとき、本人は想像以上に苦しんでいることがあります。
「もっと勉強しなさい」
と言われても、
「もうやっている」
という気持ちかもしれません。
そこでさらに勉強時間だけを増やしても、原因が変わらなければ同じことを繰り返してしまう可能性があります。
そんなときは、一度立ち止まって家庭学習の中身を確認してみてください。
何を勉強しているのか。
問題を解いた後、何をしているのか。
間違えた問題を解き直しているか。
答えを見ただけで終わっていないか。
今の教材は本人の学力に合っているか。
以前の単元につまずきが残っていないか。
そして、
「勉強時間を増やす」よりも、「できない原因を一つ見つける」
ことから始めてみてください。
家庭でも簡単にできます。
テストや問題集で間違えた問題を一つ選び、
「どうして間違えたと思う?」
と一緒に考えてみます。
分からなければ、さらに簡単な問題まで戻ってみます。
そこで解けるなら、少し難しくする。
解けなければ、もう一段階戻る。
そうやって確認していくと、
「ここまではできる」
「ここから分からない」
という境目が見えてきます。
その境目こそが、次に勉強すべき場所です。
成績が上がらないという結果だけを見て、
「もっと頑張らなければ」
と考える必要はありません。
すでに頑張っているなら、
頑張り方を変える。
分からない場所があるなら、
分かるところまで戻る。
間違えたなら、
その間違いから次にやることを見つける。
勉強しているのに結果が出ないときは、努力を否定するのではなく、その努力が結果につながる方法へ修正していくことが大切です。
「勉強してもできない」のではありません。
まだ、自分が伸びる勉強のやり方を見つけられていないだけかもしれないのです。
理論編はこちらから
① 勉強しているのに成績が上がらないのはなぜ?(理論編)
はじめに 「毎日勉強しているのに、テストの点数が上がりません」 「本人なりに頑張っていると思うのですが、なかなか結果につながりません」 「勉強時間は増えたのに、成績がほとんど変わりません」 家庭教師の指導を考えるうえで、 […]


