はじめに

これまで多くの生徒を指導してきた経験から言えるのは、「才能がないから成績が伸びない」というケースは、ほとんど見たことがありません。

俺みたいなのに勉強はムリやって・・・。

そんなことはないよ。

そう?

今までの経験から自信をもって言える♪

はじめに

「先生、僕は勉強の才能がないんです。」

初めて指導する生徒から、この言葉を聞くことは決して珍しくありません。

学校ではいつも平均点より少し低い点数。テストが返ってくるたびに落ち込み、周りには90点や100点を取る友達がいる。そんな状況が続けば、「自分は頭が悪い」「勉強には向いていない」と考えてしまうのも無理はありません。

しかし、家庭教師として多くの生徒と向き合ってきた経験から言えることがあります。

それは、「才能がないから成績が伸びない」のではなく、「自分に合った学び方にまだ出会えていない」だけというケースが非常に多いということです。

今回紹介するのは、勉強は才能だと信じていた一人の生徒との授業です。

どうせ僕には無理です

初回の授業の日。

机の上には学校のワークと教科書が並んでいましたが、生徒はなかなか手を伸ばそうとしませんでした。

🔵 講師

「今日はよろしくお願いします。」

🔴 学習者

「よろしくお願いします……。」

少し緊張している様子でした。

自己紹介を終えると、生徒は突然こんなことを言いました。

🔴 学習者

「先生、一つだけ言っておきます。」

🔵 講師

「うん、何かな?」

🔴 学習者

「たぶん僕は頑張っても成績は上がりません。」

私は少し驚きましたが、否定はしませんでした。

🔵 講師

「そう思う理由を聞いてもいい?」

🔴 学習者

「小学校の頃からずっとです。勉強しても点数が悪いし、クラスには全然勉強していないように見えるのに、いつも90点以上取る人もいます。」

🔵 講師

「その子を見ると、どんな気持ちになる?」

🔴 学習者

「うらやましいです。でも、それ以上に『頭のいい人には勝てない』って思います。」

少し間を置いて、生徒は続けました。

🔴 学習者

「先生も、本当はそう思っていますよね?」

その質問には、不安と諦めが入り混じっていました。

🔵 講師

「私はまだ何も判断していないよ。」

🔴 学習者

「え?」

🔵 講師

「だって、まだ君が勉強しているところを見ていないからね。」

生徒は少し驚いたような顔をしました。


授業を始める前に、私は普段の生活について聞いてみることにしました。

🔵 講師

「学校から帰ったら、まず何をしている?」

🔴 学習者

「ゲームですね。」

🔵 講師

「何時間くらい?」

🔴 学習者

「二時間くらいかな……。」

🔵 講師

「宿題は?」

🔴 学習者

「夜になってから慌ててやります。」

🔵 講師

「分からない問題があったら?」

🔴 学習者

「答えを写して終わりです。」

私はうなずきながら話を聞きました。

責めるつもりはありません。

まずは現状を知ることが大切だからです。



才能より先に見るべきこと

私は数学の問題集を開きました。

🔵 講師

「今日は難しい問題じゃなくて、基本問題を解いてみよう。」

🔴 学習者

「そんな簡単なのでいいんですか?」

🔵 講師

「もちろん。」

生徒は問題を解き始めました。

しかし、計算ミスが何度も続きます。

式の立て方は合っています。

考え方も間違っていません。

それでも答えが違います。

🔵 講師

「ちょっと見てもいい?」

🔴 学習者

「はい。」

私はノートを見ながら言いました。

🔵 講師

「考え方は合っているよ。」

🔴 学習者

「え?」

🔵 講師

「ここを見て。」

符号の付け忘れ。

計算途中の写し間違い。

最後の引き算のミス。

それだけでした。

🔴 学習者

「こんなところで間違えていたんですね……。」

🔵 講師

「もしこのミスがなくなったら、何点くらい上がると思う?」

生徒はテストを思い返しながら答えました。

🔴 学習者

「20点くらいは変わるかもしれません。」

🔵 講師

「つまり、才能の問題じゃない可能性もあるよね。」

生徒は黙ってうなずきました。


私は続けて質問しました。

🔵 講師

「勉強ができる人って、どんな人だと思う?」

🔴 学習者

「頭の回転が速い人。」

🔵 講師

「それも一つだね。でも、先生は少し違う考えなんだ。」

🔴 学習者

「違うんですか?」

🔵 講師

「勉強ができる人は、自分の間違いを見つけるのが上手な人なんだ。」

🔴 学習者

「間違いを見つける……。」

🔵 講師

「今日も、考え方は合っていた。でも最後の計算ミスで点数を落としていたよね。」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「もし毎回そのミスを一つずつ減らせたら、どうなると思う?」

🔴 学習者

「点数は……上がります。」

🔵 講師

「そう。成績は才能だけじゃなく、改善を積み重ねた結果でもあるんだ。」

生徒はノートを見つめながら、小さくつぶやきました。

🔴 学習者

「僕、今まで全部『才能がないから』で終わらせていました。」

🔵 講師

「そのことに気付けたのが、今日一番の成果かもしれないね。」

生徒は少し照れたように笑いました。

その笑顔は、授業の最初に見せていた諦めた表情とは、少し違って見えました。

昨日の自分に勝つ

前回の授業から一週間。

生徒は約束どおり、毎日30分だけ机に向かうことを続けていました。

🔵 講師

「一週間やってみてどうだった?」

🔴 学習者

「正直、最初の三日くらいは面倒でした。でも30分だけって決めていたので、意外と続きました。」

🔵 講師

「それだけでも大きな進歩だね。」

🔴 学習者

「でも、まだクラスで成績がいい人には全然追いつけません。」

私は笑いながら、生徒が初日に解いたプリントと、その日に持ってきたプリントを机に並べました。

🔵 講師

「少し見比べてみようか。」

生徒は二枚のプリントを何度も見比べます。

🔴 学習者

「あれ……。」

🔵 講師

「何か気付いた?」

🔴 学習者

「計算ミスが減っています。」

🔵 講師

「最初は10問中4問正解だったね。」

🔴 学習者

「今日は8問正解です。」

🔵 講師

「つまり、一週間前の自分には勝っている。」

生徒は静かにうなずきました。

🔴 学習者

「でも、僕はずっとクラスで一番の子ばかり見ていました。」

🔵 講師

「もちろん目標を持つことは大切。でも、その子と比べ続けると、自分の成長が見えなくなってしまう。」

🔴 学習者

「昨日の自分と比べる方が、前向きになれますね。」

🔵 講師

「その積み重ねが、本当の意味で成績を伸ばす力になるんだ。」

その日から、生徒は勉強日記をつけるようになりました。

「今日は計算ミスが一つ減った。」

「英単語を20個覚えられた。」

「昨日より5分早く宿題が終わった。」

点数だけではなく、小さな成長を書き留めることで、自分の努力を目で見て確認できるようになっていきました。



才能ではなく、積み重ねだった

それから一か月後。

学校の定期テストが返却されました。

授業の日、生徒は玄関を開けるなり、少し興奮した様子で声をかけてきました。

🔴 学習者

「先生!見てください!」

そう言って差し出したテストには、これまでより20点以上高い点数が書かれていました。

🔵 講師

「これはすごいね。本当によく頑張った。」

🔴 学習者

「最初は信じられませんでした。」

🔵 講師

「何が一番変わったと思う?」

生徒は少し考えてから答えました。

🔴 学習者

「勉強時間が急に増えたわけじゃないんです。」

🔵 講師

「うん。」

🔴 学習者

「でも、分からない問題をそのままにしなくなりました。」

🔵 講師

「それは大きいね。」

🔴 学習者

「あと、計算ミスを見直すようになりました。」

🔵 講師

「初日に話していたことを覚えている?」

🔴 学習者

「はい。『才能じゃなくて、改善できるところを見つけよう』って言われました。」

私は笑顔でうなずきました。

🔵 講師

「その積み重ねが、今日の結果につながったんだ。」

生徒は少し照れながら笑いました。

🔴 学習者

「先生、前は頭がいい人だけが成績が伸びると思っていました。」

🔵 講師

「今は?」

🔴 学習者

「もちろん才能の差は少しあるかもしれません。でも、それだけじゃないって分かりました。」

🔵 講師

「そう思えた理由は?」

🔴 学習者

「だって、自分が変われたからです。」

その言葉には、以前のような諦めはありませんでした。

自分の努力で結果を変えられたという、自信に満ちた表情でした。

帰り際、生徒はこんなことを話してくれました。

🔴 学習者

「先生、今度はもっと上を目指してみたいです。」

🔵 講師

「いいね。でも、忘れないでほしいことがある。」

🔴 学習者

「何ですか?」

🔵 講師

「比べる相手は、これからも昨日の自分だよ。」

🔴 学習者

「はい。そこだけは忘れません。」

そう言って笑顔で送り出した姿を見ながら、私は改めて感じました。

子どもたちの可能性は、「才能」という一言では決まりません。

正しい学び方と、少しずつ積み重ねる習慣、そして「できるかもしれない」と信じられる環境があれば、子どもは自分でも驚くほど成長していくのです。



「成績は才能で決まる。」

そう思ってしまうと、挑戦する前から自分の限界を決めてしまいます。

しかし、家庭教師として多くの生徒を見てきた経験では、成績を大きく伸ばした子どもたちに共通していたのは、特別な才能ではありませんでした。

自分の弱点を知り、一つずつ改善し、小さな成功体験を積み重ねること。

その積み重ねが、「自分にもできる」という自信を育て、やがて成績という目に見える結果につながっていきます。

家庭教師の役割は、その子の才能を評価することではなく、まだ気付いていない可能性を引き出し、「努力すれば成長できる」という実感を持てるよう支えることです。

その実感こそが、この先の学習だけでなく、人生のさまざまな挑戦を支える大きな力になっていくので


理論編はこちらから

②成績は才能で決まるのか(理論編)

はじめに 「あの子は頭がいいから成績がいい。」 「うちの子は勉強の才能がないんです。」 家庭教師をしていると、このような言葉を保護者の方や生徒本人から聞くことがあります。 確かに、生まれ持った得意・不得意は誰にでもありま […]

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