はじめに
勉強時間を増やしたのに成績が・・・。何か理由がありそうです。
毎日2時間も勉強してるのに・・・。
成績が上がらん・・・。
そう。やる気もなくなってくる。
ま、そうなるよね。何か理由があるんだろうね。探してみよう。
- 0.1. 事例プロフィール
- 1. はじめに
- 2. 「これ以上、勉強時間を増やさないといけませんか?」
- 3. 2時間の中で、何ができるようになっているのか
- 3.1. 勉強時間を細かく分けてみる
- 3.2. 問題集を進めることが目標になっていた
- 4. 同じ2時間でも、勉強の中身を変えてみる
- 4.1. 120分の使い方を組み直す
- 4.2. Sさんの家庭学習・改善プラン
- 4.3. 「答えを見て分かった」を「自力で解けた」に変える
- 4.4. 勉強時間ではなく、学習の成果を記録する
- 5. 努力の量ではなく、努力の方向を変える
- 5.1. 一週間後の変化
- 5.2. 勉強時間を増やさなくても、前へ進める
- 6. おわりに
- 6.1.1. 理論編はこちらから
事例プロフィール
- 対象: 中学2年生・Sさん
- 地域: 福井県内
- 性格: 真面目で責任感が強い。決めたことは最後までやろうとするが、結果が出ないと自分を責めやすい
- 当初の課題: 毎日2時間以上勉強しているのに、定期テストの点数がほとんど変わらない
- 支援テーマ: 学習時間の内訳を確認し、努力を成果につなげる勉強方法へ改善する
はじめに

「毎日こんなに勉強しているのに、どうして成績が上がらないんだろう」
そう感じた経験のある子どもは、決して少なくありません。
学校から帰宅して、宿題を終わらせる。
夕食の後も机に向かい、問題集を進める。
テスト前には、いつもより長い時間勉強する。
それでも、テストの点数が思うように上がらなければ、努力すること自体がつらくなってしまうことがあります。
保護者も、子どもが毎日勉強している姿を見ているからこそ、結果が出ないことに悩むかもしれません。
しかし、勉強時間が長いことと、学習内容が身についていることは、必ずしも同じではありません。
例えば、2時間の大部分をノートの整理に使っていた場合、知識を使って問題を解く時間が不足していることがあります。
また、問題集を何ページも進めていても、間違えた問題を解き直していなければ、苦手な部分が残ってしまうことがあります。
今回の物語では、毎日2時間以上勉強している中学生を取り上げます。
家庭教師は、努力が足りないと決めつけるのではなく、勉強時間の使い方を一緒に確認していきます。
そして、勉強時間をさらに増やす前に、今ある時間の中で何を変えられるのかを考えていきます。
「これ以上、勉強時間を増やさないといけませんか?」
その日の指導で、Sさんは定期テストの答案を机に並べました。
数学は56点。
英語は59点。
前回と比べても、大きな変化はありませんでした。
🔵 講師
「今回のテスト、どうだった?」
🔴 学習者
「全然だめでした」
🔵 講師
「思っていたより取れなかった?」
🔴 学習者
「はい。今回はかなり勉強したんです」
🔵 講師
「どのくらい?」
🔴 学習者
「普段から2時間くらいです。テスト前は3時間以上やった日もあります」
講師は少し驚きました。
🔵 講師
「それだけ続けていたんだね」
🔴 学習者
「でも、点数が変わらないんです」
Sさんは答案を見つめました。
🔴 学習者
「先生、私、もっと勉強しないとだめですか?」
🔵 講師
「今の段階では、そうとは限らないよ」
🔴 学習者
「でも、勉強時間を増やしても上がらないんですよ?」
🔵 講師
「だからこそ、時間を増やす前に確認したいことがあるんだ」
🔴 学習者
「何ですか?」
🔵 講師
「その2時間で、何をしているのかを一緒に見てみよう」
Sさんは少し不思議そうな顔をしました。
🔴 学習者
「勉強してますけど……」
🔵 講師
「もちろん、それは分かっているよ。ただ、勉強にもいろいろな方法があるでしょう?」
🔴 学習者
「はい」
🔵 講師
「教科書を読むことも、ノートをまとめることも、問題を解くことも勉強だよね」
🔴 学習者
「そうですね」
🔵 講師
「でも、それぞれの勉強で身につくことは少し違うんだ」
Sさんは、机の横から一冊のノートを取り出しました。
🔴 学習者
「私、ちゃんとまとめてるんです」
ノートには、色分けされた見出しや、丁寧に書かれた説明が並んでいました。
🔵 講師
「きれいに整理してあるね」
🔴 学習者
「教科書を見ながら、大事なところを書いてます」
🔵 講師
「これを作るのに、どのくらい時間がかかる?」
🔴 学習者
「一日40分くらいです」
🔵 講師
「なるほど。じゃあ、問題を解く時間は?」
🔴 学習者
「残った時間でやってます」
🔵 講師
「間違えた問題はどうしている?」
🔴 学習者
「答えを見て、赤ペンで直してます」
🔵 講師
「その後、もう一度自分で解いてみる?」
🔴 学習者
「……そこまではしてません」
講師はうなずきました。
🔵 講師
「じゃあ、少し勉強時間の内訳を整理してみようか」
2時間の中で、何ができるようになっているのか
勉強時間を細かく分けてみる
講師は、Sさんの普段の学習について詳しく聞きました。
🔵 講師
「学校から帰って、最初に何をする?」
🔴 学習者
「宿題です」
🔵 講師
「どのくらいかかる?」
🔴 学習者
「30分くらいです」
🔵 講師
「その後は?」
🔴 学習者
「ノートをまとめます。だいたい40分です」
🔵 講師
「残りは?」
🔴 学習者
「問題集を40分くらいやって、最後に答え合わせをします」
講師はノートに書き出しました。
| 学習内容 | 時間 |
|---|---|
| 学校の宿題 | 30分 |
| ノートまとめ | 40分 |
| 問題集 | 40分 |
| 答え合わせ | 10分 |
| 合計 | 120分 |
🔵 講師
「こうして見ると、毎日しっかり時間を使っているね」
🔴 学習者
「はい。でも、足りないんでしょうか」
🔵 講師
「時間が足りないというより、今の学習で何ができるようになっているかを確認してみたいんだ」
🔴 学習者
「どうやってですか?」
🔵 講師
「例えば、昨日まとめた英語の文法を、ノートを見ずに使えるかな?」
Sさんは、前日にまとめたページを開きました。
現在完了形について、丁寧に説明が書かれています。
🔵 講師
「この内容を使って、英文を作ってみよう」
講師は日本語の文を一つ書きました。
「私は3年間ずっと福井に住んでいます。」
🔵 講師
「英語にできる?」
Sさんは鉛筆を持ちました。
しばらく考えた後、次のように書きました。
I live in Fukui for three years.
🔵 講師
「意味は伝わる形に近づいているね。ただ、今回の文では現在完了形を使いたいんだ」
🔴 学習者
「あ、そうか。have を使うんでした」
🔵 講師
「そう。じゃあ、どうなる?」
🔴 学習者
「I have lived in Fukui for three years.」
🔵 講師
「正解」
Sさんは少し困った表情になりました。
🔴 学習者
「昨日、これをノートにまとめたばかりなのに……」
🔵 講師
「説明を読むと分かる?」
🔴 学習者
「はい」
🔵 講師
「でも、自分で英文を作るときには、すぐに使えなかったね」
🔴 学習者
「そうですね」
🔵 講師
「ノートをまとめたことが無駄だったわけじゃないよ。ただ、まとめた後に使う練習が必要だったのかもしれないね」
Sさんは、きれいに書かれたノートを見つめました。
🔴 学習者
「私、ノートが完成すると、勉強した気になってました」
🔵 講師
「それも自然なことだよ。目に見える形で完成するからね」
🔴 学習者
「でも、テストではノートを見られませんもんね」
🔵 講師
「そう。だから、ノートを閉じて確認する時間も必要なんだ」
問題集を進めることが目標になっていた
次に、講師は数学の問題集を確認しました。
Sさんのワークには、解いた日付が丁寧に記入されていました。
🔵 講師
「数学も、かなり進めているね」
🔴 学習者
「毎日2ページずつやるって決めてるんです」
🔵 講師
「いい習慣だね。間違えた問題も確認してみようか」
講師は、赤ペンで答えが書き直された問題を指しました。
🔵 講師
「この問題、今もう一度解けるかな?」
🔴 学習者
「前にやった問題ですよね?」
🔵 講師
「そうだよ。答えを隠してやってみよう」
Sさんは問題を解き始めました。
しかし、途中で手が止まりました。
🔴 学習者
「……分からないです」
🔵 講師
「前に間違えたときは、どうした?」
🔴 学習者
「解説を見て、答えを書き直しました」
🔵 講師
「その後は?」
🔴 学習者
「次の問題に進みました」
🔵 講師
「じゃあ、その問題を自分で解けるかは、まだ確認していなかったんだね」
🔴 学習者
「そういうことになりますね」
Sさんは、問題集のページをめくりました。
どのページにも、赤ペンで訂正した問題がいくつもありました。
🔴 学習者
「先生、これって、赤ペンで直しただけじゃ、できるようになったとは言えないんですか?」
🔵 講師
「答えを確認することは大事だよ。でも、それだけで自力で解けるようになったかどうかは分からないね」
🔴 学習者
「じゃあ、私、できない問題をそのままにしてたのかもしれません」
🔵 講師
「そうかもしれないね。だから、今度は解き直しの時間を作ってみよう」
🔴 学習者
「でも、そうすると問題集が進まなくなりませんか?」
🔵 講師
「一日に進めるページ数は少なくなるかもしれないね」
🔴 学習者
「それでもいいんですか?」
🔵 講師
「大切なのは、何ページ進めたかだけじゃなくて、どれだけ自分で解けるようになったかだからね」
Sさんはしばらく黙っていました。
そして、少し考えてから言いました。
🔴 学習者
「私、毎日2時間やることと、ワークを2ページ進めることばっかり考えてました」
🔵 講師
「それも努力を続けるための目標にはなるよ」
🔴 学習者
「でも、できるようになったかは、あんまり確認してませんでした」
🔵 講師
「そこを変えてみようか」
🔴 学習者
「勉強時間を増やさなくても、変えられますか?」
🔵 講師
「まずは今の2時間の使い方を変えてみよう。その結果を見て、必要なら調整すればいいよ」
Sさんは、学習時間の内訳を書いたノートをもう一度見ました。
今まで、毎日2時間勉強していることが、自分の努力の証だと思っていました。
それは間違いではありません。
しかし、その時間の中で、何を身につけるかまでは十分に考えていなかったのです。
🔴 学習者
「先生、じゃあ、明日から何を変えればいいですか?」
🔵 講師
「まずは、今の120分の中に、覚えたことを自分で思い出す時間と、間違えた問題を解き直す時間を作ろう」
Sさんは新しいページを開き、講師と一緒に学習時間の組み直しを始めました。
同じ2時間でも、勉強の中身を変えてみる
120分の使い方を組み直す
講師は、Sさんのノートに書かれた学習時間の内訳を見ながら尋ねました。
🔵 講師
「今までの勉強で、続けたほうがいいと思うことは何かな?」
🔴 学習者
「宿題は、ちゃんとやらないといけないと思います」
🔵 講師
「そうだね。ほかには?」
🔴 学習者
「問題集も続けたいです。ノートまとめも、全部やめるのは嫌です」
🔵 講師
「もちろん、全部やめる必要はないよ」
🔴 学習者
「そうなんですか?」
🔵 講師
「ノートをまとめることで理解しやすくなることもあるからね。ただ、今はまとめる時間が少し長いのかもしれない」
講師は、これまでの120分を振り返りました。
宿題に30分。
ノートまとめに40分。
問題集に40分。
答え合わせに10分。
毎日きちんと勉強しているものの、間違えた問題を自力で解き直す時間はありませんでした。
🔵 講師
「じゃあ、こんなふうに変えてみるのはどうかな?」
講師は、新しい学習計画を書きました。
Sさんの家庭学習・改善プラン
| 学習内容 | 時間 | 目的 |
|---|---|---|
| 学校の宿題 | 30分 | 授業内容の確認と提出物への対応 |
| 前日の復習 | 15分 | 覚えた内容を自力で思い出す |
| 新しい内容の理解・ノート整理 | 15分 | 必要な知識を整理する |
| 問題演習 | 40分 | 学んだ内容を使う練習 |
| 間違えた問題の解き直し | 20分 | 苦手な部分を確認・改善する |
| 合計 | 120分 |
🔴 学習者
「ノートまとめが40分から15分になるんですね」
🔵 講師
「そうだね。全部を書き写すのではなく、覚えておきたいことや、間違えやすいところを中心にまとめよう」
🔴 学習者
「でも、15分で終わるかな……」
🔵 講師
「最初は難しいかもしれないね。時間内に終わらなかったら、無理にきれいに仕上げなくてもいいんだよ」
🔴 学習者
「途中でもいいんですか?」
🔵 講師
「必要な内容が整理できていればいいんだ。ノートを完成させることが最終目標じゃないからね」
Sさんは、少し考えました。
🔴 学習者
「私、見出しの色とか、線の引き方とか、結構こだわってました」
🔵 講師
「それ自体が悪いわけじゃないよ。ただ、今は問題を解く時間も大事にしたいね」
🔴 学習者
「分かりました。ちょっと変えてみます」
「答えを見て分かった」を「自力で解けた」に変える
次に、講師は数学の問題集を開きました。
前編でSさんが解けなかった問題です。
3(x-2)=2x+5
🔵 講師
「この問題、もう一度確認してみよう」
🔴 学習者
「さっきは途中で分からなくなりました」
🔵 講師
「どこまでできそう?」
Sさんは、まず左側のかっこを外しました。
3x-6=2x+5
🔴 学習者
「ここまでは分かります」
🔵 講師
「うん。次は?」
🔴 学習者
「2xを左に移して……5を右に……」
Sさんは少し迷いながら、次の式を書きました。
3x-2x=5+6
x=11
🔴 学習者
「あ、できました」
🔵 講師
「正解。じゃあ、今度は答えを元の式に代入して確認してみよう」
Sさんは計算しました。
左辺は、
3(11-2)=27
右辺は、
2x11+5=27
🔴 学習者
「両方27になりました」
🔵 講師
「そうだね。今度は自分で確認までできたね」
🔴 学習者
「前にやったときは、解説を読んで終わりにしてました」
🔵 講師
「じゃあ、今回はどうだった?」
🔴 学習者
「自分で解けました」
🔵 講師
「そこが大きな違いだね」
講師は、数字を変えた似た問題を出しました。
4(x-1)=3x+7
🔵 講師
「これも同じように解けるかな?」
Sさんは、今度は迷わず計算を始めました。
4x-4=3x+7
4x-3x=7+4
x=11
🔴 学習者
「できました」
🔵 講師
「正解。今度は解説を見ずにできたね」
🔴 学習者
「何か、いつもより勉強した感じがします」
🔵 講師
「今までより長い時間やったわけじゃないけどね」
🔴 学習者
「はい。でも、ちゃんとできるようになった気がします」
🔵 講師
「じゃあ、その感覚を大事にしよう。ただし、今日できた問題を数日後にも解けるか、また確認しようね」
Sさんはうなずきました。
勉強時間ではなく、学習の成果を記録する
講師は、もう一つ提案しました。
🔵 講師
「これからは、勉強時間の記録に一つだけ付け加えてみよう」
🔴 学習者
「何を書くんですか?」
🔵 講師
「今日できるようになったことだよ」
🔴 学習者
「できるようになったこと……」
🔵 講師
「例えば、今日だったら何が書けるかな?」
Sさんは少し考えました。
🔴 学習者
「一次方程式を自分で解けたことです」
🔵 講師
「そうだね。もう少し具体的にすると?」
🔴 学習者
「かっこのある一次方程式を、解説を見ずに解けた」
🔵 講師
「いいね」
講師は、記録の例を書きました。
| 日付 | 学習時間 | 今日できるようになったこと | 次に確認すること |
|---|---|---|---|
| 月曜日 | 120分 | かっこのある一次方程式を自力で解けた | 数日後にもう一度解く |
| 火曜日 | 120分 | 現在完了形の英文を自分で作れた | 別の主語でも作れるか |
| 水曜日 | 120分 | 数学の間違いを自分で修正できた | 類題でも正解できるか |
🔴 学習者
「これなら、勉強した内容が分かりますね」
🔵 講師
「そうだね。時間だけだと、何が身についたのか分かりにくいからね」
🔴 学習者
「今までは、2時間できたら丸をつけてました」
🔵 講師
「それも継続の記録としてはいいよ。これからは、何ができるようになったかも残してみよう」
Sさんは、新しい学習記録のページを作り始めました。
努力の量ではなく、努力の方向を変える
一週間後の変化
次の指導日。
Sさんは、いつものノートと問題集に加えて、新しい学習記録を持ってきました。
🔴 学習者
「先生、先週の方法でやってみました」
🔵 講師
「どうだった?」
🔴 学習者
「最初は、ノートまとめを15分で終わらせるのが難しかったです」
🔵 講師
「そうだろうね。今まで40分使っていたからね」
🔴 学習者
「でも、大事なところだけ書くようにしたら、少しずつ短くできました」
🔵 講師
「いい工夫だね。問題の解き直しはどうだった?」
🔴 学習者
「思っていたより、解けない問題が多かったです」
Sさんは、間違えた問題に印をつけたページを開きました。
🔴 学習者
「答えを見たときは分かったつもりだったんですけど、次の日にやると、また間違えることがありました」
🔵 講師
「それに気づけたのは大事だね」
🔴 学習者
「でも、何回かやったら解けるようになった問題もあります」
🔵 講師
「じゃあ、今日はその中から一問、確認してみようか」
講師は、Sさんが三日前に間違えた数学の問題を選びました。
Sさんは途中式を書きながら、最後まで解きました。
答えも正解でした。
🔵 講師
「三日前に間違えた問題だけど、今日は自分で解けたね」
🔴 学習者
「はい。前より落ち着いて解けました」
🔵 講師
「どうしてだと思う?」
🔴 学習者
「間違えたところを確認して、もう一回やったからだと思います」
講師はうなずきました。
🔵 講師
「そうだね。もちろん、まだ全部の問題ができるようになったわけじゃないけど、学習の進め方は変わってきたね」
🔴 学習者
「はい」
勉強時間を増やさなくても、前へ進める
Sさんは、学習記録を見ながら言いました。
🔴 学習者
「先生、今週も勉強時間はほとんど変わってないんです」
🔵 講師
「うん」
🔴 学習者
「でも、前より勉強した内容を覚えている気がします」
🔵 講師
「それはいい変化だね。実際に解き直せた問題もあったしね」
🔴 学習者
「前は、2時間勉強したら、それで安心してました」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「今日は何ができるようになったかな、って考えるようになりました」
🔵 講師
「それが大切なんだよ」
Sさんは、最初の指導で話したことを思い出しました。
🔴 学習者
「先生、最初に『もっと勉強時間を増やさないといけませんか』って聞きましたよね」
🔵 講師
「そうだったね」
🔴 学習者
「今は、時間を増やす前に、やり方を確認したほうがいいんだって分かりました」
🔵 講師
「そうだね。ただ、これから必要な学習が増えたら、時間を調整することもあるよ」
🔴 学習者
「はい。でも、ただ長くやればいいわけじゃないんですね」
🔵 講師
「そのとおり」
Sさんは、ノートに一つの言葉を書きました。
『何時間やったかより、何ができるようになったか』
そして、少し笑いました。
🔴 学習者
「これ、忘れないように書いておきます」
🔵 講師
「いいね。でも、時間も大切だからね。無理なく続けられることと、内容が身についていること。その両方を考えていこう」
🔴 学習者
「分かりました」
次の定期テストで、必ず点数が大きく上がるとは限りません。
学習方法を変えた効果が、点数に表れるまでには時間がかかることもあります。
それでも、Sさんには以前と違う変化が生まれていました。
間違えた問題をそのままにしなくなったこと。
ノートを完成させるだけで満足しなくなったこと。
そして、勉強時間の長さだけでなく、自分ができるようになったことを確認するようになったことです。
努力をやめたのではありません。
努力の方向を、少し変えたのです。
おわりに
毎日長時間勉強しているのに成績が上がらないとき、子どもは自信を失いやすくなります。
「これだけ頑張ってもだめなんだ」
「自分には勉強の才能がないのかもしれない」
そう考えてしまうこともあります。
しかし、勉強時間を増やしても成果が出ないからといって、努力が無意味だったわけではありません。
勉強を続けてきたこと自体は、大切な経験です。
必要なのは、その努力を成果につなげる方法を考えることです。
今回のSさんは、毎日2時間以上勉強していました。
しかし、その時間の多くをノートの整理や問題集を進めることに使い、間違えた問題を解き直す時間が不足していました。
そこで、勉強時間を増やすのではなく、時間の使い方を変えました。
ノートまとめを必要な範囲に絞る。
覚えた内容を、何も見ずに思い出す。
問題集で間違えた問題を、自力で解き直す。
そして、何ができるようになったのかを記録する。
こうした方法を取り入れることで、同じ勉強時間でも、学習の成果を確認しやすくなりました。
家庭学習を見直すときには、次の四つを意識してみてください。
一つ目は、勉強時間の内訳を確認すること。
何にどれだけ時間を使っているのかを整理します。
二つ目は、問題を自力で解く時間を確保すること。
教科書やノートを読むだけでなく、覚えた内容を使う練習を取り入れます。
三つ目は、間違えた問題を解き直すこと。
答えを確認しただけで終わらせず、解説を閉じてもう一度解いてみます。
四つ目は、できるようになったことを記録すること。
勉強時間だけでなく、学習内容の変化を確認します。
ただし、勉強時間を短くすればよいという意味ではありません。
必要な学習量を確保することも大切です。
また、睡眠や休息を削ってまで長時間勉強することが、必ずしもよい結果につながるわけではありません。
子どもの生活や学習状況に合わせて、無理なく続けられる方法を考える必要があります。
家庭教師の役割は、単に勉強時間を増やすように指示することではありません。
子どもがどのように勉強しているのかを確認し、改善できる部分を一緒に見つけることです。
そして、努力してきたことを認めながら、その努力を成果につなげる方法を考えていきます。
勉強時間を増やす前に、今の時間で何をしているのかを見直す。
勉強した時間だけでなく、できるようになったことを大切にする。
この二つの考え方が、家庭学習を改善するための重要な出発点になります。
長く勉強したという満足感だけで終わらず、昨日できなかった問題を、今日自分の力で解けるようにする。
その小さな積み重ねが、成績を伸ばすための確かな土台になっていくのです。
理論編はこちらから
⑦勉強時間を増やしても成績が上がらない理由(理論編)
はじめに 「毎日2時間も勉強しているのに、成績が上がらない」 「以前より勉強時間を増やしたのに、テストの点数が変わらない」 「こんなに頑張っているのに、どうして結果が出ないのだろう」 勉強に真面目に取り組んでいる子どもほ […]
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