はじめに
分からないところが分からない・・・。そうなっている人って多いです。
分からんところが分からん。
素直でいいですな。
いいの?
ま、それをどうにかしていくのが第一歩ってことで♪
事例プロフィール
- 対象: 中学3年生・Mさん
- 地域: 福井県内
- 性格: 真面目で慎重。間違えることを気にしやすく、分からない問題があると手が止まってしまう
- 当初の課題: 英語の長文がほとんど読めず、本人もどこから分からなくなったのか説明できない
- 支援テーマ: 英語の理解度を段階的に確認し、つまずきの原因を具体的にする
はじめに

「英語が全然分かりません」
そう話す子どもに、
「どこが分からないの?」
と質問すると、
「それが分からないんです」
という答えが返ってくることがあります。
勉強が苦手な子どもにとって、自分のつまずきを説明することは簡単ではありません。
最初は一つの単元が理解できなかっただけでも、その後の授業が進むにつれて、分からない内容が増えていくことがあります。
すると、いつの間にか「英語は全部苦手」「何を勉強しても無駄」という気持ちになってしまうことがあります。
しかし、実際に学習状況を確認すると、すべてが理解できていないわけではないこともあります。
単語はある程度覚えている。
短い英文なら意味が分かる。
けれども、主語と動詞の関係が曖昧だったり、文法の基本的なルールが身についていなかったりする。
こうした小さなつまずきが重なって、英語全体を難しく感じている場合があるのです。
今回の物語では、英語の長文読解が苦手な中学3年生を取り上げます。
家庭教師は、いきなり長文問題の解き方を教えるのではなく、短い英文を使いながら、どこまで理解できているのかを確認していきます。
大切なのは、できない問題を探すことではありません。
どこまで自分でできて、どこから支援が必要なのかを明らかにすることです。
「英語は、どこから分からないのかも分かりません」
その日の指導で、Mさんは英語の問題集を机の上に置きました。
長文読解のページには、赤いバツ印がいくつも並んでいます。
🔵 講師
「今日は英語を見ていこうか。最近、どんなところが難しい?」
🔴 学習者
「長文です。何が書いてあるのか、全然分かりません」
🔵 講師
「単語が分からない感じ?」
🔴 学習者
「それもあると思います。でも、知ってる単語があっても意味が分からないんです」
🔵 講師
「なるほど。じゃあ、どこから分からなくなったと思う?」
Mさんは少し考えました。
🔴 学習者
「……分かりません」
🔵 講師
「覚えていない?」
🔴 学習者
「はい。中1のときは、もう少しできた気がするんですけど」
🔵 講師
「中2になってから難しくなった?」
🔴 学習者
「たぶん。でも、今は中1の内容も怪しいと思います」
Mさんは申し訳なさそうに笑いました。
🔴 学習者
「先生、私、英語を最初から全部やり直したほうがいいんでしょうか?」
🔵 講師
「まだ、そう決めなくていいよ」
🔴 学習者
「でも、どこが分からないのかも分からないんですよ?」
🔵 講師
「だからこそ、まずは一緒に調べてみよう」
🔴 学習者
「調べるんですか?」
🔵 講師
「うん。どこまでできるのかを確認するんだ」
講師は長文問題集をいったん閉じました。
そして、ノートに短い英文を書きました。
I play tennis.
🔵 講師
「これはどう?」
🔴 学習者
「私はテニスをします」
🔵 講師
「正解。じゃあ、これは?」
She plays tennis.
🔴 学習者
「彼女はテニスをします」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、どうして play に s がついているの?」
🔴 学習者
「三単現……ですよね?」
🔵 講師
「そう。どんなときにつけるか説明できる?」
Mさんは少し考えました。
🔴 学習者
「主語が he とか she のとき……」
🔵 講師
「そういう場合があるね。じゃあ、主語が My brother だったら?」
🔴 学習者
「えっと……つけるんでしたっけ?」
🔵 講師
「現在形の普通の文で、主語が一人の兄弟なら、基本的にはつけるね」
🔴 学習者
「ああ、そうでした」
講師はさらに英文を書きました。
My brother plays soccer.
🔵 講師
「これは読める?」
🔴 学習者
「私の兄はサッカーをします」
🔵 講師
「うん。意味は取れているね」
Mさんは少し安心したようでした。
🔴 学習者
「こういう短い文なら分かります」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、英語が全部分からないわけではないね」
🔴 学習者
「でも、長文になると本当に読めなくなるんです」
🔵 講師
「そこをもう少し詳しく調べよう」
短い英文から、つまずきの場所を探す
単語は分かるのに、文の意味が分からない
講師は、次の英文を書きました。
I know the boy who is playing soccer.
🔵 講師
「この英文、分かる単語はある?」
🔴 学習者
「I は私、know は知っている、boy は男の子……」
🔵 講師
「うん。他は?」
🔴 学習者
「playing soccer はサッカーをしている、ですよね」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、文全体ではどんな意味になる?」
Mさんは英文を見つめました。
🔴 学習者
「私は……男の子を知っている……サッカーをしている?」
🔵 講師
「大体の意味はつかめているね」
🔴 学習者
「でも、日本語にすると変になります」
🔵 講師
「じゃあ、どこが難しいと思う?」
🔴 学習者
「who が分からないです」
🔵 講師
「そこに気づいたね。これは関係代名詞の who だよ」
🔴 学習者
「あ、習いました。でも、よく分からないままでした」
講師は英文を二つに分けました。
I know the boy.
The boy is playing soccer.
🔵 講師
「この二つなら意味は分かる?」
🔴 学習者
「はい。私はその男の子を知っています。その男の子はサッカーをしています」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、この二つの文に出てくる男の子は、同じ人だよね」
🔴 学習者
「はい」
🔵 講師
「その二つの内容を一つにまとめると、さっきの英文になるんだ」
Mさんは、もう一度最初の英文を読みました。
🔴 学習者
「私は、サッカーをしている男の子を知っています……ですか?」
🔵 講師
「正解」
🔴 学習者
「ああ、そういうことなんですね」
🔵 講師
「今の英文、単語が全部分からなかったわけじゃないよね」
🔴 学習者
「はい。単語は結構分かってました」
🔵 講師
「じゃあ、何が難しかった?」
🔴 学習者
「文のつながり方です」
🔵 講師
「そうだね。これは一つの手がかりになりそうだね」
Mさんは、ノートに「文のつながり方」と書きました。
今まで、長文が読めない理由は単語を覚えていないからだと思っていました。
しかし、それだけではないことに気づき始めていました。
本当に関係代名詞だけが原因なのか
講師は、すぐに関係代名詞の練習へ進むことはしませんでした。
🔵 講師
「今の文では関係代名詞が難しかったね。でも、ほかにも確認しておきたいことがあるんだ」
🔴 学習者
「何ですか?」
🔵 講師
「文の基本的な形が、どのくらい分かっているかだよ」
講師はノートに英文を書きました。
My sister likes music.
🔵 講師
「この文の主語はどれ?」
🔴 学習者
「My sister です」
🔵 講師
「動詞は?」
🔴 学習者
「likes です」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、これは?」
My sister is listening to music.
Mさんは少し考えました。
🔴 学習者
「主語は My sister です」
🔵 講師
「うん。動詞は?」
🔴 学習者
「listening……ですか?」
🔵 講師
「そこは少し確認しよう。現在進行形は、どんな形で作るんだった?」
🔴 学習者
「be動詞と ing です」
🔵 講師
「そうだね。この文では is listening が動詞の部分になるね」
🔴 学習者
「あ、そうか。is も必要なんですね」
🔵 講師
「うん。じゃあ、この英文を日本語にしてみよう」
🔴 学習者
「私の姉は音楽を聴いています」
🔵 講師
「正解。意味は理解できているね」
講師は、次の英文を書きました。
My sister was listening to music when I came home.
🔵 講師
「今度はどう?」
Mさんは英文を読みました。
🔴 学習者
「私の姉は音楽を聴いていました……」
🔵 講師
「うん。続きは?」
🔴 学習者
「when が……いつ、ですよね?」
🔵 講師
「『いつ』という意味もあるね。この文では、後ろの内容と前の内容をつないでいるんだ」
🔴 学習者
「私が家に帰ったとき、ですか?」
🔵 講師
「そう。じゃあ、文全体では?」
🔴 学習者
「私が家に帰ったとき、姉は音楽を聴いていました」
🔵 講師
「正解」
Mさんは少し驚いた表情になりました。
🔴 学習者
「先生、これも説明してもらうと分かります」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、何もヒントがなかったらどうだった?」
🔴 学習者
「when のところで止まってたと思います」
🔵 講師
「つまり、短い文は読めるけれど、文が長くなってつながると難しくなることがあるんだね」
🔴 学習者
「はい。たぶん、そこです」
🔵 講師
「ただ、今の段階ではまだ決めつけないでおこう。似た文をいくつか確認してみたいから」
Mさんはうなずきました。
講師はノートに、ここまで確認できたことを書き出しました。
自力でできたこと
- 基本的な単語の意味を答える
- 短い英文の意味を理解する
- 簡単な英文の主語を見つける
ヒントが必要だったこと
- 関係代名詞を含む文の意味を整理する
- 現在進行形の動詞の部分を正確に捉える
- 接続詞でつながった文を読み取る
🔴 学習者
「先生、私、思っていたよりできるところもあるんですね」
🔵 講師
「そうだね。短い文はかなり読めているよ」
🔴 学習者
「でも、つながると分からなくなる……」
🔵 講師
「今のところは、そこが一つの課題として見えてきたね」
🔴 学習者
「じゃあ、英語を全部最初からやり直さなくてもいいんですか?」
🔵 講師
「全部やり直す必要があるかどうかは、まだ分からない。でも、少なくとも今できている部分まで、全部同じように勉強し直す必要はなさそうだね」
Mさんは、少し安心したように笑いました。
🔴 学習者
「何か、ちょっと気が楽になりました」
🔵 講師
「それはよかった。じゃあ、次は実際の長文で、どこまで自分で読めるか確かめてみよう」
🔴 学習者
「長文ですか……」
🔵 講師
「大丈夫。全部読めなくてもいいんだよ。どこで止まるのかを一緒に確認するだけだから」
Mさんは問題集を開きました。
以前は、長文を見るだけで「無理だ」と思っていました。
しかし今は、少し違います。
自分が読める部分もある。
分からないところには、何か理由がある。
その理由を一つずつ探していけばいい。
そう考えながら、Mさんは最初の英文に目を向けました。
長文を一緒に読みながら、本当のつまずきを見つける
「全部分からない」を一文ずつ確認する
講師は、Mさんの問題集にある長文を確認しました。
そして、今の理解度に合わせて、短い文章から取り組むことにしました。
ノートに次の英文を書きます。
I have a friend who lives in Fukui.
She likes reading books.
When she has free time, she often goes to the library.
🔵 講師
「まず、この三つの文を読んでみよう」
🔴 学習者
「長文じゃないですね」
🔵 講師
「そうだね。いきなり長い文章を読むより、まずは文のつながりを確認してみよう」
Mさんは一文目を読み始めました。
🔴 学習者
「私は友達がいます……福井に住んでいる?」
🔵 講師
「うん。意味はかなりつかめているね」
🔴 学習者
「でも、who があると、どこから訳せばいいか迷います」
🔵 講師
「じゃあ、who lives in Fukui は、何を説明していると思う?」
Mさんは英文を見直しました。
🔴 学習者
「friend ですか?」
🔵 講師
「そう。福井に住んでいる友達、ということだね」
🔴 学習者
「私は福井に住んでいる友達がいます」
🔵 講師
「正解」
続いて、二文目を確認しました。
She likes reading books.
🔵 講師
「これはどう?」
🔴 学習者
「彼女は本を読むことが好きです」
🔵 講師
「うん。自分で読めたね」
Mさんは少し笑いました。
🔴 学習者
「こういう文なら分かります」
🔵 講師
「じゃあ、三文目を見てみよう」
When she has free time, she often goes to the library.
Mさんは、しばらく英文を見つめました。
🔴 学習者
「free time は自由な時間ですよね」
🔵 講師
「そうだね」
🔴 学習者
「library は図書館……」
🔵 講師
「うん。じゃあ、文全体は?」
🔴 学習者
「彼女は自由な時間……図書館に行きます?」
🔵 講師
「大体の意味は分かっているね。じゃあ、when のところを考えてみよう」
🔴 学習者
「自由な時間があるとき、ですか?」
🔵 講師
「そう。続けてみよう」
🔴 学習者
「彼女は自由な時間があるとき、よく図書館に行きます」
🔵 講師
「正解」
Mさんは、ノートを見ながら言いました。
🔴 学習者
「先生、単語は結構分かるんです。でも、文が長くなると、どこで区切ればいいか分からなくなります」
🔵 講師
「今、自分で大事なことに気づいたね」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「最初は『英語が全部分からない』と言っていたでしょう?」
🔴 学習者
「はい」
🔵 講師
「でも今は、『文が長くなると区切り方が分からない』と説明できたね」
Mさんは少し考えました。
🔴 学習者
「確かに、そうですね」
つまずきは一つとは限らない
講師は、もう一つ確認しました。
🔵 講師
「じゃあ、この三つの文に出てくる she は、誰のことだと思う?」
🔴 学習者
「福井に住んでいる友達です」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、三文目の she も?」
🔴 学習者
「同じ友達です」
🔵 講師
「正解。文章のつながりも理解できているね」
続いて、講師は少し違う英文を出しました。
The book that I bought yesterday was interesting.
🔵 講師
「これはどうかな?」
🔴 学習者
「The book は、その本……」
🔵 講師
「うん」
🔴 学習者
「that が出てくると、また分からなくなります」
🔵 講師
「じゃあ、まず I bought yesterday の部分を見てみよう」
🔴 学習者
「私は昨日買いました」
🔵 講師
「何を買ったのかな?」
🔴 学習者
「本です」
🔵 講師
「そう。that I bought yesterday が、前の the book を説明しているんだ」
🔴 学習者
「私が昨日買った本……」
🔵 講師
「うん。じゃあ、was interesting は?」
🔴 学習者
「面白かった」
🔵 講師
「文全体では?」
🔴 学習者
「私が昨日買った本は面白かった、です」
🔵 講師
「正解」
Mさんはうなずきました。
🔴 学習者
「who も that も、前の言葉を説明しているんですね」
🔵 講師
「今の文では、そういう働きをしているね」
🔴 学習者
「でも、説明されないと、まだ自分では分からないです」
🔵 講師
「そこが次に練習したいところだね」
講師は、確認した内容を整理しました。
自力でできていること
- 基本的な英文の意味を読み取る
- 多くの基本単語の意味を理解する
- 短い文の主語と動詞を見つける
- 代名詞が何を指すのかを考える
練習が必要なこと
- 関係代名詞を含む英文の構造を捉える
- 接続詞でつながった文を区切って読む
- 長い英文の主語と動詞を整理する
- ヒントなしで文全体の意味を組み立てる
🔴 学習者
「思っていたより、できるところが多いですね」
🔵 講師
「そうだね。もちろん、まだ確認していない内容もあるけれど、少なくとも今の課題はかなり具体的になってきたよ」
🔴 学習者
「英語を全部最初からやり直す必要はなさそうですか?」
🔵 講師
「今の確認だけで全部判断することはできないけれど、まずは文の構造を読む練習から始めるのがよさそうだね」
Mさんは安心した表情になりました。
以前は、英語の問題集を開くたびに、何から勉強すればよいのか分からなくなっていました。
しかし今は、最初に取り組むべき課題が見えてきました。
「何が分からないか分からない」から抜け出す
家庭学習の方法を変える
講師は、Mさんの普段の英語学習について尋ねました。
🔵 講師
「家では、英語をどんなふうに勉強している?」
🔴 学習者
「単語を覚えて、ワークを進めています」
🔵 講師
「長文で分からないところがあったら?」
🔴 学習者
「答えを見て、訳を確認しています」
🔵 講師
「その後、もう一度自分で読んでみる?」
🔴 学習者
「そこまではしていません」
🔵 講師
「じゃあ、これからは少し変えてみよう」
講師は、家庭学習の手順をノートに書きました。
① まず短い英文を自力で読む
② 主語と動詞を確認する
③ 文をつなぐ言葉や、前の名詞を説明する部分を見つける
④ 分からない部分だけ解説を確認する
⑤ 解説を閉じて、もう一度自力で読む
🔴 学習者
「これなら、何をすればいいか分かります」
🔵 講師
「最初は短い文でいいよ。少しずつ長くしていこう」
🔴 学習者
「単語の勉強も続けたほうがいいですよね?」
🔵 講師
「もちろん。単語も大事だからね。ただ、今は文の構造を理解する練習も必要だと思うよ」
🔴 学習者
「分かりました」
一週間後、質問の仕方が変わった
次の指導日。
Mさんは、英語のワークを開きながら話し始めました。
🔴 学習者
「先生、今週は英文を区切って読む練習をしました」
🔵 講師
「どうだった?」
🔴 学習者
「短い文なら、前より読みやすくなりました」
🔵 講師
「いいね。難しかったところは?」
🔴 学習者
「この文です」
Mさんは、一つの英文を指しました。
I met a girl who speaks English very well.
🔴 学習者
「単語の意味は分かるんです。でも、who の後ろをどこにつなげるのか、最初は分かりませんでした」
🔵 講師
「じゃあ、今はどう?」
🔴 学習者
「who speaks English very well が、a girl を説明しているんですよね」
🔵 講師
「そうだね」
🔴 学習者
「だから、『私は英語をとても上手に話す女の子に会いました』です」
🔵 講師
「正解。自分で説明できたね」
Mさんは少しうれしそうでした。
🔴 学習者
「先生、前だったら『全部分からない』って言ってたと思います」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「どの部分が分からないのか、少し分かるようになりました」
🔵 講師
「それは大事な変化だね」
🔴 学習者
「英語が全部苦手だと思ってたんですけど、そうじゃないんですね」
🔵 講師
「うん。できているところもあるし、これから練習が必要なところもある。分けて考えればいいんだよ」
Mさんは、ノートに書かれた学習手順を見直しました。
そして、少し考えてから言いました。
🔴 学習者
「先生、分からないところが見つかると、ちょっと安心しますね」
🔵 講師
「どうして?」
🔴 学習者
「何を勉強すればいいか分かるからです」
講師はうなずきました。
🔵 講師
「そうだね。分からないところが見つかるのは、悪いことじゃないんだよ」
Mさんは、次の英文を自分から読み始めました。
まだ、すべての長文を自力で読めるわけではありません。
関係代名詞や接続詞を含む文では、迷うこともあります。
それでも、以前のように英文を見ただけで諦めることは少なくなっていました。
分からないところがあれば、まず主語と動詞を探す。
文を短く区切ってみる。
それでも分からなければ、どの部分が難しいのかを確認する。
そうした方法を、少しずつ使えるようになっていたのです。
おわりに
「どこから分からなくなったのか分からない」
この状態は、勉強が苦手な子どもにとって、大きな不安につながることがあります。
何を勉強すればよいのか分からない。
どこまで戻ればよいのか分からない。
どれだけ頑張ればできるようになるのかも分からない。
その結果、勉強を始めること自体が難しくなってしまう場合があります。
しかし、つまずきの場所は、必ずしも本人が最初から説明できる必要はありません。
実際に問題を解きながら、少しずつ確認していけばよいのです。
今回のMさんは、最初、英語が全部分からないと感じていました。
しかし、短い英文から確認していくと、基本的な単語や文の意味は理解できていることが分かりました。
一方で、関係代名詞や接続詞を含む英文では、文の構造を捉えることが難しくなっていました。
つまり、英語全体が理解できていないわけではなく、特定の部分に練習が必要だったのです。
家庭学習でも、同じ考え方を取り入れることができます。
一つ目は、できる問題から確認すること。
いきなり難しい問題に取り組むのではなく、自力で解けるところを見つけます。
二つ目は、分からない部分を細かく分けること。
数学なら、問題文・式の立て方・計算。
英語なら、単語・文法・文の構造・文章全体の意味。
このように分けて考えることで、課題が見えやすくなります。
三つ目は、必要なところだけ戻ること。
以前の単元をすべてやり直すのではなく、現在の学習に必要な部分を優先して確認します。
四つ目は、子ども自身がつまずきを説明できるようにすること。
「全部分からない」
ではなく、
「この文の主語が分からない」
「この計算で符号を間違える」
と説明できるようになることが大切です。
そして、つまずきを見つけたときには、できなかったことを責めないようにしましょう。
分からない場所が見つかることは、学習が前に進むための重要な手がかりです。
家庭教師の役割も、ただ答えや解き方を教えることだけではありません。
子どもと一緒に問題を確認し、どこまで理解できているのかを整理し、次に必要な学習を見つけることです。
「何が分からないのか分からない」状態から、「ここを練習すればよい」という状態へ。
この変化によって、勉強への向き合い方が変わることがあります。
分からないことは、恥ずかしいことではありません。
本当に大切なのは、分からないままにせず、その原因を一つずつ見つけていくことなのです。
理論編はこちらから
⑥どこから分からなくなったのかを見つける方法(理論編)
はじめに 「どこが分からないの?」 勉強で困っている子どもに対して、保護者や先生がよく使う言葉です。 しかし、この質問にすぐ答えられる子どもは、必ずしも多くありません。 「全部分からない」 「何が分からないのか分からない […]
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