はじめに
勉強しているが・・・成績につながらない。イヤになってきます・・・。
やってるんだけど・・・。
それはいいことだよね。
でも成績が・・・。
何かズレがあるんかなあ・・・検討してみましょう。
事例プロフィール
- 対象: 中学2年生・Yくん
- 地域: 福井県内(具体的な市町村は設定しない)
- 性格: 真面目で、指示されたことには取り組むが、自信を失いやすい
- 当初の課題: 勉強時間を増やしても数学と英語の成績が伸びない
- 支援テーマ: 成績が伸びない原因を分解し、自分に合った家庭学習へ変える
はじめに

「勉強時間を増やしたのに、成績が上がらない」
そんなとき、本人も保護者も、何を変えればよいのか分からなくなることがあります。
勉強時間が足りないのでしょうか。
集中力がないのでしょうか。
それとも、勉強そのものが苦手なのでしょうか。
しかし、成績が伸びない原因は、一つとは限りません。
基礎学力の抜け、理解したつもりになっていること、勉強方法の問題、復習不足、そして苦手意識。
こうした原因が重なっている場合には、ただ勉強時間を増やしても、思うような結果につながらないことがあります。
今回の物語は、定期テストで思うような結果が出ず、「自分には勉強が向いていない」と感じ始めた中学生のケースです。
家庭教師は、いきなり新しい問題集を渡したり、勉強時間を増やすよう指示したりしませんでした。
まず行ったのは、普段の勉強と答案を確認し、何が成績を妨げているのかを一緒に探すことでした。
「これ以上、何をすればいいんですか?」
家庭教師が訪問すると、Yくんは机の上に数学と英語の答案を並べました。
数学は48点。英語は51点。
前回とほとんど変わらない点数でした。
🔵 講師
「今回のテスト、どうだった?」
🔴 学習者
「見れば分かると思いますけど、全然ダメでした」
🔵 講師
「前回より勉強時間を増やしたって言ってたよね」
🔴 学習者
「はい。今回は本当にやりました」
🔵 講師
「どのくらい?」
🔴 学習者
「テスト前は毎日2時間くらいです。前は1時間もやってなかったのに」
🔵 講師
「それだけ増やしたのに、点数が変わらなかったんだね」
🔴 学習者
「そうです。だから、もう何をすればいいのか分からないです」
Yくんは答案を裏返しました。
🔴 学習者
「結局、頭が悪いってことなんですかね」
🔵 講師
「どうしてそう思う?」
🔴 学習者
「だって、勉強してもできないんですよ。友達はそんなに勉強してないって言ってるのに、もっと点数が高いし」
講師はすぐに否定するのではなく、答案を見ながら尋ねました。
🔵 講師
「じゃあ、一つ調べてみようか」
🔴 学習者
「何をですか?」
🔵 講師
「勉強しても成績が上がらなかった原因」
🔴 学習者
「勉強が足りなかったんじゃないんですか?」
🔵 講師
「その可能性もある。でも、時間を増やしても変わらなかったなら、ほかにも原因があるかもしれない」
講師はノートを開き、五つの項目を書きました。
① 基礎学力
② 理解の確認
③ 勉強方法
④ 復習と間違い直し
⑤ 苦手意識
🔴 学習者
「これ、全部調べるんですか?」
🔵 講師
「そう。全部が原因とは限らないけれど、一つずつ確認してみよう」
🔴 学習者
「全部ダメだったらどうするんですか?」
🔵 講師
「そのときは、どこから直せばいいか考えればいい。原因が分かることは悪いことじゃないよ」
Yくんは少し不安そうでしたが、答案をもう一度表に返しました。
問題を解いてみると、見えてきたこと
最初の確認――基礎学力は十分か
講師は数学の答案から、方程式の問題を一つ選びました。
🔵 講師
「この問題、もう一回解いてみよう」
Yくんは途中まで式を書きましたが、答えが合いません。
🔴 学習者
「やっぱりできません」
🔵 講師
「解き方は覚えてる?」
🔴 学習者
「移項するんですよね」
🔵 講師
「そうだね。じゃあ、この途中式を見てみよう」
講師が指したのは、マイナスの符号を処理する部分でした。
🔵 講師
「ここ、どうしてプラスになった?」
🔴 学習者
「あれ?マイナスでしたっけ?」
講師は方程式をいったん離れ、正負の数と文字式の計算を数問出しました。
すると、簡単な計算はできるものの、符号が複数出てくると間違いが増えることが分かりました。
🔵 講師
「一つ目の原因が見つかったかもしれないね」
🔴 学習者
「方程式が苦手だから?」
🔵 講師
「それだけじゃない。方程式の前に習った計算が、まだ安定していないみたいだ」
🔴 学習者
「じゃあ、中1の勉強からやり直しですか?」
🔵 講師
「全部やり直す必要はないよ。今つまずいている計算を重点的に練習しよう」
講師はノートの「①基礎学力」に印をつけました。
二つ目の確認――本当に理解できているか
続いて、Yくんがテスト前に使っていた問題集を確認しました。
多くのページに丸がついています。
🔵 講師
「結構進めたね」
🔴 学習者
「はい。ワークは全部終わらせました」
🔵 講師
「じゃあ、この丸がついている問題をもう一回やってみよう」
Yくんは問題を見ました。
しかし、鉛筆が動きません。
🔴 学習者
「あれ……これ、どうやるんでしたっけ?」
🔵 講師
「前に解いたときは?」
🔴 学習者
「答えを見たら分かったんです」
🔵 講師
「その後、自分だけで解き直した?」
🔴 学習者
「やってないです」
🔵 講師
「なるほど。ここにも原因がありそうだね」
🔴 学習者
「でも、答えを見たときは理解できたんですよ」
🔵 講師
「うん。ただ、解説を見て理解できることと、何も見ずに解けることは違うんだ」
講師は解説を一緒に確認し、問題集を閉じてからもう一度解いてもらいました。
今度は途中まで解けましたが、最後で手が止まりました。
🔴 学習者
「分かったと思ったのに……」
🔵 講師
「今、どこまで自分でできるか分かったでしょう?」
🔴 学習者
「途中まではできます」
🔵 講師
「そう。そこから先を練習すればいいんだよ」
講師は「②理解の確認」にも印をつけました。
三つ目の確認――勉強方法は合っているか
次に講師は、英語の勉強について尋ねました。
🔵 講師
「英語はどうやって勉強した?」
🔴 学習者
「教科書を読んで、単語をノートに書きました」
🔵 講師
「覚えたかどうかは確認した?」
🔴 学習者
「何回も書いたから、覚えたと思います」
🔵 講師
「じゃあ、ちょっと確認してみよう」
講師は教科書の単語をいくつか選び、日本語の意味を隠して尋ねました。
Yくんは半分ほど答えられましたが、残りは思い出せませんでした。
🔴 学習者
「書いたときは覚えてたんですけど……」
🔵 講師
「単語を書くことは悪くないよ。でも、書いた回数だけで覚えたかどうかは分からないんだ」
🔴 学習者
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
🔵 講師
「書いた後に隠して、意味やつづりを思い出せるか確認してみよう」
🔴 学習者
「覚えられなかった単語だけ、もう一回やるんですか?」
🔵 講師
「そう。それなら、覚えている単語に何度も同じ時間を使わなくて済むね」
講師は「③勉強方法」にも印をつけました。
Yくんはノートを見つめました。
🔴 学習者
「もう三つも原因があるじゃないですか」
🔵 講師
「そうだね。でも、今までとは違うでしょう?」
🔴 学習者
「何がですか?」
🔵 講師
「今までは『勉強してもできない』だった。でも今は、直せそうなところが三つ見つかった」
🔴 学習者
「まあ……そうですね」
🔵 講師
「じゃあ、残りの二つも確認してみよう」
講師はノートの「④復習と間違い直し」を指しました。
🔵 講師
「ところで、テスト前に間違えた問題って、その後どうしてた?」
🔴 学習者
「答え合わせはしましたよ」
🔵 講師
「その次は?」
🔴 学習者
「……次のページに進んでました」
講師は問題集を開き、間違えたままになっている問題を一緒に探し始めました。
残りの二つの原因が見えてきた
四つ目の確認――間違えた問題をどうしているか
講師はYくんの数学のワークを開きました。
赤ペンで答えが直されている問題がいくつもあります。
🔵 講師
「この赤い答えは、自分で考えて書いたの?」
🔴 学習者
「答えを見て書きました」
🔵 講師
「その後、もう一度解いた?」
🔴 学習者
「いえ。答え合わせしたら終わりです」
🔵 講師
「じゃあ、この問題を今解いてみよう」
Yくんは問題を見つめました。
しばらく考えてから、首をかしげます。
🔴 学習者
「これ、前にも間違えたやつですよね」
🔵 講師
「そうだね」
🔴 学習者
「また分からないです」
🔵 講師
「つまり、答え合わせはしたけれど、自分で解ける状態にはなっていなかったんだね」
🔴 学習者
「じゃあ、答え合わせって意味ないんですか?」
🔵 講師
「意味はあるよ。でも、答え合わせは勉強の終わりじゃなくて、次に何を練習するかを決めるためのものなんだ」
講師はワークの間違えた問題に、小さな星印をつけました。
🔵 講師
「これからは、間違えた問題に印をつけよう」
🔴 学習者
「全部ですか?」
🔵 講師
「まずは大事な問題からでいい。解説を確認して、自分でもう一度解く。それから数日後に、何も見ずに解けるか確かめるんだ」
🔴 学習者
「一回できても、またやるんですか?」
🔵 講師
「そう。今日できたことを、来週もできるか確認したいからね」
🔴 学習者
「確かに、英単語もすぐ忘れます」
🔵 講師
「数学も英語も、覚えたことを後から思い出す練習が必要なんだよ」
講師はノートの「④復習と間違い直し」に印をつけました。
五つ目の確認――「どうせできない」という気持ち
最後に講師が確認したのは、勉強に向かうときの気持ちでした。
🔵 講師
「Yくん、数学の難しい問題を見たとき、最初に何を思う?」
🔴 学習者
「無理だなって思います」
🔵 講師
「まだ解いていなくても?」
🔴 学習者
「はい。どうせ間違えるし」
🔵 講師
「じゃあ、分からなかったらどうする?」
🔴 学習者
「飛ばすか、答えを見ます」
🔵 講師
「少し考えてから?」
🔴 学習者
「……あんまり考えてないかもしれません」
Yくんは苦笑いしました。
🔴 学習者
「でも、難しい問題って本当に分からないんですよ」
🔵 講師
「もちろん、今の力では難しい問題もあると思う。ただ、全部がそうなのかな?」
講師は少し前に正解できた問題を指しました。
🔵 講師
「これ、最初はどう言ってた?」
🔴 学習者
「難しそうって」
🔵 講師
「でも実際には?」
🔴 学習者
「できました」
🔵 講師
「そうだね。難しそうに見えることと、本当に解けないことは同じじゃないんだ」
Yくんは少し考えました。
🔴 学習者
「俺、問題を見る前から諦めてることがあるかもしれません」
🔵 講師
「それも、成績が伸びにくくなる原因の一つかもしれないね」
🔴 学習者
「じゃあ、これで五つ全部ですか?」
🔵 講師
「今回確認した五つには、それぞれ改善できそうなところが見つかったね」
🔴 学習者
「全部ダメだったってことですよね……」
講師は首を横に振りました。
🔵 講師
「そうじゃないよ。今まで分からなかった原因が、具体的になったということだよ」
🔴 学習者
「でも、五つも直すのは大変じゃないですか?」
🔵 講師
「だから、全部を一度に直そうとはしないんだ」
五つの原因を、一つずつ改善する
講師はノートに書いた五つの原因を、Yくんと一緒に見直しました。
① 基礎学力の抜け
数学では、正負の数や文字式の計算に不安定な部分がある。
② 分かったつもり
解説を見て理解した問題でも、一人では解けないことがある。
③ 勉強方法
英単語を何度も書いているが、覚えたかどうかを確認していない。
④ 復習不足
間違えた問題を答え合わせだけで終わらせている。
⑤ 苦手意識
難しい問題を見ると、考える前に諦めてしまうことがある。
🔴 学習者
「こうして見ると、本当にいろいろありますね」
🔵 講師
「そうだね。でも、どれも少しずつ変えられることだと思わない?」
🔴 学習者
「何をすればいいかは分かります。でも、全部やる時間があるかな……」
🔵 講師
「じゃあ、今までの勉強時間の使い方を変えてみよう」
講師は、Yくんが普段確保できる45分を使って、次のような計画を作りました。
Yくんの家庭学習・45分プラン
| 時間 | 学習内容 |
|---|---|
| 最初の10分 | 正負の数・文字式などの基礎計算 |
| 次の15分 | 学校で習っている単元の問題 |
| 次の10分 | 間違えた問題の解き直し |
| 最後の10分 | 英単語の確認テストと復習 |
🔴 学習者
「これなら、今までとそんなに時間が変わらないですね」
🔵 講師
「そう。まずは時間を増やすより、中身を変えてみよう」
🔴 学習者
「でも、難しい問題が出たら?」
🔵 講師
「まず、どこまで分かるか考えてみる。それでも分からなかったら、分からない場所に印をつけておこう」
🔴 学習者
「すぐ答えを見ちゃダメですか?」
🔵 講師
「考えても手がかりが見つからないなら、解説を使っていいよ。ただし、見た後に自分で解き直そう」
🔴 学習者
「なるほど」
🔵 講師
「それと、毎日完璧にできなくてもいい。続けながら調整していこう」
Yくんは計画を書いたノートを見ながら、少し表情を緩めました。
🔴 学習者
「これならできそうです」
一週間後に見えてきた小さな変化
次の指導日、Yくんは自分からワークを開きました。
🔴 学習者
「先生、ちょっと見てください」
そこには、間違えた問題につけた星印が並んでいました。
いくつかには、解き直した日付も書かれています。
🔵 講師
「やってみたんだね。どうだった?」
🔴 学習者
「前より、何を勉強したらいいか分かりやすかったです」
🔵 講師
「計算は?」
🔴 学習者
「まだ間違えるけど、マイナスのところを気をつけるようになりました」
🔵 講師
「英単語は?」
🔴 学習者
「書くだけじゃなくて、隠して答えるようにしました。覚えてない単語がすぐ分かります」
🔵 講師
「いいね。間違えた問題はどう?」
🔴 学習者
「前は答えを写して終わりだったけど、今はもう一回やってます」
講師は、星印のついた問題を一つ選びました。
🔵 講師
「じゃあ、これを今解いてみよう」
Yくんは途中式を書き、最後まで解きました。
答えは正解でした。
🔴 学習者
「あ、できた」
🔵 講師
「前は解けなかった問題だよね」
🔴 学習者
「はい。これ、前は答え見ても次の日には忘れてたんですよ」
🔵 講師
「今回は、自分で解けたね」
Yくんは少しうれしそうに笑いました。
🔴 学習者
「なんか、前より勉強した感じがします」
🔵 講師
「勉強時間は増えた?」
🔴 学習者
「いや、そんなに変わってないです」
🔵 講師
「じゃあ、何が変わったんだろう?」
🔴 学習者
「何を直せばいいか分かるようになったこと、ですかね」
🔵 講師
「そうだね。それが大事なんだ」
もちろん、一週間でテストの点数が大きく変わったわけではありません。
基礎の抜けも、苦手意識も、すぐにすべて解消されるものではありません。
それでもYくんには、一つの変化が生まれていました。
以前は、
「勉強してもできない」
と考えていました。
しかし今は、
「ここを練習すれば、できるようになるかもしれない」
と考え始めています。
成績を伸ばすための取り組みは、そこから始まります。
おわりに
成績が伸びないとき、最初から勉強時間を増やす必要があるとは限りません。
まず、何が原因になっているのかを確認してみてください。
基礎が抜けているのか。
分かったつもりになっているのか。
勉強方法が合っていないのか。
復習が不足しているのか。
それとも、苦手意識が学習への取り組みを妨げているのか。
実際には、これらの原因が複数重なっている場合もあります。
しかし、すべてを一度に改善する必要はありません。
まずは、今の学習で特に影響が大きいと思われる原因を一つ選びます。
そして、その原因に対して具体的な行動を決めます。
例えば、
「数学が苦手だから毎日2時間勉強する」
ではなく、
「正負の数の計算を毎日10分確認する」
と決める。
「英語をもっと頑張る」
ではなく、
「覚えられなかった英単語を翌日もう一度確認する」
と決める。
「問題集を全部終わらせる」
ではなく、
「間違えた問題を自分の力で解き直す」
ことを目標にする。
このように、原因を具体的な行動へ変えていくことが大切です。
そして、改善したかどうかも確認します。
昨日できなかった問題が、今日はできた。
先週覚えられなかった単語を、今週は思い出せた。
以前ならすぐ諦めていた問題に、少し長く取り組めた。
こうした変化は、まだテストの点数に表れていなくても、学習が前に進んでいることを確かめる材料になります。
家庭教師ができる支援の一つは、子ども自身では気づきにくい原因を一緒に探し、取り組みやすい形へ整理することです。
「成績が上がらない」という結果だけを見て、本人の努力や能力を否定する必要はありません。
原因を見つける。
優先順位を決める。
勉強方法を変える。
できるようになったことを確認する。
この積み重ねが、成績を伸ばすための土台になります。
勉強時間を増やす前に、まずは今の勉強を見直してみてください。
そこに、成績を変えるための手がかりが隠れているかもしれません。
理論編はこちらから
③ 成績が伸びない子に共通する5つの原因(理論編)
はじめに 「毎日勉強しているのに、成績が上がらない」 「塾にも通っているのに、テストの点数が変わらない」 「本人なりに頑張っているようなのに、なぜ結果が出ないのだろう」 こうした悩みを抱えるご家庭は少なくありません。 成 […]
家庭教師のご依頼も受け付けています
家庭学習が続かない。
何から勉強すればよいか分からない。
そんなお悩みに、福井県の学習事情を踏まえ、お子さま一人ひとりに合った学習方法をご提案します。
【ご相談の流れ】
① メール・電話・LINEでお問い合わせ
② 現在の学習状況をお伺いします
③ お子さまに合った学習方法をご提案します
ご相談だけでも大丈夫です。
無理な勧誘はいたしません。
まずはお気軽にお問い合わせください。


