はじめに

AIの登場によって多くのことが大きく変わりました・・・。

AIって便利ですよね。

ほんとそう。うまく使えれば。

うまく?

使い方を間違えると・・・。

はじめに

「先生、最近AI使ってます。」

ある日の授業で、生徒がそう言いました。

私は少し興味を持って聞きました。

「何に使ってるの?」

すると生徒は、

「宿題です。」

と答えました。

数学の問題が分からなければ、AIに問題を入力する。

英作文が出れば、AIに英文を作ってもらう。

理科で分からない言葉があれば、AIに説明してもらう。

一見すると、とても効率的です。

以前なら30分かかっていた宿題が、15分で終わることもあります。

分からない問題で何十分も止まる必要もありません。

しかし、そこで一つ確認しなければならないことがあります。

「宿題が終わったこと」と「勉強ができるようになったこと」は同じなのか。

ということです。

AIは非常に便利です。

使い方によっては、家庭学習を大きく助けてくれます。

一方で、使い方を間違えると、

「分からない」

↓

「AIに聞く」

↓

「答えを書く」

↓

「終わり」

という流れになってしまいます。

これでは、自分で考える時間がほとんどありません。

大切なのはAIを使わないことではありません。

AIにどこまで手伝ってもらうのかを、自分で考えられるようになることです。

今回は、AIに答えを出してもらっていた生徒が、家庭教師とのやり取りを通して、少しずつAIとの付き合い方を変えていった例をご紹介します。


「AIに聞いたらすぐ終わりました」

ある日の授業。

私は生徒の数学のワークを確認していました。

ほとんどの問題に丸が付いています。

🔵 講師

「今週、結構できてるね。」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「この問題もできた?」

少し難しい文章問題を指しました。

🔴 学習者

「できました。」

🔵 講師

「じゃあ、もう一回やってみようか。」

私は同じような問題を一問出しました。

生徒が鉛筆を持ちます。

しかし、しばらくすると手が止まりました。

🔵 講師

「どうした?」

🔴 学習者

「分かりません。」

🔵 講師

「ワークの問題はできてたよね?」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「どうやって解いた?」

生徒は少し黙りました。

そして言いました。

🔴 学習者

「AIに聞きました。」

🔵 講師

「なるほど。」


私は怒りませんでした。

AIを使ったこと自体が問題なのではないからです。

🔵 講師

「AIにどう聞いたの?」

🔴 学習者

「問題を入れて、『解き方を教えて』って。」

🔵 講師

「そしたら?」

🔴 学習者

「式と答えが出ました。」

🔵 講師

「それを見て?」

🔴 学習者

「書きました。」

🔵 講師

「分かった?」

生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「そのときは分かった気がしました。」

🔵 講師

「今は?」

🔴 学習者

「分からないです。」

私はうなずきました。


🔵 講師

「じゃあ、AI使ったの失敗だったと思う?」

🔴 学習者

「使わない方がいいんですか?」

🔵 講師

「そういうことじゃないよ。」

🔴 学習者

「じゃあ、どう使えばいいんですか?」

私は生徒のワークを開きました。

🔵 講師

「ちょっと使い方を変えてみよう。」


私は先ほどの問題をもう一度見せました。

🔵 講師

「まず、自分でどこまでできる?」

🔴 学習者

「分かりません。」

🔵 講師

「問題文から分かっている数字は?」

生徒は問題を読みました。

🔴 学習者

「これと、これ。」

🔵 講師

「何を求める?」

🔴 学習者

「これ。」

🔵 講師

「じゃあ、全然分からないわけじゃないね。」

🔴 学習者

「まあ……。」

🔵 講師

「ここから分からないんだね。」

🔴 学習者

「はい。」


私は言いました。

🔵 講師

「じゃあAIに、『答えを教えて』じゃなくて、こう聞いてみよう。」

生徒が入力します。

「答えは言わないでください。最初に何を考えればいいか、ヒントを一つだけください。」

AIからヒントが返ってきました。

生徒が読みます。

🔴 学習者

「あ。」

🔵 講師

「何か分かった?」

🔴 学習者

「この式使うんですか?」

🔵 講師

「やってみよう。」

生徒が式を書きました。

途中まで進みます。

また手が止まりました。

🔴 学習者

「ここから分かりません。」

🔵 講師

「じゃあどうする?」

🔴 学習者

「もう一回聞く?」

🔵 講師

「何て?」

少し考えて、生徒が入力しました。

「ここまではできました。この次に考えることを一つだけ教えてください。」


次のヒントが表示されました。

🔴 学習者

「あ、これなら分かる。」

再び自分で計算します。

そして、

🔴 学習者

「できた。」

🔵 講師

「答え、AIに出してもらった?」

🔴 学習者

「出してもらってません。」

🔵 講師

「誰が解いた?」

🔴 学習者

「自分。」

少し嬉しそうな顔をしました。


私は、似た問題をもう一問出しました。

🔵 講師

「今度はAIなしでやってみよう。」

🔴 学習者

「えー。」

🔵 講師

「さっきできたから。」

生徒は問題を読みました。

少し時間がかかりましたが、式を書き始めます。

途中で一度止まりました。

しかし、すぐにはAIを開きませんでした。

問題文を読み直します。

そして計算を続けました。

🔴 学習者

「できました。」

🔵 講師

「今度は?」

🔴 学習者

「AIなし。」

🔵 講師

「じゃあ、さっきAIを使った意味があったね。」

生徒はうなずきました。


授業の最後に、私は聞きました。

🔵 講師

「今日までのAIの使い方と、今の使い方、何が違う?」

🔴 学習者

「前は答えを聞いてました。」

🔵 講師

「今日は?」

🔴 学習者

「ヒントだけ。」

🔵 講師

「どっちが楽?」

🔴 学習者

「答え聞く方。」

🔵 講師

「どっちが勉強になる?」

生徒は少し笑いました。

🔴 学習者

「ヒントの方。」

🔵 講師

「そうだね。」


「AIに何を聞くか」で勉強が変わる

次の週。

生徒が英語のノートを持ってきました。

🔴 学習者

「先生、これAI使いました。」

🔵 講師

「どこ?」

🔴 学習者

「英作文。」

ノートを見ると、英文が書かれています。

以前より少し難しい表現が使われていました。

🔵 講師

「どう使った?」

🔴 学習者

「最初は自分で書きました。」

🔵 講師

「おお。」

🔴 学習者

「そのあとAIに見せました。」

🔵 講師

「何て聞いた?」

生徒は実際に使った質問を見せてくれました。

「中学生の英作文として、おかしいところだけ教えてください。全文を書き直さないでください。」

私はうなずきました。

🔵 講師

「いい使い方だね。」


生徒が最初に書いた英文には、動詞の形に間違いがありました。

AIは、

「この部分の時制を確認してみましょう」

と指摘していました。

🔵 講師

「それでどうした?」

🔴 学習者

「教科書見ました。」

🔵 講師

「AIに正解を聞かなかった?」

🔴 学習者

「聞こうと思ったけど、自分で直しました。」

🔵 講師

「直せた?」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「じゃあ、この文法説明できる?」

生徒は少し考えました。

そして、自分の言葉で説明しました。

完全ではありませんでした。

しかし、以前のようにAIが作った英文をそのまま写した状態とは明らかに違います。


🔵 講師

「AIが全部書いた文章と、自分で書いてAIに直してもらった文章、どっちが自分の文章?」

🔴 学習者

「こっち。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「最初は自分で考えたから。」

🔵 講師

「そうだね。」


その後、理科でもAIを使ってみることにしました。

生徒が教科書を見ながら言います。

🔴 学習者

「この説明、意味分かりません。」

🔵 講師

「AIに聞いてみる?」

🔴 学習者

「はい。」

以前なら、

「これを説明してください」

だけだったでしょう。

しかし今回は少し考えました。

そして、

「中学生にも分かる言葉で、身近な例を一つ使って説明してください。」

と入力しました。

説明が返ってきます。

🔴 学習者

「ああ、そういうことか。」

🔵 講師

「分かった?」

🔴 学習者

「たぶん。」

🔵 講師

「じゃあAI閉じよう。」

🔴 学習者

「え?」

🔵 講師

「今の内容、先生に説明してみて。」

🔴 学習者

「説明するんですか?」

🔵 講師

「うん。」

生徒は少し困りながら説明を始めました。

途中で言葉に詰まります。

🔴 学習者

「あれ……。」

🔵 講師

「分かったつもりだった?」

🔴 学習者

「ちょっと。」


もう一度AIの説明を確認します。

今度は、ただ読むのではなく、重要なところを自分でノートに書きました。

そしてAIを閉じます。

🔵 講師

「もう一回。」

生徒が説明します。

今度は先ほどよりスムーズです。

🔴 学習者

「こういうことですよね?」

🔵 講師

「うん。かなり分かってる。」

🔴 学習者

「読むだけじゃダメなんですね。」

🔵 講師

「『分かった気がする』と『自分で説明できる』は違うからね。」


その日の授業で、生徒とAIを使うときのルールを作ることにしました。

私が決めるのではありません。

生徒自身に考えてもらいました。

🔵 講師

「今までやってみて、どう使えば勉強になりそう?」

生徒がノートに書きます。

AIを使うときの自分ルール

① まず自分で考える

② すぐ答えを聞かない

③ 分からなければヒントを一つもらう

④ AIの説明を読んだら、自分でもう一度やる

⑤ 最後にAIなしでできるか確認する

私は聞きました。

🔵 講師

「これ守れそう?」

🔴 学習者

「たぶん。」

🔵 講師

「『たぶん』なんだ。」

二人で笑いました。


それから数週間、生徒は家庭学習でAIを使うようになりました。

数学では、

「答えを言わず、最初のヒントだけください。」

英語では、

「間違っているところだけ教えてください。」

理科では、

「中学生向けに身近な例で説明してください。」

社会では、

「この範囲から一問ずつ問題を出してください。」

以前とは、質問の仕方そのものが変わってきました。


ある日の授業。

🔴 学習者

「先生、AIに問題出してもらいました。」

🔵 講師

「何の?」

🔴 学習者

「社会。」

ノートを見ると、AIに作ってもらった確認問題を解いた記録がありました。

🔵 講師

「全部できた?」

🔴 学習者

「最初は7問中4問。」

🔵 講師

「そのあと?」

🔴 学習者

「間違えたところを教科書で見ました。」

🔵 講師

「それから?」

🔴 学習者

「もう一回問題作ってもらいました。」

🔵 講師

「今度は?」

🔴 学習者

「6問できました。」

🔵 講師

「残り一問は?」

🔴 学習者

「これ。」

ノートに印が付いていました。

🔴 学習者

「AIの説明を読んでも、ちょっと分からなかったので先生に聞こうと思って。」

私はうなずきました。


これはとても大切な変化でした。

以前は、

分からない → AIに答えを聞く → 終わり

でした。

今は、

自分で考える → AIを使う → 教科書で確認する → もう一度やる → それでも分からなければ家庭教師に聞く

という流れになっています。

AIだけですべてを解決しようとしているわけではありません。

AI、教科書、家庭教師。

それぞれを必要に応じて使い分け始めています。


しかし、その日の授業で、一つ問題が起きました。

生徒がAIに作ってもらった理科の確認問題を見せてくれたときです。

🔴 学習者

「先生、この問題なんですけど。」

私は問題と答えを読みました。

少し違和感がありました。

🔵 講師

「これ、教科書見てみようか。」

🔴 学習者

「なんで?」

🔵 講師

「AIの答え、本当に合ってるか確認したい。」

教科書を開いて確認します。

やはり、AIの説明には一部不正確なところがありました。

生徒が驚きました。

🔴 学習者

「AI、間違えるんですか?」

🔵 講師

「間違えることはあるよ。」

🔴 学習者

「ずっと正しいと思ってました。」

🔵 講師

「だから、AIの答えをそのまま信じるだけだと危ないこともある。」

生徒は画面と教科書を交互に見ました。

🔴 学習者

「じゃあ、どうやって正しいか分かるんですか?」

私はすぐに答えませんでした。

🔵 講師

「どうすればいいと思う?」

生徒はしばらく考えました。

そして机の上にあるものを見ました。

教科書。

学校のプリント。

自分のノート。

そしてAIの画面。

🔴 学習者

「教科書で確認する?」

🔵 講師

「それも一つ。」

🔴 学習者

「先生に聞く。」

🔵 講師

「それもあるね。」

🔴 学習者

「じゃあ、AIが言ったことも確認しないとダメなんですね。」

🔵 講師

「そうだね。」

生徒は先ほど作った「AIを使うときの自分ルール」の下に、新しく一行を書き加えました。

⑥ AIの答えを全部正しいと思わず、大事なことは教科書や先生でも確認する

そして少し考えたあと、私にこう聞きました。

🔴 学習者

「先生、じゃあAIって、どこまで信用して使えばいいんですか?」

私は、その質問こそがAIを学習に使ううえで、とても大切な問いだと思いました。





「AIが言ったから正しい」ではなく、自分で確かめる

🔵 講師

「AIを全部信用するか、全部信用しないか、どっちかに決める必要はないよ。」

🔴 学習者

「どういうことですか?」

🔵 講師

「例えば、先生だって間違えることあるよ。」

🔴 学習者

「あるんですか?」

🔵 講師

「あるよ。」

🔴 学習者

「先生でも?」

🔵 講師

「先生でも。」

生徒は少し笑いました。

🔵 講師

「大切なのは、『誰が言ったか』だけで正しいと決めないこと。」

🔴 学習者

「じゃあ?」

🔵 講師

「自分でも確かめること。」


私は、机の上にある教科書を指しました。

🔵 講師

「学校の勉強なら、まず何を基準にすればいい?」

🔴 学習者

「教科書?」

🔵 講師

「そうだね。学校のプリントや授業ノートもある。」

🔴 学習者

「問題集の解説も?」

🔵 講師

「もちろん。」

🔴 学習者

「それでも分からなかったら?」

🔵 講師

「先生や家庭教師に聞けばいい。」

生徒はうなずきました。


🔵 講師

「AIはすごく便利。でも、AIだけで全部終わらせる必要はないんだよ。」

🔴 学習者

「使い分ける?」

🔵 講師

「そう。」

私はノートに簡単に書きました。

AI → ヒント・説明・練習

教科書 → 学習内容の確認

学校の先生・家庭教師 → 分からない部分や学習方法の相談

🔵 講師

「そして、この真ん中にいるのは誰?」

🔴 学習者

「自分?」

🔵 講師

「そう。」


生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「じゃあ、AIに聞いて終わりじゃないんですね。」

🔵 講師

「それだとAIが勉強したことになるね。」

🔴 学習者

「ああ。」

🔵 講師

「AIから教えてもらったあと、誰ができるようになる必要がある?」

🔴 学習者

「自分。」

🔵 講師

「そこが一番大事。」


その日から、生徒はAIの回答を見るときにも少し慎重になりました。

何でも疑うという意味ではありません。

「AIが言ったから正しい」

と考えるのではなく、

「これは本当にそうなのかな?」

と一度考えるようになったのです。


次の授業。

生徒が数学のノートを見せました。

🔴 学習者

「先生、これ見てください。」

🔵 講師

「何?」

🔴 学習者

「AIに解き方を聞いたんですけど、問題集の答えと違いました。」

🔵 講師

「それでどうした?」

🔴 学習者

「もう一回自分で計算しました。」

🔵 講師

「結果は?」

🔴 学習者

「問題集の方になりました。」

🔵 講師

「それから?」

🔴 学習者

「AIに『この答えと違います』って聞きました。」

🔵 講師

「どうなった?」

🔴 学習者

「AIが計算を直しました。」

私はうなずきました。

🔵 講師

「前だったらどうしてた?」

🔴 学習者

「AIの答えそのまま書いてたと思います。」

🔵 講師

「今回は?」

🔴 学習者

「自分で変だと思った。」


これは、AIの使い方だけの変化ではありません。

自分で考える姿勢そのものが変わり始めている

ということです。

与えられた答えをそのまま受け取るのではなく、

「本当にそうだろうか」

と考える。

教科書を見る。

自分で計算する。

別の説明と比べる。

必要なら人に聞く。

AI時代の家庭学習では、この姿勢がますます重要になります。


ある日、生徒が英語の宿題をしていました。

英作文です。

🔴 学習者

「先生、これAIに作ってもらったらダメですよね?」

🔵 講師

「先生はどう思う?」

🔴 学習者

「宿題だから、自分で書いた方がいい。」

🔵 講師

「じゃあAIは使えない?」

🔴 学習者

「いや……。」

少し考えました。

🔴 学習者

「自分で書いてから見てもらう。」

🔵 講師

「いいね。」


生徒はまず自分で英文を書きました。

短い文章です。

文法にも少し間違いがあります。

以前なら、

「正しい英文に直してください」

と入力していたかもしれません。

今回は違いました。

「全文を書き直さず、間違っている可能性がある部分だけ教えてください。」

と入力しました。

AIから指摘が返ってきます。

生徒が教科書を開きました。

🔴 学習者

「あ、ここ三単現だ。」

自分で修正します。

もう一か所。

🔴 学習者

「これは何が違うんだろう。」

🔵 講師

「AIにもう一つヒントもらう?」

🔴 学習者

「はい。」

今度は、

「正解は書かず、どの文法を確認すればいいか教えてください。」

と入力しました。

ヒントを読んで、再び教科書を確認します。

🔴 学習者

「分かった。」

自分で英文を書き直しました。


私は聞きました。

🔵 講師

「これ、誰が書いた英文?」

🔴 学習者

「自分。」

🔵 講師

「AIは?」

🔴 学習者

「間違ってるところを教えてくれた。」

🔵 講師

「先生は?」

🔴 学習者

「AIの使い方を教えた。」

私は笑いました。

🔵 講師

「じゃあ一番勉強したのは?」

生徒も笑いました。

🔴 学習者

「自分。」


さらに数週間後。

生徒のAIの使い方は、もっと変わっていました。

ある日、家庭教師の授業が始まると、生徒が言いました。

🔴 学習者

「先生、今日質問三つあります。」

🔵 講師

「いいね。」

ノートを見ると、質問の横にそれぞれメモがあります。

一問目。

自分で解いた → 間違えた → AIにヒントをもらった → 解決

二問目。

AIに説明してもらった → 教科書で確認 → 解決

三問目。

AIに説明してもらった → まだ分からない → 先生に質問

私は三問目を指しました。

🔵 講師

「これだけ残ったんだ。」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「AIに何回聞いた?」

🔴 学習者

「二回。」

🔵 講師

「三回目は?」

🔴 学習者

「聞いても同じ感じだったので、先生に聞いた方がいいと思いました。」

🔵 講師

「いい判断だと思う。」


以前なら、分からない問題をすべて次の家庭教師の授業まで残していました。

あるいは、AIに答えを出してもらって終わっていました。

今は違います。

まず自分で考える。

AIを使ってみる。

教科書を確認する。

それで解決できれば自分で進む。

それでも分からないところだけ、家庭教師に持ってくる。

その結果、家庭教師の授業そのものも変わりました。

一からすべて説明する時間が減り、

本当に理解できていない部分に時間を使えるようになったのです。



「AIに勉強してもらうんじゃなくて、自分が勉強する」

ある日の授業。

私は生徒に、以前解けなかった数学の文章問題と似た問題を出しました。

🔵 講師

「覚えてる?」

🔴 学習者

「最初にAIに答え聞いてたやつ?」

🔵 講師

「そう。」

🔴 学習者

「覚えてます。」

🔵 講師

「今回はどうする?」

生徒は問題を読みました。

すぐにAIを開きません。

問題文に線を引きます。

分かっている数字を確認します。

式を書きます。

途中で少し手が止まりました。

私は何も言わず待ちました。

しばらくして、生徒が続きを書きました。

計算します。

🔴 学習者

「できました。」

🔵 講師

「AI使った?」

🔴 学習者

「使ってません。」

🔵 講師

「先生に聞いた?」

🔴 学習者

「聞いてません。」

🔵 講師

「じゃあ誰が解いた?」

🔴 学習者

「自分です。」


私は答えを確認しました。

正解です。

🔵 講師

「最初の頃だったら?」

🔴 学習者

「たぶん途中でAI開いてました。」

🔵 講師

「今はどうして開かなかった?」

生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「もう少し考えたらできそうだったから。」

その答えは、とても大切なものでした。

AIを使えること以上に、

「今は自分で考える場面なのか、AIの力を借りる場面なのか」

を判断できるようになってきたからです。


🔵 講師

「じゃあ、AIは使わない方がいい?」

🔴 学習者

「いや、使います。」

🔵 講師

「どんなとき?」

🔴 学習者

「自分で考えても分からないとき。」

🔵 講師

「他には?」

🔴 学習者

「説明が難しいとき。」

🔵 講師

「他には?」

🔴 学習者

「問題作ってほしいとき。」

🔵 講師

「答えが欲しいときは?」

生徒は笑いました。

🔴 学習者

「できれば最後。」


私はさらに聞きました。

🔵 講師

「じゃあ家庭教師は?」

🔴 学習者

「AIでも分からなかったところを聞く。」

🔵 講師

「それだけ?」

🔴 学習者

「勉強のやり方とか、何をやった方がいいか相談する。」

🔵 講師

「教科書は?」

🔴 学習者

「AIの説明が合ってるか確認するときにも使う。」

🔵 講師

「じゃあ本人は?」

生徒が少し笑いました。

🔴 学習者

「一番最初に考える人。」

私はうなずきました。


その日の授業の最後に、生徒は以前作った「AIを使うときの自分ルール」を見直しました。

そして、少し書き換えました。

AIを使った家庭学習の自分ルール

① まず自分で問題を考える

② 分からない場所を自分で探す

③ すぐ答えを聞かず、まずヒントをもらう

④ AIの説明を読んだら、自分の言葉で確認する

⑤ 最後はAIなしでもう一度解く

⑥ 大事な内容は教科書や学校の教材でも確認する

⑦ AIでも分からなければ、先生や家庭教師に質問する

書き終えると、生徒が言いました。

🔴 学習者

「最初より増えましたね。」

🔵 講師

「使ってみたから分かったことが増えたんだよ。」

🔴 学習者

「最初は、AIって答えを聞くものだと思ってました。」

🔵 講師

「今は?」

少し考えてから答えました。

🔴 学習者

「自分で勉強するのを手伝ってもらうもの。」

🔵 講師

「それが一番近いと思う。」


さらに生徒は、こんなことを言いました。

🔴 学習者

「AI使うと勉強が楽になると思ってました。」

🔵 講師

「実際は?」

🔴 学習者

「前より考えてるかも。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「何て聞けばいいか考えるから。」

確かにそうです。

「答えを教えて」

だけなら簡単です。

しかし、

「自分はどこまで分かっているのか」

「どこから分からないのか」

「どんなヒントが必要なのか」

「AIの説明は本当に正しいのか」

「次に自分で何を確認すればいいのか」

と考えながら使えば、AIとの対話そのものが学習になります。


🔵 講師

「AIに何を聞くか考えるためには、まず何が必要?」

🔴 学習者

「自分がどこで分からないか分かること。」

🔵 講師

「そうだね。」

🔴 学習者

「全部分かりません、じゃダメ?」

🔵 講師

「最初はそれでもいい。でも、そこから『どこが分からないんだろう』って探せると強いね。」

生徒はうなずきました。


授業が終わり、教材を片付けているときでした。

生徒がふと、こんなことを言いました。

🔴 学習者

「先生。」

🔵 講師

「何?」

🔴 学習者

「AIに勉強してもらっても意味ないんですね。」

私は少し笑いました。

🔵 講師

「どういうこと?」

🔴 学習者

「AIに問題解いてもらって、AIに英作文作ってもらって、それを写しても、自分はできるようにならない。」

🔵 講師

「そうだね。」

🔴 学習者

「AIに勉強してもらうんじゃなくて、自分が勉強するためにAIを使う。」

私は大きくうなずきました。

その違いに本人が気付いたことこそ、AIを家庭学習に取り入れるうえで最も大切な変化の一つでした。


おわりに

AIを家庭学習に使うとき、

「AIを使っていいのか、悪いのか」

という二択で考える必要はありません。

大切なのは、

「AIを何のために使うのか」

です。

答えを出してもらうためだけに使えば、自分で考える機会が減ることがあります。

しかし、

分からないところを整理する。

ヒントをもらう。

難しい説明を簡単にしてもらう。

練習問題を作ってもらう。

自分の答えを確認する。

理解できたか確かめる。

こうした使い方なら、AIは家庭学習を支える便利な道具になります。

今回の生徒も、最初は、

分からない → AIに聞く → 答えを書く

という使い方でした。

それが少しずつ、

自分で考える

↓

どこが分からないか確認する

↓

必要ならAIにヒントをもらう

↓

もう一度自分で考える

↓

教科書などでも確認する

↓

それでも分からなければ家庭教師に聞く

↓

最後は自分でもう一度解く

という流れへ変わっていきました。

この違いは大きなものです。

AIが問題を解けることと、本人が問題を解けることは同じではありません。

AIが分かりやすく説明できることと、本人が理解できたことも同じではありません。

AIが立派な文章を書けることと、本人の文章力が伸びたことも同じではありません。

だからこそ、最後には必ず、

「自分でできるか」

を確認する必要があります。

そして、AIを使うようになっても、教科書や学校の先生、家庭教師が不要になるわけではありません。

AIにはAIの役割があります。

教科書には教科書の役割があります。

学校の先生には学校の先生の役割があります。

家庭教師には家庭教師の役割があります。

それぞれを組み合わせればいいのです。

AIなら、家庭学習中でもその場で質問できます。

家庭教師なら、生徒のこれまでの学習状況を見ながら、

「今は何を優先すべきか」

「どこでつまずいているのか」

「この勉強方法でよいのか」

を一緒に考えられます。

そして何より重要なのは、その中心に本人がいることです。

AIに全部任せない。

家庭教師にも全部任せない。

保護者にも全部決めてもらわない。

まず自分で考える。

必要なところで道具や人の力を借りる。

そして、最後は自分でできる状態を目指す。

これからAIは、今以上に身近なものになっていくでしょう。

だからこそ、

「AIを使えること」だけではなく、「AIに何を任せ、何を自分で考えるのかを判断できること」

が重要になります。

答えが簡単に手に入る時代だからこそ、

「なぜ?」

「本当に?」

「自分ならどう考える?」

と問い直す力が必要です。

AIは、勉強する本人の代わりではありません。

本人がより深く考え、より効率よく学び、自分でできることを増やすための道具です。

「AIに勉強してもらう」のではなく、

「自分が勉強するためにAIを使う」。

この考え方を身につけることが、これからの家庭学習では大切になっていくのです。



理論編はこちらから

⑱ AIを活用した新しい家庭学習(理論編)

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