はじめに
先生が来たときだけ勉強すればいい・・・そういうわけではないです。
先生が来てる時に勉強してるから・・・。
それだけではちょっと成果が出にくいよ・・・。
そうなんですか?
ちょっと考え方を変えていきましょうか♪
はじめに

「家庭教師をつければ、成績は上がりますか?」
保護者の方から、このような質問を受けることがあります。
もちろん、家庭教師をつけることで、分からない問題を質問できるようになります。
苦手なところを個別に教えてもらうこともできます。
学校や塾とは違い、その子の理解度に合わせて進められることも家庭教師の大きな特徴です。
しかし、家庭教師が週に一度来るだけで、自動的に成績が上がるわけではありません。
例えば、週1回120分の家庭教師だったとします。
その2時間だけ勉強して、残りの日はほとんど何もしない。
家庭教師が来たら、先生が問題を解く。
生徒は説明を聞く。
「分かった」と言って授業を終える。
そして一週間後には、また同じところが分からなくなっている。
これでは、せっかく家庭教師をつけても、その力を十分に生かすことができません。
家庭教師を最大限活用するためには、
「先生が来ている時間」だけではなく、「先生がいない時間」をどう変えるか
という視点が必要です。
今回は、最初は「先生が来たときだけ勉強すればいい」と考えていた生徒が、家庭教師との付き合い方を少しずつ変えながら、自分で勉強を進められるようになっていく様子をご紹介します。
「先生が来るまで待ってました」
家庭教師を始めて間もない頃。
その日の授業で、私は前回出した数学の課題を確認しました。
🔵 講師
「先週の続き、どうだった?」
生徒は少し気まずそうな表情をしました。
🔴 学習者
「途中までです。」
🔵 講師
「どこまで?」
生徒がワークを開きます。
全部で10問出していたうち、解いてあるのは3問でした。
🔵 講師
「ここで止まってるね。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「何かあった?」
🔴 学習者
「4問目が分からなかったので。」
🔵 講師
「それで?」
🔴 学習者
「先生が来るまで待ってました。」
🔵 講師
「5問目は?」
🔴 学習者
「やってません。」
🔵 講師
「6問目は?」
🔴 学習者
「やってません。」
私は少し考えてから聞きました。
🔵 講師
「4問目が分からなかったら、5問目もできない?」
生徒は5問目を見ました。
🔴 学習者
「これはできるかもしれません。」
🔵 講師
「6問目は?」
🔴 学習者
「これも計算だからできます。」
🔵 講師
「じゃあ、4問目で止まらなくてもよかったね。」
🔴 学習者
「そうですね。」
私は4問目の横に大きく「?」を書きました。
🔴 学習者
「何ですか、それ。」
🔵 講師
「先生に聞く問題の印。」
🔴 学習者
「分からなかったら付けるんですか?」
🔵 講師
「そう。」
🔴 学習者
「それで飛ばす?」
🔵 講師
「少し考えても分からなければね。」
🔴 学習者
「飛ばしていいんですか?」
🔵 講師
「一問分からないからって、一週間全部止まる方がもったいないでしょう。」
生徒は笑いました。
🔴 学習者
「確かに。」
私はワークを指しました。
🔵 講師
「じゃあ4問目は今日一緒にやろう。」
問題は文章題でした。
私はすぐに解き方を説明せず、生徒に聞きました。
🔵 講師
「どこまで分かった?」
🔴 学習者
「問題文は読みました。」
🔵 講師
「何を求める問題?」
🔴 学習者
「速さです。」
🔵 講師
「じゃあ、何が分からなかった?」
🔴 学習者
「式の作り方です。」
🔵 講師
「そこまで分かってたんだ。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「じゃあ先生に『分かりません』だけじゃなくて、今みたいに言えるとすごく助かる。」
🔴 学習者
「『式の作り方が分かりません』って?」
🔵 講師
「そう。」
私は必要な考え方を説明しました。
そのあと、すぐ次の問題へ進もうとはしませんでした。
🔵 講師
「じゃあ、もう一回自分でやってみよう。」
🔴 学習者
「今やった問題を?」
🔵 講師
「似た問題を。」
🔴 学習者
「先生が説明したから、もう分かりましたよ。」
🔵 講師
「本当に?」
🔴 学習者
「たぶん。」
🔵 講師
「じゃあ確認。」
生徒は類題を解き始めました。
ところが、途中で鉛筆が止まりました。
🔴 学習者
「あれ?」
🔵 講師
「どうした?」
🔴 学習者
「最初どうするんでしたっけ?」
私は笑いました。
🔵 講師
「さっき『分かりました』って言ってたよね。」
🔴 学習者
「分かったつもりでした。」
そこで、もう一度考え方を確認しました。
今度は私が全部説明するのではなく、生徒自身に言葉にしてもらいます。
🔵 講師
「まず何を見る?」
🔴 学習者
「何を求めるか。」
🔵 講師
「次は?」
🔴 学習者
「分かっている数字を確認する。」
🔵 講師
「それから?」
🔴 学習者
「使える式を考える。」
🔵 講師
「じゃあやってみよう。」
今度は最後まで解けました。
🔴 学習者
「できました。」
🔵 講師
「これなら明日一人でもできそう?」
🔴 学習者
「さっきよりは。」
🔵 講師
「そこが大事。」
授業の終わりに、私は次の一週間の課題を決めようとしました。
🔵 講師
「じゃあ次回までに――」
そこで、いったん止めました。
🔴 学習者
「どうしたんですか?」
🔵 講師
「先生が全部決めるのやめようか。」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「次の一週間、数学どれくらいならできそう?」
生徒は困った表情になりました。
🔴 学習者
「分かりません。」
🔵 講師
「じゃあ選択肢。毎日10問と、週に3日5問ずつ。どっちならできそう?」
🔴 学習者
「毎日10問は絶対無理です。」
🔵 講師
「じゃあ?」
🔴 学習者
「週3日で5問。」
🔵 講師
「それでやってみよう。」
🔴 学習者
「分からない問題が出たら?」
🔵 講師
「どうするんだっけ?」
生徒は少し笑いました。
🔴 学習者
「?を付けて飛ばす。」
🔵 講師
「そして?」
🔴 学習者
「次に先生に聞く。」
「先生に聞きたいことを持ってくる」
一週間後。
生徒は数学のワークを開きました。
前回とは違い、かなり問題が進んでいます。
ところどころに「?」が付いていました。
🔵 講師
「お、進んでるね。」
🔴 学習者
「やりました。」
🔵 講師
「分からない問題は?」
🔴 学習者
「三つあります。」
🔵 講師
「じゃあ今日はそこからやろう。」
以前は私が、
「今日は何を教えようか」
と考えて授業を始めていました。
しかし今回は違います。
生徒自身が、
「ここを教えてほしい」
というものを持ってきています。
最初の問題を見ました。
🔵 講師
「これは何が分からなかった?」
🔴 学習者
「途中まではできました。」
生徒は自分の途中式を見せました。
🔴 学習者
「ここから、この数字をどう使うのか分からなくて。」
🔵 講師
「いい質問だね。」
🔴 学習者
「いい質問?」
🔵 講師
「どこで止まったか分かってるから、先生も教えやすい。」
私はその部分だけを説明しました。
すると、生徒はすぐに問題を解き直しました。
🔴 学習者
「あ、できた。」
🔵 講師
「最初から全部説明する必要なかったでしょう?」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「自分でできるところまでやってきたからだよ。」
二つ目の問題。
今度は、生徒が勘違いしている部分がありました。
🔵 講師
「これは、どこが分からなかった?」
🔴 学習者
「公式は分かるんですけど、答えが合いません。」
途中式を確認すると、計算の途中で符号を間違えています。
🔵 講師
「考え方は合ってるよ。」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「ここ。」
私は符号の部分を指しました。
🔴 学習者
「あ……。」
🔵 講師
「これ、分からなかった問題というより?」
🔴 学習者
「計算ミス。」
🔵 講師
「そうだね。」
生徒は「?」を消し、その横に「計算ミス」と書きました。
三つ目。
これは本当に理解できていない問題でした。
そこで時間をかけて説明します。
一度説明したあと、生徒に解いてもらいます。
間違えます。
もう一度確認します。
類題を解きます。
今度は正解しました。
🔵 講師
「今日一番時間を使ったのは?」
🔴 学習者
「三つ目。」
🔵 講師
「どうして?」
🔴 学習者
「ここが本当に分かってなかったから。」
🔵 講師
「そう。全部の問題に同じ時間を使わなくていいんだ。」
その日の授業では、学校の宿題を最初から最後まで一緒に解くことはしませんでした。
生徒が一人でできる問題は、自分で進めてもらいます。
家庭教師の時間は、
分からなかったところ。
間違いの原因が分からないところ。
勉強方法を変えた方がいいところ。
そこへ重点的に使います。
授業が終わる頃、生徒が言いました。
🔴 学習者
「今日、いつもよりいっぱい進んだ気がします。」
🔵 講師
「先生が解いた問題数は少ないけどね。」
🔴 学習者
「確かに。」
🔵 講師
「どうしてだと思う?」
🔴 学習者
「自分でできるところは、先にやったから。」
🔵 講師
「そういうこと。」
さらに次の週。
今度は、生徒が小テストを持ってきました。
🔴 学習者
「先生、これ見てください。」
点数は72点。
🔵 講師
「どうだった?」
🔴 学習者
「微妙です。」
🔵 講師
「じゃあ間違いを見よう。」
🔴 学習者
「全部解き直しますか?」
🔵 講師
「まず原因を分けよう。」
間違えた問題を一つずつ確認しました。
一問目。
計算ミス。
二問目。
公式を忘れていた。
三問目。
問題文の読み違い。
四問目。
そもそも解き方が分からない。
🔵 講師
「全部同じ間違い?」
🔴 学習者
「全然違います。」
🔵 講師
「じゃあ直し方も?」
🔴 学習者
「違う。」
計算ミスなら、途中式の書き方を見直す。
公式忘れなら、覚え直す。
問題文の読み違いなら、大事な条件に線を引く。
解き方が分からないなら、もう一度学習する。
🔴 学習者
「今まで全部『間違えた』で終わってました。」
🔵 講師
「間違いにも種類があるからね。」
🔴 学習者
「じゃあテストも持ってきた方がいいですか?」
🔵 講師
「ぜひ。」
🔴 学習者
「点数悪かったら嫌なんですけど。」
🔵 講師
「点数が悪いときほど、次に直せるところがたくさん見つかる。」
🔴 学習者
「そういう考え方なんですね。」
それから、生徒は家庭教師の授業がある日に持ってくるものが変わっていきました。
以前は、
教科書。
ワーク。
筆記用具。
それだけでした。
今は、
自分で解いて分からなかった問題。
間違えた小テスト。
学校でもらったプリント。
そして、ノートの端に書いた質問。
🔴 学習者
「先生、今日聞きたいこと四つあります。」
🔵 講師
「いいね。どれからやる?」
🔴 学習者
「数学から。」
🔵 講師
「先生が決めなくていい?」
🔴 学習者
「数学が一番分からないので。」
私は笑顔でうなずきました。
授業の最後には、次の一週間について話します。
🔵 講師
「来週までどうする?」
以前なら、
「先生、何やればいいですか?」
と聞いていました。
しかし今回は少し違いました。
🔴 学習者
「数学は今日やったところをもう一回やります。」
🔵 講師
「いつ?」
🔴 学習者
「明日。」
🔵 講師
「そのあとは?」
🔴 学習者
「学校のワークを進めます。」
🔵 講師
「英語は?」
🔴 学習者
「単語が弱いので、一日10個。」
🔵 講師
「できそう?」
🔴 学習者
「たぶん。」
🔵 講師
「多すぎたら?」
🔴 学習者
「5個にします。」
🔵 講師
「分からない問題が出たら?」
🔴 学習者
「印を付ける。」
🔵 講師
「そして次回?」
🔴 学習者
「先生に聞く。」
私は生徒が決めた内容をノートに書きました。
そして最後に、一つだけ質問しました。
🔵 講師
「先生が来るのは一週間のうち何日?」
🔴 学習者
「一日。」
🔵 講師
「じゃあ、残りは?」
🔴 学習者
「六日。」
🔵 講師
「その六日をどうするかが大事なんだ。」
生徒は少し考えてから言いました。
🔴 学習者
「先生が来る日に勉強するんじゃなくて、先生が来るまでに勉強するんですね。」
🔵 講師
「そうすると、先生が来た日にできることも増える。」
🔴 学習者
「分からないところをまとめて聞ける。」
🔵 講師
「それから?」
🔴 学習者
「次の一週間にやることを決める。」
🔵 講師
「いいね。」
家庭教師を始めたばかりの頃、生徒にとって授業は、
「先生に勉強を教えてもらう時間」
でした。
しかし少しずつ、
「自分で勉強して見つかった問題を解決し、次の一週間の勉強につなげる時間」
へと変わり始めていました。
そして、その変化が見え始めた頃、私は次の段階として、これまで私が決めていた「何を勉強するか」という部分まで、少しずつ生徒自身に任せてみることにしたのです。
「先生が決めなくても、自分で決められる」
次の授業。
私は、いつものように教材を開こうとはしませんでした。
🔴 学習者
「先生、今日は何やります?」
🔵 講師
「君は何をやった方がいいと思う?」
生徒は少し困った顔をしました。
🔴 学習者
「先生が決めるんじゃないんですか?」
🔵 講師
「今日は一回、自分で決めてみよう。」
🔴 学習者
「えー。」
🔵 講師
「今、一番困ってる教科は?」
🔴 学習者
「数学。」
🔵 講師
「その中で?」
生徒はワークを開きました。
何ページかめくります。
🔴 学習者
「この単元です。」
🔵 講師
「どうして?」
🔴 学習者
「学校の授業で分からなかったから。」
🔵 講師
「じゃあ、今日はそこから始めよう。」
生徒は少し驚いたような表情をしました。
🔴 学習者
「これでいいんですか?」
🔵 講師
「十分。」
私はさらに尋ねました。
🔵 講師
「この単元、全部分からない?」
🔴 学習者
「いや、基本はできます。」
🔵 講師
「じゃあどこ?」
生徒は自分で問題をいくつか確認しました。
🔴 学習者
「文章問題。」
🔵 講師
「それなら、今日は文章問題を中心にしよう。」
以前なら、私が教材を見て、
「今日はここをやろう」
と決めていました。
しかし今回は、生徒自身が、
「どの教科をやるか」
「どの単元をやるか」
「その中のどこが苦手か」
を考えています。
問題を一問解きました。
途中で手が止まります。
🔴 学習者
「ここから分かりません。」
🔵 講師
「じゃあ、どこまでは分かる?」
🔴 学習者
「式を作るところまでは。」
🔵 講師
「その先だけ見よう。」
必要なところだけ説明します。
その後、生徒は自分で続きを解きました。
🔴 学習者
「できました。」
🔵 講師
「じゃあ次は?」
私はあえて問題を選びませんでした。
生徒は自分で似た問題を探しました。
🔴 学習者
「これやります。」
🔵 講師
「どうしてそれ?」
🔴 学習者
「今のと似てるから。」
私は笑顔でうなずきました。
家庭教師を最大限活用するというのは、先生の説明をたくさん聞くことではありません。
自分に必要なことを考え、必要なところで助けを借りることです。
全部教えてもらうのではなく、
「ここまでは自分でやる」
「ここから分からない」
と言えるようになる。
そこまでいくと、家庭教師の授業の質が大きく変わります。
授業の最後。
私はいつものように一週間の予定を確認しました。
🔵 講師
「来週まで、何をする?」
🔴 学習者
「今日やった文章問題をもう一回。」
🔵 講師
「いつ?」
🔴 学習者
「明日。」
🔵 講師
「それだけ?」
生徒は少し考えました。
🔴 学習者
「学校のワークも進めます。」
🔵 講師
「どこまで?」
🔴 学習者
「このページまで。」
🔵 講師
「英語は?」
🔴 学習者
「単語テストがあるので、そっちもやります。」
🔵 講師
「先生が全部決めなくてもいけそう?」
🔴 学習者
「前よりは。」
🔵 講師
「じゃあ、できなかったら?」
🔴 学習者
「次の授業で相談します。」
私はうなずきました。
数週間後。
生徒が授業の最初に言いました。
🔴 学習者
「先生、今日は英語からやりたいです。」
🔵 講師
「どうして?」
🔴 学習者
「数学は今のところ大丈夫。でも英語の長文が全然読めません。」
🔵 講師
「いい判断だね。」
🔴 学習者
「あと、これ質問です。」
ノートには、英語長文の分からなかった部分に印が付いていました。
🔴 学習者
「この文だけ意味が分かりません。」
🔵 講師
「他は?」
🔴 学習者
「他はだいたい読めました。」
以前なら、
「長文が全部分かりません」
と言っていたかもしれません。
今では、分からない部分を切り分けて持ってこられるようになっています。
私はその一文だけを一緒に確認しました。
単語。
文法。
語順。
少し説明すると、生徒は自分で意味をつかみました。
🔴 学習者
「あ、分かりました。」
🔵 講師
「じゃあ本文全体、もう一回読んでみよう。」
🔴 学習者
「はい。」
しばらくして、生徒が言いました。
🔴 学習者
「前より読めます。」
🔵 講師
「先生が全部訳した?」
🔴 学習者
「してません。」
🔵 講師
「分からないところだけ手伝った。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「それが一番いい使い方の一つだよ。」
「先生に頼るんじゃなくて、先生を使うんですね」
その後、定期テストが終わりました。
生徒は答案を机の上に並べました。
🔵 講師
「今回はどうだった?」
🔴 学習者
「前より上がりました。」
🔵 講師
「どの教科?」
🔴 学習者
「数学と英語。」
🔵 講師
「何が良かったと思う?」
生徒は少し考えました。
🔴 学習者
「先生に聞きたいところを先に決めてたこと。」
🔵 講師
「他は?」
🔴 学習者
「教えてもらったあと、自分でもう一回やった。」
🔵 講師
「他は?」
🔴 学習者
「次の一週間に何やるか決めた。」
私はうなずきました。
🔵 講師
「家庭教師を始めた頃、先生が来るまでどうしてた?」
生徒は笑いました。
🔴 学習者
「分からない問題が出たら止まってました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「印を付けて、できるところは進めます。」
🔵 講師
「先生が来たら?」
🔴 学習者
「分からなかったところを聞きます。」
🔵 講師
「授業が終わったら?」
🔴 学習者
「自分でやります。」
🔵 講師
「かなり変わったね。」
🔴 学習者
「はい。」
生徒は少し考えてから、こう言いました。
🔴 学習者
「先生、家庭教師って、頼ればいいと思ってました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「頼るっていうより……。」
言葉を探しています。
🔴 学習者
「先生を使う?」
私は笑いました。
🔵 講師
「なかなか強い言い方だね。」
🔴 学習者
「でも、そういう感じです。」
🔵 講師
「どういう意味?」
🔴 学習者
「自分で勉強して、分からないところを先生に聞く。」
🔵 講師
「うん。」
🔴 学習者
「勉強のやり方が合ってるか見てもらう。」
🔵 講師
「うん。」
🔴 学習者
「次に何やるか一緒に考える。」
🔵 講師
「そうだね。」
🔴 学習者
「全部やってもらうんじゃなくて、自分でやるために先生を使う。」
私はその言葉に大きくうなずきました。
家庭教師という存在は、何でも代わりにやってくれる人ではありません。
生徒本人が前へ進むために、
必要なところを教える。
間違いを見つける。
学習方法を整える。
計画を一緒に考える。
困ったときに方向を修正する。
その役割があります。
そして、その力を一番生かせるのは、生徒自身が学習に参加したときです。
私は生徒に、最後に一つ質問しました。
🔵 講師
「もし先生が来ない一週間があったら、勉強できる?」
生徒はすぐには答えませんでした。
少し考えてから言いました。
🔴 学習者
「前よりはできます。」
🔵 講師
「何をする?」
🔴 学習者
「まず学校のワークをやる。」
🔵 講師
「分からなかったら?」
🔴 学習者
「教科書を見る。」
🔵 講師
「それでも分からなかったら?」
🔴 学習者
「印を付ける。」
🔵 講師
「先生が来たら?」
🔴 学習者
「聞く。」
🔵 講師
「次に何をやるかは?」
🔴 学習者
「自分で考える。」
私は笑顔でうなずきました。
授業の終了時間になりました。
生徒は教材を片付けながら言いました。
🔴 学習者
「先生。」
🔵 講師
「何?」
🔴 学習者
「最初は、先生がいるから勉強できるようになると思ってました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「先生に教えてもらって、一人でもできるようになるんですね。」
その言葉を聞いて、私は家庭教師として最も大切なところに、生徒自身が気付き始めたと感じました。
家庭教師を最大限活用するというのは、家庭教師への依存を大きくすることではありません。
むしろ反対です。
家庭教師との時間を使いながら、
一人でもできることを増やしていくこと
なのです。
おわりに
家庭教師を最大限活用するために必要なのは、先生にたくさん問題を解いてもらうことではありません。
家庭教師が来るまでに、自分でできるところまでやる。
分からなかった問題には印を付ける。
どこで止まったのかを確認する。
授業では、その部分を重点的に質問する。
説明を聞いたら、自分でもう一度解く。
そして授業の最後に、次の一週間で何をするかを考える。
この流れができると、家庭教師の授業は週に一度の2時間だけではなくなります。
その2時間で学んだことが、その後の6日間へ広がっていくからです。
最初は、何を勉強すればいいか家庭教師に決めてもらっても構いません。
分からない問題も、すぐに教えてもらっていい。
しかし、少しずつ、
「今日はこれをやりたい。」
「ここまでは自分で分かった。」
「ここから先を教えてほしい。」
「次の一週間はこれをやる。」
と言えるようになることが大切です。
そこまでいくと、家庭教師の役割は「勉強をさせる人」から、「自分で学ぶための伴走者」へと変わっていきます。
家庭教師をつける目的は、ずっと家庭教師がいなければ勉強できない状態をつくることではありません。
家庭教師の力を借りながら、自分で学べる力を育てることです。
先生がいる時間に分からないことを解決する。
先生がいない時間に自分で試す。
その結果をまた先生と振り返る。
うまくいかなければ修正する。
この繰り返しができたとき、家庭教師の一回の授業は、一週間全体の家庭学習を支える時間になります。
そしていつか、
「先生がいないから勉強できない」
ではなく、
「先生から教わったことを使えば、自分でも進められる」
と言えるようになる。
そこまで成長できたときこそ、家庭教師を本当の意味で最大限活用できていると言えるのです。
理論編はこちらから
⑮ 家庭教師を最大限活用する方法(理論編)
はじめに 家庭教師をつければ、それだけで成績が上がる。 もしそうであれば、家庭教師を始めた子は全員すぐに成績が伸びるはずです。 しかし、実際にはそう単純ではありません。 同じ週1回、同じ120分の指導を受けていても、その […]

