はじめに

何からやったらいいか・・・どうやったらいいか・・・分からないことだらけです・・・。

やろうとは思うんだけどね

まずはその気持ちがあれば大丈夫

気持ちくらいなら・・・。

じゃあ検討してみようか♪

はじめに

「家でも勉強した方がいいのは分かっています。でも、何をやったらいいのか分かりません」

家庭教師として生徒と話していると、このような言葉を聞くことがあります。

勉強する気持ちがまったくないわけではありません。

むしろ本人も、

「このままではいけない」

「次のテストではもう少し点数を上げたい」

と思っています。

ところが、いざ机に向かうと、

数学をやるべきなのか。

英語をやるべきなのか。

学校の宿題を優先するのか。

苦手なところを復習するのか。

何から手をつければいいのか分からない。

そして考えているうちに時間だけが過ぎてしまいます。

家庭学習を始めるために必要なのは、最初から完璧な学習計画をつくることではありません。

まず、「今日やること」を一つ決めることです。

今回は、家庭学習をほとんどしていなかった生徒が、家庭教師との対話を通して「自分にもできそうな家庭学習」を見つけ、実際に最初の一歩を踏み出していく様子をご紹介します。


勉強しようと思っても、何をしたらいいか分からない

その日の授業で、私は生徒に最近の家庭学習について聞いてみました。

🔵 講師

「学校の宿題以外で、家では何か勉強してる?」

生徒は少し考えてから答えました。

🔴 学習者

「ほとんどしてません。」

🔵 講師

「まったく?」

🔴 学習者

「テスト前ならやります。」

🔵 講師

「普段は?」

🔴 学習者

「やろうと思うことはあります。」

🔵 講師

「じゃあ、どうして始めないの?」

生徒は少し困った表情になりました。

🔴 学習者

「何をしたらいいか分からないんです。」

🔵 講師

「なるほど。」

🔴 学習者

「数学も苦手だし、英語もやらないといけないし、理科も覚えてないし……。」

🔵 講師

「やることが多すぎるんだ。」

🔴 学習者

「そうです。」

少し間を置いてから、生徒は続けました。

🔴 学習者

「机には座るんですよ。」

🔵 講師

「それはいいじゃない。」

🔴 学習者

「でも、座ってから『何しよう』ってなるんです。」

🔵 講師

「それで?」

🔴 学習者

「数学のワークを出して……。」

🔵 講師

「うん。」

🔴 学習者

「でも英語もやった方がいいかなって思って。」

🔵 講師

「うん。」

🔴 学習者

「英語を出したら、今度は学校の宿題を思い出して……。」

私は思わず笑いました。

🔵 講師

「教材を出してるだけで時間が過ぎそうだね。」

生徒も笑いました。

🔴 学習者

「そうなんです。」

🔵 講師

「最後はどうなる?」

🔴 学習者

「今日はいいか、ってなります。」


私はノートを一枚開きました。

そして真ん中に、

「今日やること」

と書きました。

🔵 講師

「じゃあ今日は、これを決めよう。」

🔴 学習者

「勉強するんじゃないんですか?」

🔵 講師

「もちろん勉強する。でも、その前に何をやるか決める。」

🔴 学習者

「どうやって決めるんですか?」

🔵 講師

「最近返ってきたテストある?」

生徒は学校のカバンから数学の小テストを出しました。

私は点数だけを見るのではなく、間違えた問題を一緒に確認しました。

🔵 講師

「ここはどうして間違えた?」

🔴 学習者

「計算ミスです。」

🔵 講師

「これは?」

🔴 学習者

「これは分かりませんでした。」

🔵 講師

「じゃあ、これは?」

🔴 学習者

「授業では分かったんですけど、テストになったら分からなくなりました。」

私はその問題に丸を付けました。

🔴 学習者

「なんでそこに丸を付けるんですか?」

🔵 講師

「今日やるから。」

🔴 学習者

「これだけですか?」

🔵 講師

「まず一問。」

生徒は驚いた顔をしました。

🔴 学習者

「一問だけやって意味あります?」


私は逆に質問しました。

🔵 講師

「じゃあ昨日は何問やった?」

🔴 学習者

「ゼロです。」

🔵 講師

「一昨日は?」

🔴 学習者

「……ゼロです。」

🔵 講師

「じゃあ一問やったら?」

生徒は少し笑いました。

🔴 学習者

「ゼロよりはいい。」

🔵 講師

「まずそれでいいんだよ。」

私は問題をノートに書き写しました。

🔵 講師

「じゃあ、やってみよう。」

生徒は問題を見ながら鉛筆を動かしました。

途中で止まります。

🔴 学習者

「やっぱり分かりません。」

🔵 講師

「どこまでなら分かる?」

🔴 学習者

「ここまでは分かります。」

🔵 講師

「じゃあ、そこまで書いてみよう。」

少しずつ進めます。

途中で以前習った公式を確認し、もう一度考えました。

数分後。

🔴 学習者

「あ、できた。」

🔵 講師

「答えを確認してみよう。」

正解でした。

生徒は少し驚いたように自分のノートを見ました。

🔴 学習者

「テストでは全然分からなかったのに。」

🔵 講師

「今はできたね。」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「これが家庭学習でやることの一つなんだ。」

🔴 学習者

「間違えた問題をやる?」

🔵 講師

「そう。学校でできなかったことを、家でできるようにする。」

生徒はノートを見ながらうなずきました。


じゃあ、今日から何をすればいいですか?

問題を解き終えると、生徒が尋ねました。

🔴 学習者

「先生、じゃあ家でもこういう問題をやればいいんですか?」

🔵 講師

「そうだね。」

🔴 学習者

「何問くらい?」

🔵 講師

「何問ならできそう?」

🔴 学習者

「10問くらい?」

🔵 講師

「本当に?」

🔴 学習者

「……たぶん。」

私は笑いました。

🔵 講師

「じゃあ聞き方を変えよう。疲れて帰ってきた日でもできるのは何問?」

生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「二問くらい。」

🔵 講師

「じゃあ二問にしよう。」

🔴 学習者

「少なくないですか?」

🔵 講師

「今までゼロの日が多かったんだよね。」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「だったら、最初の目標は10問できる日をつくることじゃない。」

🔴 学習者

「何ですか?」

🔵 講師

「二問でもいいから、家で勉強する日を増やすこと。」

生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「それならできそうです。」


私はノートに書きました。

数学 二問

その横に、

10分

と書きました。

🔴 学習者

「10分でいいんですか?」

🔵 講師

「まずはね。」

🔴 学習者

「10分経ったら終わっていい?」

🔵 講師

「いいよ。」

🔴 学習者

「問題の途中でも?」

🔵 講師

「途中なら、そこまでは終わらせようか。」

🔴 学習者

「じゃあ結局10分以上になるじゃないですか。」

二人で笑いました。

🔵 講師

「少しくらいはね。」


しかし、私はもう一つ確認しました。

🔵 講師

「いつやる?」

🔴 学習者

「家に帰ってから。」

🔵 講師

「何時?」

🔴 学習者

「それは分かりません。」

🔵 講師

「家に帰ったら最初に何する?」

🔴 学習者

「カバン置いて、着替えて……。」

🔵 講師

「そのあとは?」

🔴 学習者

「スマホ見ます。」

🔵 講師

「どれくらい?」

🔴 学習者

「ちょっとだけ。」

私は黙って生徒を見ました。

🔴 学習者

「……一時間くらい。」

🔵 講師

「ちょっと長いね。」

🔴 学習者

「気付いたらそれくらいになります。」

🔵 講師

「じゃあスマホ禁止にする?」

🔴 学習者

「それは嫌です。」

🔵 講師

「先生も禁止にしなくていいと思う。」

🔴 学習者

「いいんですか?」

🔵 講師

「スマホを見る前に10分だけ勉強するのはどう?」

生徒は少し嫌そうな顔をしました。

🔴 学習者

「帰ってすぐ?」

🔵 講師

「少し休んでもいいよ。」


二人で生活の流れを確認しました。

帰宅。

着替える。

おやつ。

20分休憩。

そのあと10分だけ家庭学習。

終わったら自由時間。

🔴 学習者

「これならできるかもしれません。」

🔵 講師

「じゃあ、それでやってみよう。」

🔴 学習者

「でも、数学以外はどうするんですか?」

🔵 講師

「最初から全部やろうとしない。」

🔴 学習者

「英語も苦手なんですけど。」

🔵 講師

「分かってる。でもまず数学を続けられるか試してみよう。」

🔴 学習者

「一教科だけでいいんですか?」

🔵 講師

「最初の一週間はね。」

私はノートに書きました。

最初の一週間

① 帰宅後、休憩する

② 数学を10分

③ 間違えた問題を二問

④ 終わったら自由時間

生徒はそれを見ながら言いました。

🔴 学習者

「これなら、そんなに大変じゃないですね。」

🔵 講師

「大変じゃないくらいから始めるんだよ。」


一週間後。

次の授業で、生徒に聞きました。

🔵 講師

「どうだった?」

生徒は少しうれしそうな顔をしました。

🔴 学習者

「五日やりました。」

🔵 講師

「一週間で五日?」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「すごいじゃない。」

🔴 学習者

「でも二日はやってません。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「一日は友達と遊んで帰るのが遅くなりました。もう一日は普通に忘れました。」

🔵 講師

「なるほど。」

生徒は少し申し訳なさそうに言いました。

🔴 学習者

「毎日はできませんでした。」

🔵 講師

「先生は最初から毎日完璧にやれとは言ってないよ。」

🔴 学習者

「でも、五日でいいんですか?」

🔵 講師

「今まで一週間で何日やってた?」

🔴 学習者

「ほぼゼロです。」

🔵 講師

「ゼロが五日になった。」

生徒は少し黙りました。

🔵 講師

「これは大きな変化だと思わない?」

🔴 学習者

「……確かに。」


私はさらに聞きました。

🔵 講師

「10分はどうだった?」

🔴 学習者

「短かったです。」

🔵 講師

「足りなかった?」

🔴 学習者

「最初の日は10分で終わりました。でも三日目くらいから、もう少しやりました。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「二問終わったら、もう一問できそうだったから。」

🔵 講師

「何分くらいやった?」

🔴 学習者

「15分とか20分です。」

🔵 講師

「先生が増やせって言った?」

🔴 学習者

「言ってません。」

🔵 講師

「自分で増やしたんだね。」

生徒は少し照れたように笑いました。


そこで私は聞きました。

🔵 講師

「やってみて何か変わった?」

生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「学校の数学が、ちょっと分かりやすかったです。」

🔵 講師

「どうしてだと思う?」

🔴 学習者

「前の日に分からなかった問題を家でやったから……かな。」

🔵 講師

「たぶんそれもあるね。」

🔴 学習者

「あと、先生。」

🔵 講師

「何?」

🔴 学習者

「前は家で勉強しようとすると、『何をやろう』ってずっと考えてたじゃないですか。」

🔵 講師

「うん。」

🔴 学習者

「今は数学の間違えた問題って決まってるから、すぐ始められます。」

🔵 講師

「そこ、大事だね。」

家庭学習が続かなかった原因は、必ずしも「やる気がなかったから」ではありませんでした。

何をするのか。

いつするのか。

どれくらいするのか。

それが決まっていなかったため、始めるまでの負担が大きかったのです。


私は次の一週間について尋ねました。

🔵 講師

「じゃあ来週はどうする?」

🔴 学習者

「数学を続けます。」

🔵 講師

「それだけ?」

生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「英語も少しやってみたいです。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「英単語の小テストがあるから。」

🔵 講師

「何個くらい?」

🔴 学習者

「20個。」

🔵 講師

「一日で20個?」

🔴 学習者

「いや……。」

生徒は自分で考え始めました。

🔴 学習者

「一日5個なら四日で20個。」

🔵 講師

「いいね。」

🔴 学習者

「数学を10分やって、そのあと英単語5個。」

🔵 講師

「続けられそう?」

🔴 学習者

「たぶんできます。」

私はあえて答えを言わず、もう一つ質問しました。

🔵 講師

「じゃあ、できなかった日はどうする?」

以前なら、

「分かりません」

と答えていたかもしれません。

しかし、生徒は少し考えてから言いました。

🔴 学習者

「次の日にまたやればいい。」

🔵 講師

「そうだね。」

🔴 学習者

「一日できなかっただけで、全部やめなくていいんですよね。」

🔵 講師

「もちろん。」

生徒は自分で新しい一週間の予定を書き始めました。

数学10分。

英単語5個。

できなかった日は、翌日に戻る。

最初の授業では、

「何を勉強したらいいか分からない」

と言っていた生徒が、今では自分で「次に何をするか」を考え始めています。

そして、この小さな家庭学習をさらに続けていくうちに、生徒は「勉強する時間」だけではなく、自分自身の苦手なところや、勉強の優先順位まで少しずつ考えられるようになっていきました。





自分で決めると、前より続けやすい

それから二週間ほど経ったころ、生徒の家庭学習には少しずつ変化が出てきました。

最初は、

「数学10分」

「英単語5個」

という、とても小さな内容でした。

しかし、続けるうちに、生徒自身がその日の学校の授業や宿題を見ながら、

「今日は数学より英語をやった方がいい」

「昨日間違えた問題を先にやろう」

と考えるようになっていました。

ある日の授業で、私はいつものように尋ねました。

🔵 講師

「今週はどうだった?」

🔴 学習者

「結構できました。」

🔵 講師

「何をやった?」

生徒はノートを開きました。

そこには、一週間分の記録が残っていました。

月曜日は数学。

火曜日は英語。

水曜日は数学と理科。

木曜日は英語。

金曜日は何も書かれていません。

土曜日には数学と社会。

日曜日には英単語。

🔵 講師

「最初よりずいぶん変わったね。」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「先生が全部決めたわけじゃないよね。」

🔴 学習者

「自分で決めました。」

🔵 講師

「どうやって?」

生徒は少し考えてから答えました。

🔴 学習者

「その日の学校で分からなかったところをやるようにしました。」

🔵 講師

「例えば?」

🔴 学習者

「火曜日は英語の授業で単語が全然分からなかったので、家でその単語をやりました。」

🔵 講師

「水曜日の理科は?」

🔴 学習者

「授業中に先生が『ここテストに出るよ』って言っていたので。」

私は笑いました。

🔵 講師

「ちゃんと聞いてるね。」

🔴 学習者

「前より授業で、『家で何をやればいいかな』って考えるようになりました。」

これは、家庭学習を始めたことで生まれた新しい変化でした。

家で何を学ぶかを考えるようになると、学校の授業の受け方まで少しずつ変わっていきます。

ただ板書を写すだけではなく、

「ここが分からなかった」

「ここはもう一度やった方がいい」

と考えながら授業を受けるようになるのです。


私は金曜日の空白を指しました。

🔵 講師

「ここは?」

🔴 学習者

「できませんでした。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「友達と遊んで帰るのが遅くなって、そのあと疲れて寝ちゃいました。」

🔵 講師

「じゃあ失敗?」

生徒は少し考えました。

以前なら、

「はい。」

と答えていたかもしれません。

しかし、その日は違いました。

🔴 学習者

「でも土曜日はやりました。」

🔵 講師

「そうだね。」

🔴 学習者

「だから、もう失敗って感じはしません。」

🔵 講師

「どうしてそう思えるようになった?」

🔴 学習者

「一日できなくても、次の日にやればいいって分かったからです。」

私は大きくうなずきました。

🔵 講師

「それはすごく大事な考え方だよ。」

家庭学習は、完璧に続けることが目的ではありません。

続かなかったときに戻れること。

計画どおりにいかなかったときに修正できること。

それも、自分で学ぶ力の一つです。


その日の授業では、次の定期テストに向けて学習内容を整理することにしました。

🔵 講師

「テストまであと三週間くらいだね。」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「何からやる?」

生徒はすぐには答えませんでした。

教科書やワークを見ながら考えています。

しばらくして言いました。

🔴 学習者

「数学からやります。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「最近の単元で分からないところがあるから。」

🔵 講師

「じゃあ、どこ?」

生徒はワークを開き、付箋を貼ったページを見せました。

🔴 学習者

「ここです。」

🔵 講師

「自分で印を付けたの?」

🔴 学習者

「分からなかったところに付けました。」

🔵 講師

「じゃあ先生が最初にやることを決めなくても大丈夫そうだね。」

生徒は少しうれしそうに笑いました。

🔴 学習者

「前よりは。」


しかし、実際に問題を解いてみると、すぐに手が止まりました。

🔴 学習者

「分からないです。」

🔵 講師

「じゃあどうする?」

🔴 学習者

「先生に聞く。」

🔵 講師

「その前に何かできない?」

生徒は少し考えました。

そして教科書を開き始めました。

🔴 学習者

「似た問題を探します。」

🔵 講師

「いいね。」

教科書を数ページ戻ると、同じ考え方を使う例題がありました。

生徒は例題を読み、自分の問題と見比べます。

🔴 学習者

「あ、これと同じかもしれません。」

🔵 講師

「やってみよう。」

再び問題を解き始めました。

数分後。

🔴 学習者

「できました。」

🔵 講師

「先生、何か教えた?」

🔴 学習者

「ほとんど教えてません。」

🔵 講師

「じゃあ誰が解いた?」

生徒は笑いました。

🔴 学習者

「僕です。」



家庭学習って、自分で勉強できるようになる練習なんですね

それから一か月後。

定期テストが返ってきました。

授業の日、生徒は答案を机の上に並べました。

すべての教科が大幅に上がったわけではありません。

数学は前回より上がりました。

英語も少し上がりました。

理科はほぼ同じ。

社会は少し下がっていました。

私は生徒に尋ねました。

🔵 講師

「今回の結果、どう思う?」

🔴 学習者

「もっと上がってほしかったです。」

🔵 講師

「そうだよね。」

🔴 学習者

「でも、前のテストよりは焦らなかったです。」

🔵 講師

「どうして?」

🔴 学習者

「前はテスト一週間前になってから、全部やろうとしていました。」

🔵 講師

「今回は?」

🔴 学習者

「普段から少しずつやっていたので、何が分からないか分かっていました。」

私はその言葉を聞いて、答案よりもノートの方に目を向けました。

そこには、テスト前の三週間に取り組んだ内容が書かれています。

数学。

英語。

理科。

それぞれについて、

「できる」

「少し不安」

「分からない」

と、自分なりに整理されていました。

🔵 講師

「これ、自分でやったんだよね。」

🔴 学習者

「はい。」

🔵 講師

「最初に会ったときは、家で勉強しようとしても何をするか分からなかった。」

🔴 学習者

「そうでした。」

🔵 講師

「今は?」

生徒は自分のノートを見ました。

🔴 学習者

「自分である程度決められます。」

🔵 講師

「かなり変わったと思わない?」

生徒は少し笑いました。

🔴 学習者

「変わったかもしれません。」


授業の後半、私は一つ質問しました。

🔵 講師

「家庭学習って、何のためにすると思う?」

生徒は少し考えました。

🔴 学習者

「テストの点数を上げるため。」

🔵 講師

「もちろんそれもある。」

🔴 学習者

「他にもあるんですか?」

🔵 講師

「今までの自分を考えてみて。」

生徒はノートを見ながら黙っています。

少しして答えました。

🔴 学習者

「自分で勉強できるようになるため……ですか?」

🔵 講師

「先生はそう思ってる。」

🔴 学習者

「最初は先生が全部決めてましたよね。」

🔵 講師

「うん。」

🔴 学習者

「数学二問とか、10分とか。」

🔵 講師

「そうだったね。」

🔴 学習者

「今は、自分で『今日は英語』とか決めるようになりました。」

🔵 講師

「うん。」

🔴 学習者

「分からない問題も、すぐ先生に聞かないで教科書を見るようになりました。」

私はうなずきました。

🔴 学習者

「じゃあ、家庭学習って、自分で勉強できるようになる練習なんですね。」

その言葉は、今回の家庭学習を通して生徒が自分自身で見つけた答えでした。


🔵 講師

「じゃあ先生がいなくても大丈夫?」

私は少し冗談っぽく聞きました。

🔴 学習者

「まだ無理です。」

二人で笑いました。

🔴 学習者

「でも、前よりはできると思います。」

🔵 講師

「それで十分。」

🔴 学習者

「分からなかったら、まず教科書を見ます。」

🔵 講師

「うん。」

🔴 学習者

「前に似た問題がないか探します。」

🔵 講師

「うん。」

🔴 学習者

「それでも無理なら先生に聞きます。」

🔵 講師

「いいね。」

家庭教師がすべてを教え続けることが目的ではありません。

一人で考えられるところを少しずつ増やす。

自分で調べられるところを増やす。

自分で学習内容を選べるようにする。

そして、本当に困ったところを質問できるようにする。

この積み重ねによって、家庭学習は少しずつ「自分の勉強」になっていきます。


授業の最後、生徒は次の一週間の予定を書いていました。

私はあえて口を出さずに見ていました。

月曜日は数学。

火曜日は英単語。

水曜日は数学の間違い直し。

木曜日は理科。

金曜日は予備日。

書き終えると、生徒がこちらを見ました。

🔴 学習者

「先生、これでどうですか?」

🔵 講師

「自分ではどう思う?」

以前なら、

「先生が決めてください。」

と言っていたかもしれません。

しかし、生徒は自分の予定をもう一度見ました。

🔴 学習者

「これならできると思います。」

🔵 講師

「じゃあ、それでやってみよう。」

🔴 学習者

「はい。」

その返事には、最初に家庭学習を始めたときとは違う、自分で決めたことに取り組もうとする力が感じられました。


おわりに

家庭学習を始めるとき、最初から立派な計画をつくる必要はありません。

今回の生徒も、最初は、

「何を勉強すればいいか分からない」

という状態でした。

そこから始めたのは、数学二問、10分だけです。

何をするか決める。

いつするか決める。

できたら続ける。

できない日があっても戻る。

少し慣れてきたら、自分で内容を考える。

分からない問題があれば、まず自分で調べてみる。

こうした小さな経験を重ねることで、家庭学習は「先生や親にやらされる勉強」から、「自分で進める勉強」へと変わっていきます。

もちろん、家庭学習を始めたからといって、すぐにすべてのテストで大幅に点数が上がるわけではありません。

しかし、家庭学習を続けていると、

「自分は何が分からないのか」

「何を優先して勉強すればいいのか」

「困ったときにどうすればいいのか」

が少しずつ分かるようになります。

これは、点数と同じくらい大切な変化です。

家庭学習の目的は、ただ勉強時間を増やすことではありません。

自分で学び、自分でできることを増やしていく力を育てることです。

そのための最初の一歩は、決して大きなものでなくて構いません。

今日、教材を開く。

一問だけ解く。

10分だけ取り組む。

そして明日、また続けてみる。

家庭学習は、その小さな積み重ねから始まります。

「もっと準備ができてから」と考える必要はありません。

今日できる小さな一歩を実際に始めること。

そこから、子どもの学び方は少しずつ変わっていくのです。



理論編はこちらから

⑨ 今日から始める家庭学習(理論編)

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