はじめに
やる気に頼らなくても動ける、小さな仕組みをつくることが重要です
やる気でない・・・。
普通はそんなもん♪
じゃあどうすればいい?
じゃあ検討してみようか♪
はじめに

「やればできるんです。でも、なかなか続かないんです。」
家庭教師として生徒や保護者と話していると、このような悩みを聞くことがあります。
テスト前になると頑張れる。
宿題も、提出期限が迫れば何とか終わらせられる。
ところが、普段の家庭学習は続かない。
本人も「勉強しなければ」と思っているのに、気付けばスマートフォンを見たり、動画を見たりして時間が過ぎてしまう。
そして夜になって、
「今日もできなかった。」
と後悔する。
こうした状態にある子に必要なのは、「もっとやる気を出すこと」とは限りません。
むしろ、やる気に頼らなくても動ける、小さな仕組みをつくることが重要です。
今回は、「毎日勉強するなんて無理」と話していた生徒が、一日わずかな時間から家庭学習を始め、「続ける」という経験によって少しずつ変わっていく様子をご紹介します。
毎日なんて絶対に無理です
その日の授業で、私は生徒の一週間の学習状況を確認していました。
🔵 講師
「先週は家でどれくらい勉強した?」
🔴 学習者
「えっと……。」
生徒は少し言いにくそうにノートをめくりました。
🔴 学習者
「学校の宿題はやりました。」
🔵 講師
「宿題以外は?」
🔴 学習者
「ほとんどやっていません。」
🔵 講師
「テスト前はどう?」
🔴 学習者
「テスト前ならやります。」
🔵 講師
「どれくらい?」
🔴 学習者
「二時間とか三時間とか。」
私は少し考えてから尋ねました。
🔵 講師
「じゃあ、普段も毎日二時間やってみる?」
生徒はすぐに首を振りました。
🔴 学習者
「絶対無理です。」
あまりにも即答だったので、私は思わず笑いました。
🔵 講師
「そんなに無理?」
🔴 学習者
「学校から帰ったら疲れているし、ゲームもしたいし、動画も見たいです。」
🔵 講師
「なるほど。」
🔴 学習者
「それに、毎日二時間とか言われたら、たぶん三日くらいでやめます。」
🔵 講師
「自分のことをよく分かってるね。」
🔴 学習者
「前にもやったことがありますから。」
🔵 講師
「どんな計画だった?」
生徒は苦笑いしました。
🔴 学習者
「前のテストで点数が悪かったときに、『これから毎日三時間勉強する』って決めました。」
🔵 講師
「続いた?」
🔴 学習者
「二日です。」
二人で笑いました。
🔵 講師
「じゃあ、どうして続かなかったと思う?」
🔴 学習者
「やる気がなくなったからです。」
🔵 講師
「本当にそれだけかな。」
🔴 学習者
「違うんですか?」
私はノートに大きく、
「3時間」
と書きました。
その下に、
「10分」
と書きます。
🔵 講師
「どっちなら今日できそう?」
🔴 学習者
「10分なら……。」
🔵 講師
「できそう?」
🔴 学習者
「まあ、それくらいなら。」
🔵 講師
「じゃあ10分にしよう。」
生徒は驚いたような顔をしました。
🔴 学習者
「え、それだけですか?」
🔵 講師
「それだけ。」
🔴 学習者
「10分勉強したくらいで成績って上がるんですか?」
🔵 講師
「いい質問だね。」
私は少し考えてから答えました。
🔵 講師
「先生は今、10分で成績を上げようとは思っていない。」
🔴 学習者
「じゃあ、何のためですか?」
🔵 講師
「毎日勉強できる人になるため。」
生徒は少し不思議そうな顔をしました。
🔴 学習者
「勉強できる人になる?」
🔵 講師
「今の君は、テスト前なら三時間できる。でも普段はほとんどやらない。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「だったら最初に変えるのは、勉強時間じゃない。」
🔴 学習者
「何を変えるんですか?」
🔵 講師
「勉強する日を増やす。」
私はカレンダーを取り出しました。
🔵 講師
「例えば一週間に一回三時間勉強するとする。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「でも別の人は、毎日30分ずつ勉強する。」
生徒は少し考えました。
🔴 学習者
「毎日の方が多いですね。」
🔵 講師
「そう。それだけじゃない。毎日やっていると、学校で習ったことを忘れる前に復習できる。」
🔴 学習者
「なるほど。」
🔵 講師
「だから、まず10分でいい。」
🔴 学習者
「本当に10分でやめてもいいんですか?」
🔵 講師
「いいよ。」
🔴 学習者
「先生、あとで『やっぱり一時間』とか言わないですよね?」
🔵 講師
「言わない。」
生徒は少し笑いました。
🔴 学習者
「じゃあ、それならできるかもしれません。」
何時にやるか決めてみよう
しかし、ここで終わってしまうと、
「一日10分勉強する」
という目標だけが残ります。
これだけでは、まだ十分ではありません。
私は生徒に尋ねました。
🔵 講師
「じゃあ、その10分をいつやる?」
🔴 学習者
「時間があるとき。」
🔵 講師
「それ、一番危ない答えだね。」
🔴 学習者
「どうしてですか?」
🔵 講師
「『時間があるとき』って、いつ?」
生徒は考えました。
🔴 学習者
「……分かりません。」
🔵 講師
「そうでしょう。」
私は笑いながら続けました。
🔵 講師
「時間があるときにやろうと思っていると、気付いたら夜になる。」
🔴 学習者
「それ、よくあります。」
🔵 講師
「じゃあ、生活の中に入れてしまおう。」
私は普段の帰宅後の生活を聞いてみました。
🔵 講師
「学校から帰るのは?」
🔴 学習者
「だいたい5時くらいです。」
🔵 講師
「帰ったら?」
🔴 学習者
「ちょっと休みます。」
🔵 講師
「そのあとは?」
🔴 学習者
「ゲームしたり、動画見たり。」
🔵 講師
「夕食は?」
🔴 学習者
「7時くらいです。」
私は少し考えました。
🔵 講師
「ゲームを全部禁止するのはどう?」
🔴 学習者
「絶対嫌です。」
また即答でした。
🔵 講師
「じゃあ禁止しない。」
🔴 学習者
「いいんですか?」
🔵 講師
「勉強を続けるために、好きなことを全部やめる必要はないよ。」
🔴 学習者
「じゃあ、いつ勉強します?」
🔵 講師
「夕食の前はどう?」
🔴 学習者
「6時50分から10分?」
🔵 講師
「そう。」
🔴 学習者
「それなら、ご飯になったら終われますね。」
🔵 講師
「それ、いいでしょう。」
生徒は少し笑いました。
🔴 学習者
「終わる時間が決まっているなら、できそうです。」
さらに私は尋ねました。
🔵 講師
「その10分で何をする?」
🔴 学習者
「勉強。」
🔵 講師
「それだと広すぎる。」
🔴 学習者
「じゃあ数学?」
🔵 講師
「もう少し具体的にしよう。」
生徒の学校の進度を確認しました。
数学ではちょうど新しい単元に入ったところでした。
🔵 講師
「学校でその日に習った数学の問題を二問だけ解くのはどう?」
🔴 学習者
「二問だけ?」
🔵 講師
「まずはね。」
🔴 学習者
「それなら10分もかからないかもしれません。」
🔵 講師
「早く終わったら終わっていい。」
🔴 学習者
「本当に?」
🔵 講師
「もちろん。もっとやりたければやってもいい。でも最低は二問。」
生徒はノートに書きました。
「18時50分」
「数学2問」
私はその横にもう一つ書き加えました。
「できたら○」
🔴 学習者
「丸?」
🔵 講師
「できた日はカレンダーに丸をつけよう。」
🔴 学習者
「小学生みたいですね。」
🔵 講師
「いいじゃない。できたかどうか一目で分かる。」
🔴 学習者
「まあ……やってみます。」
一週間後。
私はカレンダーを見せてもらいました。
月曜日、○。
火曜日、○。
水曜日、○。
木曜日には何もありません。
金曜日、○。
土曜日、○。
日曜日、○。
🔵 講師
「六日できたね。」
🔴 学習者
「木曜日だけ忘れました。」
少し残念そうに話します。
🔴 学習者
「やっぱり毎日は無理でした。」
私は首を振りました。
🔵 講師
「先生はそう思わない。」
🔴 学習者
「でも一日できてないですよ。」
🔵 講師
「今まで一週間で何日やっていた?」
🔴 学習者
「テスト前じゃなければ……ほとんどゼロです。」
🔵 講師
「それが六日になった。」
生徒はカレンダーを見ました。
🔵 講師
「これは失敗かな?」
🔴 学習者
「……違うかもしれません。」
🔵 講師
「習慣をつくるときに大切なのは、一日も休まないことじゃない。」
🔴 学習者
「じゃあ何ですか?」
🔵 講師
「休んでも戻ること。」
私は空白になっている木曜日を指しました。
🔵 講師
「木曜日はできなかった。でも金曜日は?」
🔴 学習者
「やりました。」
🔵 講師
「それでいい。」
生徒はしばらくカレンダーを見つめていました。
🔴 学習者
「先生、ちょっと不思議なことがありました。」
🔵 講師
「何?」
🔴 学習者
「最初は10分でも面倒だったんです。」
🔵 講師
「うん。」
🔴 学習者
「でも四日目くらいから、6時50分になると『そろそろやるか』って思うようになりました。」
🔵 講師
「誰かに言われた?」
🔴 学習者
「言われてません。」
🔵 講師
「それが習慣の始まりだよ。」
🔴 学習者
「これが?」
🔵 講師
「そう。最初は『やらなきゃ』だったものが、少しずつ『この時間になったらやる』に変わっていく。」
生徒は少しうれしそうにカレンダーを見ました。
🔴 学習者
「じゃあ、来週は全部丸にしたいです。」
🔵 講師
「全部丸じゃなくてもいいよ。」
🔴 学習者
「でも、やってみたいです。」
私は笑顔で答えました。
🔵 講師
「じゃあ挑戦してみよう。」
それからさらに二週間。
生徒の10分学習は、少しずつ形を変えていきました。
ある日は数学を二問。
ある日は学校で間違えた英単語を確認。
ある日は理科のワークを一ページ。
私は毎回細かく指示するのではなく、
🔵 講師
「今日は何をやった方がいいと思う?」
と聞くようにしました。
最初は、
🔴 学習者
「分かりません。」
と答えていた生徒も、少しずつ自分で考えるようになりました。
🔴 学習者
「明日、英単語の小テストがあるので、今日は英語にします。」
別の日には、
🔴 学習者
「数学で今日分からなかった問題があったので、それをやります。」
と言うようになりました。
勉強時間そのものは、まだ長くありません。
それでも、大きな変化が起きていました。
「勉強しなさい」と言われてから始めるのではなく、自分で「今日は何をするか」を考え始めたのです。
ある日の授業で、生徒が自分から言いました。
🔴 学習者
「先生、10分って短いですよね。」
🔵 講師
「最初に先生が10分って言ったときは?」
🔴 学習者
「それでも面倒だと思いました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「最近、10分だと途中で終わるんです。」
🔵 講師
「じゃあ、どうする?」
生徒は少し考えました。
🔴 学習者
「15分にしてみてもいいですか?」
私はすぐに答えました。
🔵 講師
「もちろん。」
🔴 学習者
「20分でもいけるかな……。」
🔵 講師
「最初から無理に増やさなくていいよ。」
🔴 学習者
「じゃあ15分にします。」
最初の授業で、
「毎日なんて絶対に無理です。」
と言っていた生徒が、自分から勉強時間を増やそうとしていました。
誰かに強制されたわけではありません。
「もっと勉強しなさい」と言われたからでもありません。
小さな目標を実際に続け、
「自分にもできる」
という経験を積み重ねた結果でした。
そして、この15分への変化をきっかけに、生徒の中では「勉強する時間」だけではなく、「勉強に対する考え方」そのものが少しずつ変わり始めていったのです。
やらないと、なんとなく落ち着かない
15分の家庭学習に変えてから、さらに数週間が過ぎました。
その日の授業で、私はいつものように生徒の学習記録を確認しました。
カレンダーには、ほとんど毎日のように丸が付いています。
ただ、以前と違うところがありました。
「15分」
と書かれている日だけではなく、
「20分」
「25分」
と書かれている日が増えていたのです。
🔵 講師
「時間、増えてるね。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「先生、増やせって言ったっけ?」
🔴 学習者
「言ってません。」
🔵 講師
「じゃあ、どうして?」
生徒は少し考えてから答えました。
🔴 学習者
「途中でやめるのが嫌になったんです。」
🔵 講師
「どういうこと?」
🔴 学習者
「例えば数学をやっていて、15分になったときに、あと一問で終わることがあるじゃないですか。」
🔵 講師
「あるね。」
🔴 学習者
「そこでやめるより、その一問までやった方が気持ちいいんです。」
私は笑顔でうなずきました。
最初は「10分で終われるから」という理由で始めた家庭学習が、いつの間にか「ここまでやりたい」という学習へ変わり始めていました。
🔵 講師
「じゃあ最近は、毎日勉強するのは大変じゃない?」
🔴 学習者
「前より全然大変じゃないです。」
🔵 講師
「最初は『毎日なんて絶対に無理』って言ってたよ。」
🔴 学習者
「言いましたね。」
少し恥ずかしそうに笑います。
🔵 講師
「今はどう?」
🔴 学習者
「逆に、やらない日の方が変な感じがします。」
🔵 講師
「変な感じ?」
🔴 学習者
「歯を磨かずに寝るみたいな感じです。」
🔵 講師
「それはもう、かなり習慣になってきたね。」
生徒は自分のカレンダーを見ながら、
🔴 学習者
「これが習慣なんですか?」
と尋ねました。
🔵 講師
「そう。『やらなきゃ』って毎回考えなくても、自然と始められるようになってきたでしょう?」
🔴 学習者
「確かに。」
しかし、学習習慣ができてくると、次の課題が見えてきます。
「毎日勉強する」だけでは、成績につながらない場合もあるからです。
私はある日の学習記録を指しました。
🔵 講師
「この日は25分やったんだね。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「何をやった?」
🔴 学習者
「数学のワークです。」
🔵 講師
「何ページ?」
🔴 学習者
「三ページ。」
🔵 講師
「間違えた問題は?」
🔴 学習者
「丸付けしました。」
🔵 講師
「そのあとどうした?」
生徒は黙りました。
🔴 学習者
「……そのままです。」
🔵 講師
「じゃあ今日は、そこを変えてみよう。」
私は、ワークの間違えた問題を一問選びました。
🔵 講師
「もう一回やってみて。」
🔴 学習者
「答え、見てもいいですか?」
🔵 講師
「まずは見ないでやってみよう。」
生徒は問題を解き始めました。
しかし、途中で手が止まります。
🔴 学習者
「分かりません。」
🔵 講師
「この問題、昨日も間違えたんだよね。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「昨日、答え合わせをしたときは?」
🔴 学習者
「解説を読んで、分かったと思いました。」
🔵 講師
「でも今日は?」
🔴 学習者
「できません。」
私はここで一つ伝えました。
🔵 講師
「勉強では、『分かった』と『できる』は別なんだ。」
🔴 学習者
「前にも似たこと言ってましたよね。」
🔵 講師
「覚えてた?」
🔴 学習者
「学校の授業の話をしたときです。」
🔵 講師
「そう。だから今度は、毎日の勉強の中でそれをやってみよう。」
私はノートに三つだけ書きました。
「①解く」
「②間違いを確認する」
「③もう一度解く」
🔵 講師
「これを毎日の勉強の基本にしてみよう。」
🔴 学習者
「三ページ進めなくてもいいんですか?」
🔵 講師
「一ページしか進まなくても、間違えた問題ができるようになったなら、その方がいい場合もある。」
🔴 学習者
「でもページ数が少ないと、勉強した感じがしません。」
🔵 講師
「じゃあ質問。」
私は昨日間違えた問題を指しました。
🔵 講師
「三ページ進んだけど、この問題は今日もできない。これはどう?」
🔴 学習者
「……あまり意味がないですね。」
🔵 講師
「反対に、一ページしか進まなくても、昨日できなかった三問が全部できるようになったら?」
🔴 学習者
「そっちの方がいい。」
🔵 講師
「そういうこと。」
生徒はノートの三つの手順を見つめました。
🔴 学習者
「じゃあ、毎日やるだけじゃダメなんですね。」
🔵 講師
「習慣ができたら、次は中身を良くしていけばいい。」
🔴 学習者
「最初からこれをやればよかったんじゃないですか?」
私は少し笑いました。
🔵 講師
「最初に全部やろうとしたら、どうなってたと思う?」
生徒も笑いました。
🔴 学習者
「たぶん二日でやめてました。」
僕、前より勉強できる人になっていますか?
それから一か月ほど経った頃、学校では定期テストが近づいていました。
以前の生徒なら、ここから突然勉強時間を増やしていた時期です。
しかし今回は少し違いました。
🔵 講師
「テストまであと二週間だね。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「そろそろ三時間勉強する?」
私は最初の授業を思い出しながら、冗談っぽく聞きました。
生徒は笑いました。
🔴 学習者
「もうやりませんよ、それ。」
🔵 講師
「どうする?」
生徒は自分のノートを開きました。
そこには、今回のテスト範囲が書かれていました。
数学。
英語。
理科。
社会。
国語。
そして、それぞれの横に印が付いています。
🔵 講師
「これは?」
🔴 学習者
「自分で分けてみました。」
🔵 講師
「どうやって?」
🔴 学習者
「できるところは○。ちょっと不安なのは△。分からないところは×です。」
私は少し驚きました。
🔵 講師
「自分で考えたの?」
🔴 学習者
「はい。全部最初からやると間に合わないので。」
最初の頃は、
「何を勉強すればいいか分からない。」
と言っていた生徒です。
それが今では、自分の理解度を確認し、何を優先するかまで考えるようになっていました。
🔵 講師
「じゃあ、今日は何をやる?」
🔴 学習者
「数学の△からやります。」
🔵 講師
「どうして?」
🔴 学習者
「×は先生と一緒にやった方がいいと思います。でも△なら、自分で復習すれば○にできそうだから。」
私はその言葉を聞いて、すぐに答えませんでした。
生徒が不思議そうにこちらを見ます。
🔴 学習者
「先生?」
🔵 講師
「いや、すごいなと思って。」
🔴 学習者
「何がですか?」
🔵 講師
「最初の頃、先生が『今日は何をやった方がいいと思う?』って聞いたら、何て答えてた?」
生徒は少し考えました。
🔴 学習者
「『分かりません』。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「……自分で決めてますね。」
🔵 講師
「それが大きな成長だよ。」
生徒は少し照れたように笑いました。
テストが終わり、結果が返ってきました。
すべての教科が一気に大幅上昇したわけではありません。
数学は前回より上がりました。
英語も少し上がりました。
理科はほぼ同じ。
国語は少し下がりました。
答案を見ながら、生徒は言いました。
🔴 学習者
「もっと上がると思ってました。」
少し残念そうでした。
私は尋ねました。
🔵 講師
「じゃあ今回の勉強は失敗だった?」
🔴 学習者
「うーん……。」
しばらく考えます。
🔴 学習者
「点数だけなら、もっと上げたかったです。」
🔵 講師
「うん。」
🔴 学習者
「でも、前のテストより楽でした。」
🔵 講師
「どういうこと?」
🔴 学習者
「前はテスト一週間前になると、『全然やってない』って焦ってたんです。」
🔵 講師
「今回は?」
🔴 学習者
「普段から少しやってたから、『全部やらなきゃ』ってならなかったです。」
🔵 講師
「それは大きいね。」
🔴 学習者
「それに、どこができないかも前より分かっていました。」
私はうなずきました。
点数はもちろん大切です。
しかし、今回生徒が手に入れたものは、点数だけでは測れないものでした。
授業の終わり、生徒が突然尋ねました。
🔴 学習者
「先生。」
🔵 講師
「何?」
🔴 学習者
「僕、前より勉強できる人になっていますか?」
少し意外な質問でした。
🔵 講師
「どうしてそう思ったの?」
🔴 学習者
「最初は、勉強できる人って頭がいい人だと思ってたんです。」
🔵 講師
「今は違う?」
🔴 学習者
「毎日ちゃんとやれる人も、勉強できる人なのかなって。」
私は笑顔で答えました。
🔵 講師
「先生もそう思うよ。」
🔴 学習者
「じゃあ、少しは近づいてますか?」
🔵 講師
「かなり変わったと思う。」
私は最初の頃のカレンダーを見せました。
ほとんど何も書かれていなかった一週間。
その隣には、丸が並んだ現在のカレンダーがあります。
🔵 講師
「最初は10分だった。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「それも毎日は無理だと思ってた。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「今は自分で時間を決めて、内容も考えて、間違い直しまでしている。」
生徒は二枚のカレンダーを見比べました。
🔴 学習者
「こうやって見ると、結構違いますね。」
🔵 講師
「でも、一日で変わったわけじゃないでしょう?」
🔴 学習者
「少しずつです。」
🔵 講師
「それが習慣の力なんだ。」
私は最後に尋ねました。
🔵 講師
「もし将来、何か資格を取りたいと思ったらどうする?」
🔴 学習者
「勉強します。」
🔵 講師
「難しい資格だったら?」
🔴 学習者
「少しずつやります。」
🔵 講師
「一日で全部覚えられなかったら?」
🔴 学習者
「次の日もやります。」
🔵 講師
「途中で一日できなかったら?」
生徒は笑いました。
🔴 学習者
「また次の日からやればいい。」
私はうなずきました。
数か月前なら、こんな答えは返ってこなかったでしょう。
学習習慣によって変わったのは、数学の問題数でも、テストの点数だけでもありません。
「できないことがあっても、少しずつ続ければいい。」
という考え方が、生徒の中に育ち始めていたのです。
おわりに
学習習慣は、一日で身につくものではありません。
最初から毎日何時間も勉強する必要もありません。
今回の生徒も、始まりはわずか10分でした。
数学を二問解く。
できたらカレンダーに丸をつける。
できない日があっても、翌日に戻る。
それだけの小さな取り組みから始まりました。
しかし、その10分を積み重ねることで、
「言われなければ勉強しない」
から、
「時間になったら自分から始める」
へ。
さらに、
「決められた問題をやる」
から、
「自分に必要な勉強を考える」
へと変わっていきました。
習慣の力は、一日の変化だけを見ていても分かりにくいものです。
今日10分勉強したからといって、明日のテストで突然20点上がるわけではありません。
けれど、一週間、一か月、半年と積み重ねていけば、「勉強すること」そのものへの抵抗が少しずつ小さくなります。
そして、自分で計画する力、間違いを直す力、できないことがあっても戻る力が育っていきます。
その力は、学校のテストだけに使うものではありません。
受験でも、資格取得でも、社会に出て新しいことを学ぶときでも役に立ちます。
未来は、ある一日の大きな努力だけで決まるものではありません。
今日の10分。
今日の一問。
今日の「もう一度やってみよう」。
その小さな積み重ねが、自分自身を少しずつ変えていきます。
そしていつか何かに挑戦したいと思ったとき、
「自分は、少しずつなら続けられる。」
そう思えることが、新しい一歩を踏み出す大きな力になるのです。
理論編はこちらから
⑧ 学習習慣が未来を変える(理論編)
はじめに 「うちの子は、やればできると思うんです。でも、なかなか勉強を始めないんです」 家庭教師として保護者の方とお話ししていると、このような相談を受けることがあります。 テスト前になれば勉強する。 宿題も、提出期限が近 […]


