- 1. はじめに
- 2. 同じ点数でも、つまずいている場所は違う
- 3. 「分からない」の一言にもいくつもの原因がある
- 4. 生徒のペースに合わせて「戻る」ことができる
- 5. 「できるところ」まで戻る意味
- 6. 同じ説明を繰り返すだけでは伸びない
- 7. 「できた瞬間」をその場で確認できる
- 8. 授業以外の時間を変えることが大切
- 9. 「何をすればいいか分からない」をなくす
- 10. 家庭教師は「勉強の交通整理」をする
- 11. 保護者との連携も大切な指導の一部
- 12. 点数より先に変わるものを見る
- 13. 家庭教師の目標は「教え続けること」ではない
- 14. 「分からない」ときの対処法を身につける
- 15. 家庭教師が成績を伸ばせる本当の理由
- 15.1.1. 実際の例はこちらから
はじめに

「家庭教師をつければ、本当に成績は上がるのでしょうか。」
家庭教師を検討している保護者の方であれば、一度は考えることではないでしょうか。
学校には先生がいます。
塾へ行けば、そこにも講師がいます。
参考書や問題集も数多くありますし、今ではインターネットを使えば、授業動画や学習教材を簡単に見つけることもできます。
それでも、家庭教師という学び方が必要とされるのはなぜなのでしょうか。
もちろん、「家庭教師をつければ必ず成績が上がる」と言うことはできません。
家庭教師が週に一度来るだけで、それまでの学習状況がすべて変わるわけではないからです。
しかし、家庭教師には、学校や集団授業とは異なる大きな特徴があります。
それは、目の前の一人の生徒だけを見ながら、その子に必要な学習を組み立てられることです。
家庭教師の本当の役割は、問題の答えを教えることだけではありません。
「なぜこの子は成績が伸びないのか」
「どこで学習が止まっているのか」
「何を変えれば、今より勉強しやすくなるのか」
そうしたことを一緒に探しながら、その子に合った「伸びる道筋」をつくっていくことにあります。
同じ点数でも、つまずいている場所は違う
例えば、数学のテストで50点だった二人の生徒がいたとします。
点数だけを見れば、二人の学力は同じくらいに見えるかもしれません。
しかし、答案を詳しく見ると、まったく違うことがあります。
一人は、基本問題はほとんど正解しているものの、文章問題になると手が止まっています。
もう一人は、解き方そのものは理解しているのに、計算ミスによって大量に点を失っています。
この二人に同じ勉強をさせても、同じようには伸びません。
前者であれば、問題文から必要な情報を読み取る練習が必要かもしれません。
後者であれば、新しい問題を大量に解くより、途中式の書き方や見直しの習慣を改善した方が効果的でしょう。
つまり、
「数学が苦手だから数学を勉強する」
だけでは、まだ対策として十分ではないのです。
必要なのは、
「数学の何が苦手なのか」
まで掘り下げることです。
家庭教師は、一対一で生徒の学習を見ることができます。
問題を解く速さ。
鉛筆が止まる場所。
途中式の書き方。
問題文の読み方。
間違えたあとの反応。
こうした細かな様子を観察していると、テストの点数だけでは分からない「つまずきの正体」が見えてくることがあります。
「分からない」の一言にもいくつもの原因がある
生徒から、
「分かりません。」
と言われることがあります。
ところが、この「分からない」は一種類ではありません。
そもそも公式を知らない。
公式は知っているけれど、どの場面で使うのか分からない。
問題文の意味が読み取れない。
途中までは分かるが、その先の考え方が分からない。
以前習った内容を忘れている。
あるいは、本当は少し分かっているのに、「間違えたくない」という気持ちが強くて答えられない。
表面上はすべて、
「分かりません。」
という同じ言葉になります。
しかし、原因が違えば、当然ながら教え方も変わります。
ここを見極めないまま説明を続けると、生徒は一時的に「分かった気」にはなっても、一人では解けるようにならないことがあります。
だから私は、すぐに答えを説明するのではなく、
「どこまでは分かる?」
「この問題を見たとき、最初に何を考えた?」
「この公式は覚えている?」
「前の問題との違いは何だろう?」
と確認することを大切にしています。
すると、「分からない」の中身が少しずつ見えてきます。
家庭教師が一対一で指導する意味は、まさにこうしたところにあります。
生徒のペースに合わせて「戻る」ことができる
学校の授業には進度があります。
今週は一次方程式、来週は連立方程式、その次は関数というように、年間の予定に沿って学習を進めなければなりません。
これは学校教育に必要な仕組みです。
しかし、生徒によっては、その進度より前の内容につまずきが残っていることがあります。
例えば、中学校の数学が苦手な原因を調べていくと、小学校で学習した分数や割合まで戻る必要があることがあります。
英語でも同じです。
現在完了が分からないと思っていた生徒が、実は一般動詞とbe動詞の違いから曖昧だったということもあります。
その場合、現在完了だけを何度説明しても、なかなか理解は安定しません。
土台となる部分が抜けているからです。
家庭教師であれば、必要に応じてそこまで戻ることができます。
中学二年生だから中学二年生の内容だけを教えるのではありません。
必要なら中学一年生へ戻る。
場合によっては小学校の内容まで戻る。
そして、理解できたら現在の学習内容へ戻ってくる。
これは遠回りに見えるかもしれません。
しかし、分からないまま先へ進み続けるより、結果的にはずっと早く理解できることがあります。
「できるところ」まで戻る意味
勉強が苦手になった生徒の中には、
「どうせ自分にはできない。」
という気持ちを持っている子もいます。
難しい問題ばかりを見せられ、何度も間違え続ければ、誰でも自信を失ってしまいます。
そんなとき、家庭教師はあえて簡単な問題まで戻ることがあります。
「これはできる?」
「できます。」
「じゃあ、これは?」
「これもできます。」
そこから少しずつ難易度を上げていきます。
すると、生徒自身が気付きます。
「全部分からないわけではなかった。」
と。
この感覚は、とても重要です。
勉強が苦手な子に必要なのは、いきなり難しい問題を解けるようにすることではありません。
まず、
「自分にもできるところがある」
と確認することです。
そこから一段ずつ階段を上がっていけばよいのです。
家庭教師は、その子が今どの段にいるのかを確認しながら、次に上がる一段を決めることができます。
同じ説明を繰り返すだけでは伸びない
生徒が理解できないとき、
「もう一度説明しよう。」
と考えるのは自然なことです。
しかし、同じ説明を同じ言葉で繰り返しても、理解できない場合があります。
一度目の説明で伝わらなかったのであれば、説明の方法そのものを変える必要があるからです。
図にしてみる。
具体的な数字に置き換えてみる。
身近な例に変えてみる。
問題を細かく分解する。
生徒自身に説明してもらう。
別の問題から考えてみる。
一人の生徒をじっくり見ているからこそ、
「この説明では伝わらないな。」
と感じた瞬間に、方法を変えることができます。
これは一対一指導の大きな強みです。
教える側が用意した説明に生徒を合わせるのではなく、目の前の生徒に合わせて説明を変えていくのです。
「できた瞬間」をその場で確認できる
一対一の指導では、生徒の小さな変化にも気付きやすくなります。
さっきまで手が止まっていた問題を、一人で最後まで解けた。
今まで書かなかった途中式を書くようになった。
問題文の大切なところに、自分から線を引いた。
間違えたあと、「もう一回やります」と言った。
こうした変化は、点数にはまだ表れないかもしれません。
しかし、成績が伸び始める前には、このような小さな変化がいくつも起きています。
その瞬間に、
「今の考え方、良かったよ。」
「前はここで止まっていたけれど、今日は自分で進めたね。」
と伝えることができます。
すると生徒自身も、自分の成長に気付きます。
成績が伸びない期間が続いている子ほど、「自分は何をやってもできない」と考えがちです。
だからこそ、できなかったことだけではなく、できるようになったことを具体的に見つけることが重要になります。
そして、その小さな成功体験を積み重ねていくと、
「もう一問やってみよう。」
「次は自分で解けるかもしれない。」
という気持ちが生まれてきます。
家庭教師が成績を伸ばすために見ているのは、テストの点数だけではありません。
点数として表れる前に起きている、小さな変化も見ています。
そして実は、こうした変化を授業の中だけで終わらせないことが、家庭教師の指導ではさらに重要になってきます。
週に一度、あるいは二度の授業でどれだけ理解できても、残りの日々の過ごし方が変わらなければ、学力はなかなか安定しません。
そこで必要になるのが、授業で見つけた「その子に合った学び方」を、毎日の家庭学習へつなげていくことなのです。
授業以外の時間を変えることが大切
家庭教師が生徒と一緒に勉強できる時間には限りがあります。
例えば、週に一回120分の指導を行ったとしても、一週間全体から見ればほんのわずかな時間です。
その120分だけ一生懸命勉強し、残りの六日間はほとんど何もしない。
これでは、なかなか大きな変化にはつながりません。
だからこそ家庭教師の指導では、授業そのものと同じくらい、
「次の授業までに、一人で何をするか」
が重要になります。
ただし、
「毎日二時間勉強しよう。」
「問題集を毎日10ページやろう。」
と一方的に決めればよいわけではありません。
勉強が苦手な子に、最初から大きな課題を与えてしまうと、続けられなくなることがあります。
大切なのは、その子が実際に続けられる量から始めることです。
最初は一日15分でも構いません。
数学の問題を三問だけでもいい。
英単語を10個だけでもいい。
まずは、
「これならできる。」
というところから始めます。
そして続けられるようになったら、少しずつ量や内容を調整していきます。
家庭教師は授業を教えるだけではなく、授業と授業の間にある家庭学習まで設計することで、学習全体を支えていくのです。
「何をすればいいか分からない」をなくす
家庭学習が続かない理由の一つに、
「何を勉強すればいいか分からない」
という問題があります。
保護者から、
「机には向かうのですが、何をしたらいいのか分からないようです。」
という相談を受けることがあります。
これは、やる気がないとは限りません。
勉強の優先順位が分からないのです。
例えば、机の上に、
学校の宿題。
数学の問題集。
英単語帳。
理科のワーク。
テスト直し。
これだけ並んでいたら、勉強が苦手な子ほど迷います。
「どれからやればいいんだろう。」
と考えているうちに時間が過ぎ、結局何もできなかったということもあります。
そこで家庭教師が、
「今週は数学のこのページを優先しよう。」
「英語は新しい単語より、まず前回間違えた20個を覚えよう。」
「理科はテスト前にまとめてやるのではなく、今日はこの単元だけ確認しよう。」
と整理します。
すると、家庭学習の入り口が明確になります。
子どもに必要なのは、必ずしも「もっと頑張ること」ではありません。
何を頑張ればよいのかを明確にすることが先なのです。
家庭教師は「勉強の交通整理」をする
私は家庭教師の役割の一つを、「勉強の交通整理」だと考えています。
成績が伸び悩んでいる生徒ほど、
「あれもやらなければ。」
「これもできていない。」
「テスト範囲も終わっていない。」
と、頭の中が混乱していることがあります。
その状態で、
「もっと勉強しなさい。」
と言われても、どこから手をつければいいのか分かりません。
そこで、
今すぐ必要なもの。
少し後でもよいもの。
すでにできているので時間を減らしてよいもの。
重点的に取り組むべきもの。
これらを一緒に整理します。
例えば、数学のテストが50点だったからといって、テスト範囲を最初から全部やり直す必要があるとは限りません。
答案を分析すると、
「基本問題はほぼ正解している」
「文章問題だけ大きく失点している」
ということがあります。
それなら、基本問題を何十問も繰り返すより、文章問題の読み取りに時間を使った方が効率的です。
限られた時間を、最も効果の高いところへ使う。
これも家庭教師だからこそできる個別指導の強みです。
保護者との連携も大切な指導の一部
家庭教師の場合、生徒だけではなく、保護者と話をする機会もあります。
ここにも大きな意味があります。
例えば授業では集中している生徒でも、保護者から、
「先生が来る日以外は、ほとんど勉強していません。」
と聞くことがあります。
逆に、授業中はあまり自信がなさそうに見える生徒でも、
「最近、自分から机に向かうようになりました。」
と家庭での変化を教えていただくこともあります。
授業だけを見ていては分からないことが、家庭にはたくさんあります。
家庭教師と保護者が情報を共有することで、
「今、何ができるようになっているのか。」
「どこで困っているのか。」
「家庭ではどのように声をかければよいのか。」
を一緒に考えることができます。
ただし、ここで大切なのは、家庭教師と保護者が一緒になって子どもを追い込まないことです。
「先生もこう言っているんだから、もっと勉強しなさい。」
となってしまえば、家庭教師の存在そのものがプレッシャーになる可能性があります。
必要なのは監視を強くすることではありません。
子どもが取り組みやすい環境を、大人が協力して整えることです。
点数より先に変わるものを見る
成績は、今日勉強したから明日すぐ上がるというものではありません。
しかし、点数が上がる前には、小さな変化が現れることがあります。
自分から質問するようになった。
間違えた問題を解き直すようになった。
途中式を書くようになった。
宿題を忘れる回数が減った。
分からない問題でも、すぐに諦めなくなった。
家庭学習を始める時間が少し早くなった。
こうした変化です。
保護者からすると、
「でも、まだテストの点数は上がっていません。」
と不安になることもあるでしょう。
その気持ちは自然です。
しかし、成績を長期的に伸ばすためには、こうした「点数になる前の変化」を大切にする必要があります。
例えば、間違えた問題を自分から解き直す習慣が身につけば、すぐには点数に表れなくても、数か月後には大きな差になります。
家庭教師は、その小さな変化を見つけ、
「ここが良くなった。」
「前とはここが違う。」
と本人や保護者に伝える役割も持っています。
子ども自身が、
「自分は少しずつ変わっている。」
と感じられることが、次の努力につながるからです。
家庭教師の目標は「教え続けること」ではない
家庭教師という仕事を考えたとき、少し矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、理想的な状態は、
家庭教師がいなくても自分で勉強できるようになること
です。
家庭教師が隣にいなければ問題を解けない。
宿題を出されなければ勉強できない。
何をするか毎回決めてもらわなければ動けない。
この状態のままでは、本当の意味で学ぶ力が身についたとは言えません。
最初は家庭教師が、
「今日はこれをやろう。」
と決めます。
次の段階では、
「今日は何をやった方がいいと思う?」
と生徒に聞きます。
さらに進めば、
「数学のこの単元が苦手だから、今日はここを復習したい。」
と本人が考えられるようになります。
この変化がとても大切です。
「教えてもらう勉強」から、
「自分で考えて進める勉強」へ。
家庭教師は、その移行を支える存在でもあります。
「分からない」ときの対処法を身につける
勉強では、これから先も必ず分からない問題に出会います。
中学校を卒業しても、高校へ進めば新しい内容が出てきます。
大学へ進んでも、資格試験に挑戦しても、仕事で新しいことを覚えるときでも同じです。
だから、「分からない問題をすべて教えてもらう」だけでは十分ではありません。
必要なのは、
分からなくなったときに、自分でどうすればよいかを知っていること
です。
前の単元へ戻る。
教科書を確認する。
似た問題を探す。
途中まで分かるところを書き出す。
間違えた理由を考える。
それでも分からなければ質問する。
こうした方法を身につければ、家庭教師が隣にいない時間でも学習を進められるようになります。
家庭教師の授業で育てたいのは、目の前の一問を解く力だけではありません。
**「次に分からない問題が出てきたとき、自分で前へ進める力」**なのです。
家庭教師が成績を伸ばせる本当の理由
家庭教師が成績を伸ばせる理由を、一言で説明することはできません。
一人ひとりのつまずきを見つけられる。
必要なところまで戻れる。
理解度に合わせて説明を変えられる。
小さな成長を見つけられる。
家庭学習の内容を整理できる。
保護者と連携できる。
そして最終的には、自分で学べる力を育てられる。
これらが組み合わさることで、少しずつ学習の流れそのものが変わっていきます。
だから家庭教師の役割は、
「分からない問題の答えを教えること」
だけではありません。
その子が今どこにいて、どこで止まり、次にどの一歩を踏み出せばよいのかを一緒に考えること。
そして、いつか自分の力でその一歩を選べるようにすることです。
成績が伸びるという結果は、その積み重ねの先にあります。
家庭教師が目指しているのは、家庭教師と一緒にいる時間だけ「できる子」にすることではありません。
授業が終わったあとも、自分で考え、自分で学び、自分で「できる」を増やしていける子に育てること。
その力が身につき始めたとき、子どもの学習は、誰かにやらされるものから、自分自身で前へ進めていくものへと少しずつ変わっていくのです。
実際の例はこちらから
⑦ 家庭教師が成績を伸ばせる理由(実践編)
はじめに 「先生、僕って数学が苦手なんですよね。」 家庭教師として生徒と向き合っていると、こうした言葉を聞くことがあります。 しかし、「数学が苦手」という言葉だけでは、本当の原因は分かりません。 計算が苦手なのか。 文章 […]


