はじめに
毎日こんなに勉強しているのに、どうして点数が上がらないんだろう・・・。
勉強はしてるんだけど・・・。
思ったような点数にならない・・・。
そう。どうしたらいいん?
ちょっと検討してみようか♪
はじめに

「毎日こんなに勉強しているのに、どうして点数が上がらないんだろう。」
家庭教師をしていると、このような悩みを打ち明けられることがあります。
勉強時間は決して短くありません。
それでも結果が出ないと、「もっと勉強しなければ」と考えてしまいます。
しかし、本当に必要なのは勉強時間を増やすことなのでしょうか。
私はこれまで、多くの生徒を指導する中で、「勉強時間は半分になったのに成績は上がった」というケースを何度も見てきました。
その違いを生んだのは、努力の量ではなく「勉強のコスパ」、つまり学習の質でした。
今回は、長時間勉強しても結果が出なかった生徒が、学習の進め方を見直すことで少しずつ成果を実感していくまでのお話です。
毎日三時間も勉強しています
その日の授業が始まると、生徒は少し疲れた表情で椅子に座りました。
🔵 講師
「今日は少し疲れているみたいだね。」
🔴 学習者
「昨日も三時間勉強していました。」
🔵 講師
「三時間も?」
🔴 学習者
「毎日そのくらいやっています。でも全然成績が上がりません。」
そう言って、生徒は机の上に何冊もの問題集を並べました。
数学、英語、理科、社会……。
どれも途中まで解かれていましたが、付箋や書き込みはほとんどありません。
🔵 講師
「この問題集は全部毎日やっているの?」
🔴 学習者
「はい。全部少しずつやっています。」
🔵 講師
「終わったあとに、間違えた問題は見直している?」
🔴 学習者
「次のページへ進みます。」
🔵 講師
「昨日間違えた問題を今日もう一度解くことは?」
🔴 学習者
「ほとんどありません。」
私は静かにうなずきました。
努力が足りないのではありません。
努力の向け方に改善できる点がありそうだと感じたのです。
私は机の上の問題集を一冊だけ手に取りました。
🔵 講師
「今日は全部やるのをやめてみよう。」
🔴 学習者
「えっ?」
🔵 講師
「この数学だけでいい。」
🔴 学習者
「でも、他の教科もやらないと不安です。」
🔵 講師
「その気持ちは分かるよ。でも今日は実験をしてみよう。」
生徒は少し不安そうな表情でしたが、うなずいてくれました。
一問を大切にする
私は昨日解いた問題集を開きました。
赤ペンで丸やバツが付いています。
🔵 講師
「この中で間違えた問題だけ選んでみよう。」
🔴 学習者
「これだけですか?」
🔵 講師
「うん。」
十問ほどの問題が残りました。
🔴 学習者
「でも、新しい問題をやった方が勉強した気になります。」
🔵 講師
「その気持ちはよく分かる。」
私は一問を指さしました。
🔵 講師
「じゃあ、この問題をもう一度解いてみよう。」
数分後、生徒はまた同じところで止まりました。
🔴 学習者
「あ……また同じ間違いをしました。」
🔵 講師
「そこなんだ。」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「もし昨日のまま終わっていたら、この間違いには気付かなかった。」
生徒は黙って問題を見つめています。
🔵 講師
「勉強って、新しい問題をたくさん解くことじゃない。」
🔴 学習者
「違うんですか?」
🔵 講師
「昨日できなかったことを今日できるようにすることなんだ。」
その言葉を聞いて、生徒はゆっくりとうなずきました。
私は続けて質問しました。
🔵 講師
「三時間勉強した日と、一時間だけ集中して勉強した日なら、どちらが力がつきそう?」
🔴 学習者
「今までは三時間だと思っていました。」
🔵 講師
「今は?」
生徒は少し考えながら答えました。
🔴 学習者
「一時間でも、間違えたところを全部理解できた方が意味があります。」
🔵 講師
「その通り。」
私は笑顔で続けました。
🔵 講師
「それが先生の考える『勉強のコスパ』なんだ。」
🔴 学習者
「時間じゃなくて、中身なんですね。」
🔵 講師
「そう。『今日は三時間やった』ではなく、『今日は昨日できなかった問題が三問できるようになった』という方が、ずっと価値がある。」
生徒は何度もうなずきながら、自分の問題集を見返していました。
今まで「終わらせること」が目的だった勉強が、「できるようになること」が目的へと少しずつ変わり始めていたのです。
勉強時間は減ったのに…
前回の授業から二週間後。
生徒は以前より明るい表情で部屋に入ってきました。
🔵 講師
「最近、勉強はどう?」
🔴 学習者
「先生に言われた通り、問題集を全部やるのはやめました。」
🔵 講師
「不安じゃなかった?」
🔴 学習者
「最初はすごく不安でした。」
少し笑いながら、生徒は続けました。
🔴 学習者
「でも、間違えた問題だけをもう一回やるようにしたら、前より覚えているんです。」
私は問題集を見せてもらいました。
以前は赤ペンで丸とバツが付いているだけでしたが、今は間違えた問題に付箋が貼られ、横には小さくメモが書き込まれています。
「公式を忘れた」
「符号ミス」
「問題文を読み違えた」
間違えた原因まで記録されていました。
🔵 講師
「これは自分で書いたの?」
🔴 学習者
「はい。同じミスをしないようにと思って。」
🔵 講師
「いい工夫だね。」
🔴 学習者
「先生、不思議なんです。」
🔵 講師
「何が?」
🔴 学習者
「勉強時間は一時間くらい減ったのに、前より内容を覚えています。」
私はうなずきました。
🔵 講師
「それが勉強のコスパなんだ。」
私は一枚のプリントを取り出しました。
以前にも解いたことがある問題です。
🔵 講師
「もう一度やってみよう。」
生徒は問題を読み始めました。
以前ならすぐに式を書き始めていましたが、今回は違います。
問題文に線を引き、条件を書き出し、使う公式を確認してから計算を始めました。
数分後、答えを書き終えた生徒が顔を上げます。
🔴 学習者
「できました。」
採点すると、すべて正解でした。
🔵 講師
「前より速くなったね。」
🔴 学習者
「前は焦って解いていました。でも今は、『急ぐより、一回で正しく解こう』って考えています。」
🔵 講師
「その考え方が、とても大切なんだ。」
やった時間ではなく、できるようになったこと
一か月後。
定期テストが返却されました。
生徒は少し照れくさそうに答案を差し出しました。
🔴 学習者
「先生、今回は数学が十八点上がりました。」
🔵 講師
「おめでとう。本当によく頑張ったね。」
🔴 学習者
「ありがとうございます。」
少し間を置いて、生徒が続けます。
🔴 学習者
「でも、一番うれしかったのは点数じゃありません。」
🔵 講師
「そうなの?」
🔴 学習者
「勉強が前より楽しくなりました。」
その言葉を聞いて、私は思わず笑顔になりました。
🔵 講師
「どうしてそう思えたんだろう?」
🔴 学習者
「前は毎日『あと何時間やらなきゃ』って考えていました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「今日は何ができるようになったかなって考えるようになりました。」
私は静かにうなずきました。
🔵 講師
「勉強の目的が変わったんだね。」
🔴 学習者
「はい。長く机に座ることが目的じゃなくなりました。」
少し笑ってから、生徒は続けました。
🔴 学習者
「間違えた問題が解けるようになると、『今日は成長した』って思えるんです。」
🔵 講師
「それが一番大切なんだ。」
生徒はノートを見ながら話しました。
🔴 学習者
「先生、前は三時間勉強した日でも『何もできるようになってない』って思うことがありました。」
🔵 講師
「うん。」
🔴 学習者
「でも今は、一時間でも一つ理解できたら、その方がうれしいです。」
私は初めて会った日のことを思い出しました。
「毎日三時間勉強しているのに成績が上がりません。」
そう話していた生徒が、今では学習の成果を「時間」ではなく「成長」で測れるようになっています。
帰り際、生徒が笑顔で言いました。
🔴 学習者
「先生、勉強のコスパって、楽をすることじゃなかったんですね。」
🔵 講師
「そうだよ。」
🔴 学習者
「少ない時間で終わらせることじゃなくて、一時間を大切に使うことなんですね。」
🔵 講師
「その考え方を忘れなければ、高校でも大学でも、きっと役に立つよ。」
生徒は力強くうなずきました。
🔴 学習者
「これからは、『今日は何時間やったか』じゃなくて、『今日は何ができるようになったか』を毎日考えてみます。」
その言葉に、私は家庭教師として大きな手応えを感じました。
おわりに
勉強のコスパとは、「できるだけ短時間で勉強を終わらせること」ではありません。
限られた時間の中で、本当に必要な学習へ集中し、一つひとつ確実に理解し、自分の力へ変えていくことです。
家庭教師の役割は、知識を教えることだけではなく、その子に合った「効率よく学ぶ方法」を一緒に見つけることでもあります。
勉強時間が長いことは、努力している証かもしれません。
しかし、本当に大切なのは、「何時間机に向かったか」ではなく、「何ができるようになったか」です。
その積み重ねが、やがて大きな自信となり、成績となり、将来どんなことにも挑戦できる「学ぶ力」へとつながっていきます。
理論編はこちらから
⑤ 勉強のコスパとは何か(理論編)
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