はじめに
成績を伸ばした人の多くは「勉強の方法」を身につけています。
俺みたいなのに勉強はムリやって!
そんなことはないと思うよ
なんで?
多分・・・勉強方法がね。
はじめに

「先生、勉強って結局、頭のいい人しかできないんですよね。」
家庭教師を始めて間もない頃、この言葉を何度も耳にしました。
勉強が苦手な生徒ほど、「頭の良さは生まれつき決まっている」と考えています。
だからこそ、努力する前から諦めてしまうのです。
しかし、家庭教師として多くの生徒と向き合ってきた経験から言えることがあります。
成績を大きく伸ばした生徒たちに共通していたのは、「特別な才能」ではありませんでした。
共通していたのは、「勉強のやり方」を身につけたことです。
今回ご紹介するのは、「自分には才能がない」と思っていた生徒が、「勉強には技術がある」という考え方に出会い、少しずつ学び方を変えていった授業の記録です。
勉強はセンスですよね?
授業が始まって三回目の日。
数学の問題集を解いていた生徒が、鉛筆を置いてため息をつきました。
🔴 学習者
「先生。」
🔵 講師
「どうした?」
🔴 学習者
「やっぱり勉強ってセンスですよね。」
🔵 講師
「どうしてそう思ったの?」
🔴 学習者
「同じクラスに、授業を一回聞いただけで全部理解する人がいるんです。」
🔵 講師
「その子はすごいね。」
🔴 学習者
「僕なんて三回聞いても分かりません。」
少し沈黙が流れました。
私は机の上に置かれていたシャープペンを手に取りました。
🔵 講師
「このシャープペン、最初から上手に使えた?」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「小学校に入ったばかりの頃は、字を書くのも大変だったでしょう?」
🔴 学習者
「そういえば、先生にも何回も持ち方を直されました。」
🔵 講師
「今はどう?」
🔴 学習者
「何も考えなくても書けます。」
🔵 講師
「それは才能?」
🔴 学習者
「……違いますね。」
🔵 講師
「練習したからだよね。」
生徒は少し考え込みました。
🔵 講師
「勉強も似ているんだ。」
私は数学の問題を一問選びました。
🔵 講師
「この問題、どうやって解いた?」
🔴 学習者
「公式を思い出して……。」
🔵 講師
「その前は?」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「問題文を読んで、何を考えた?」
生徒は答えられませんでした。
公式だけを思い出そうとしていて、問題を分析するという発想がなかったのです。
🔵 講師
「実は、先生が見ているのは答えじゃない。」
🔴 学習者
「じゃあ何を見ているんですか?」
🔵 講師
「考える順番なんだ。」
考える順番を練習する
私は白紙を一枚取り出しました。
🔵 講師
「今日は答えを書く前に、考えたことを書いてみよう。」
🔴 学習者
「考えたことですか?」
🔵 講師
「そう。」
私は問題を指さしました。
🔵 講師
「まず、この問題で聞かれていることは何?」
🔴 学習者
「答えを求めること……。」
🔵 講師
「もう少し具体的に。」
🔴 学習者
「長さを求める問題です。」
🔵 講師
「いいね。じゃあ長さを求めるには何が必要?」
🔴 学習者
「公式です。」
🔵 講師
「その公式を使うためには?」
🔴 学習者
「……あ。」
少し考えたあと、生徒が顔を上げました。
🔴 学習者
「数字を整理しないと使えません。」
🔵 講師
「その通り。」
私は笑顔でうなずきました。
🔵 講師
「これが技術なんだ。」
🔴 学習者
「技術?」
🔵 講師
「勉強ができる人は、いきなり答えを書いているように見えて、実は頭の中で今みたいな手順を毎回やっている。」
🔴 学習者
「そんなこと考えていたんですね。」
🔵 講師
「慣れると無意識になるから、周りには見えないだけなんだ。」
生徒は何度もうなずいていました。
その後も何問か一緒に解きました。
🔵 講師
「まず何を確認する?」
🔴 学習者
「問題で聞かれていること。」
🔵 講師
「次は?」
🔴 学習者
「使う公式。」
🔵 講師
「その前にもう一つ。」
🔴 学習者
「数字を整理する。」
🔵 講師
「いいね。その順番が少しずつ身についてきた。」
授業が終わる頃、生徒はノートを見ながら笑いました。
🔴 学習者
「先生、不思議です。」
🔵 講師
「どうした?」
🔴 学習者
「今日はまだ難しい問題なのに、前より焦りませんでした。」
🔵 講師
「どうしてだと思う?」
🔴 学習者
「何から始めればいいか分かったからです。」
私は大きくうなずきました。
🔵 講師
「それこそが、勉強の技術なんだ。」
生徒は静かにノートを閉じました。
ほんの数日前まで「才能がないから無理」と話していた表情はなくなり、「やり方を覚えれば、自分にもできるかもしれない」という期待が少しずつ芽生え始めていました。
できる問題が増えてきた
前回の授業から二週間。
生徒は授業が始まる前から、自分のノートを机に広げました。
🔴 学習者
「先生、今日は見てもらいたいものがあります。」
🔵 講師
「どれどれ。」
ノートには、問題を解くだけではなく、その横に小さなメモが書かれていました。
『何を求める問題か』
『使う公式』
『計算するときに気を付けること』
前回一緒に確認した「考える順番」が、自分の言葉で書き込まれていたのです。
🔵 講師
「これは自分で書いたの?」
🔴 学習者
「はい。先生に言われた順番を忘れそうだったので。」
🔵 講師
「いい工夫だね。」
🔴 学習者
「最初は時間がかかりました。でも、何回かやっているうちに、前より問題が解きやすくなりました。」
私はその日の授業で、以前にも解いたことがある少し応用的な問題を出しました。
生徒はすぐに答えを書き始めるのではなく、一度手を止めます。
🔵 講師
「どうしたの?」
🔴 学習者
「先生、この問題は前なら焦って公式を書いていました。」
🔵 講師
「今日は?」
🔴 学習者
「まず聞かれていることを確認しています。」
私は思わず笑顔になりました。
知識を覚えたのではありません。
「考え方」が変わり始めていたのです。
問題を解き終えたあと、生徒がノートを見ながら話しました。
🔴 学習者
「先生、不思議なんです。」
🔵 講師
「何が?」
🔴 学習者
「前は問題を見るだけで『難しそう』って思っていたのに、今は『まず何をすればいいかな』って考えるようになりました。」
🔵 講師
「それが一番大きな変化なんだ。」
🔴 学習者
「答えはまだ間違えることもあります。」
🔵 講師
「もちろん。それでいい。」
🔴 学習者
「いいんですか?」
🔵 講師
「技術は、一回で身につくものじゃない。スポーツでも何度もフォームを確認するよね。」
🔴 学習者
「勉強も同じなんですね。」
🔵 講師
「そう。間違えるたびに技術が磨かれていくんだ。」
その言葉を聞き、生徒は安心したようにうなずきました。
才能ではなく、学び方が変わった
それから一か月後。
定期テストの返却日を迎えました。
授業開始のチャイムよりも早く、生徒は笑顔で部屋に入ってきました。
🔴 学習者
「先生、テスト返ってきました!」
🔵 講師
「結果はどうだった?」
生徒はゆっくりと答案を差し出しました。
以前より二十五点高い点数が書かれていました。
🔵 講師
「すごいね。本当によく頑張った。」
🔴 学習者
「ありがとうございます。でも、一番うれしかったのは点数じゃないんです。」
🔵 講師
「そうなの?」
🔴 学習者
「テスト中に焦らなかったんです。」
私はその言葉がとても印象に残りました。
🔵 講師
「どうして焦らなかったと思う?」
🔴 学習者
「分からない問題を見ても、『まず何を聞かれている?』『使える公式は?』って順番に考えられました。」
🔵 講師
「前とは大きく違うね。」
🔴 学習者
「はい。前は問題を見た瞬間に『無理だ』と思っていました。」
少し笑いながら、生徒は続けました。
🔴 学習者
「先生が言っていた『技術』って、こういうことだったんですね。」
🔵 講師
「そう思えるようになった?」
🔴 学習者
「はい。頭が急によくなったわけじゃありません。」
🔵 講師
「うん。」
🔴 学習者
「でも、考える順番を覚えたら、前よりずっと問題が解けるようになりました。」
私は初めて会った日のことを思い出しました。
「僕には才能がありません。」
そう話していた生徒が、今では自分の学び方に自信を持ち始めています。
🔵 講師
「これから先、高校へ行っても、社会人になっても、新しいことを学ぶ場面はたくさんある。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「でも、今日身につけた『学び方』は、その全部で役に立つ。」
🔴 学習者
「勉強だけじゃないんですね。」
🔵 講師
「そう。学ぶ技術は、一生使える力なんだ。」
生徒は大きくうなずき、少し照れたように笑いました。
🔴 学習者
「先生、前は『頭がいい人しか勉強はできない』と思っていました。」
少し間を置いて、力強く続けます。
🔴 学習者
「でも今は違います。勉強は、正しいやり方を覚えて練習すれば、誰でも少しずつ上達できるんですね。」
その言葉を聞きながら、私は改めて感じました。
家庭教師が教えているのは、一問の答えではありません。
「学び方」という、一生使える技術なのです。
おわりに
勉強が得意な人は、生まれつき特別な才能を持っているように見えることがあります。
しかし、その裏側には、問題を整理する力、間違いを分析する習慣、復習するタイミング、考える順番など、多くの「技術」が積み重なっています。
家庭教師の役割は、その技術を一人ひとりの生徒に合わせて伝え、繰り返し練習できる環境をつくることです。
才能の差だけに目を向けるのではなく、「学び方」を身につけることができれば、子どもたちは自分でも驚くほど成長していきます。
そして、その学ぶ技術は、学校の成績だけでなく、高校・大学・社会人になってからも、新しい知識や技能を身につけるための大きな財産になります。
だからこそ、家庭教師が育てたいのは「点数」だけではありません。
自ら学び、考え、成長し続ける力。
それこそが、子どもたちの未来を支える、本当の「学ぶ技術」なのです。
理論編はこちらから
③勉強は才能ではなく技術である(理論編)
はじめに 「勉強ができる人は頭がいい。」 多くの人が、当たり前のようにそう考えています。 しかし、家庭教師として数多くの生徒を指導してきた私は、少し違う考えを持っています。 もちろん、生まれ持った得意・不得意はあります。 […]


